三菱電機に株主「不祥事のデパート」…泥縄対応重ね、ドタバタ劇も
- 政治・経済
- 2021年7月3日
三菱電機の杉山武史社長が引責辞任を表明した。鉄道車両の空調設備やブレーキ関連機器などで不正検査が相次いで判明し、泥縄式の対応でトップの座を追われる形となった。調査委員会を設けて不正検査の実態解明に乗り出す方針も示したが、長年にわたって事業部門ごとの都合が優先されてきた企業体質の改善は容易ではない。
杉山氏は2日の記者会見で、「品質を大事にする。それが三菱電機の存在意義だとずっとうたってきたが、どこからか崩れてきてしまった」と語った。取締役として株主総会で選任された3日後に辞任表明に至った経緯は、三菱電機の内向きな企業体質を露呈した。消極的だった情報開示のあり方が問われている。
鉄道車両の空調設備を巡る不正検査が発覚したのは6月14日だった。その後、社内調査に入り、25日には経済産業省に不正検査の概要を説明した。28日になってさらにブレーキや扉の開閉に使う空気圧縮機でも不正検査が行われたことが判明したが、いずれも公表しなかった。
株主総会前日のこの日、取締役会でこの問題についてどう対処するか話し合ったところ、「非常に不十分な状態で話すことで、結果として株主に不安感を与えることはふさわしくない」(杉山氏)として報告を見送った。
終了後の29日夜、空調装置の不正検査をようやく発表。さらに翌30日に空気圧縮機での不正検査を公表し、空調設備では自動的に数値を捏造(ねつぞう)するプログラムが利用されたことも明らかにした。発表はいずれも文書だけで、中途半端な情報提供だった。
その2日後の7月2日、杉山氏は初めて公に出て不正検査の経緯を説明する場で辞任表明するというドタバタ劇となった。
■◆いばらの道
三菱電機は、社外の弁護士を委員長とする調査委員会を設け、一連の不正検査の実態解明を進める。9月に調査結果と再発防止策を公表するとしている。しかし、企業風土を改革し、信頼回復するのはいばらの道だ。
自社工場や子会社で製品の品質を巡る問題が相次いで判明したのを受けて、三菱電機は何度も全社点検を行ってきたが、その度に見過ごされてきた。過労やパワハラによる社員の自殺も相次ぎ、労務問題も深刻化している。株主総会では「不祥事のデパート」と株主から指摘された。
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