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党内保守派に秋波、ポスト菅狙う岸田氏の苦悩 与野党全面対決の広島再選挙は「お手並み拝見」


3月10日、菅義偉首相に提言書を提出し、記者団の質問に答える岸田文雄氏(写真:時事)© 東洋経済オンライン 3月10日、菅義偉首相に提言書を提出し、記者団の質問に答える岸田文雄氏(写真:時事)

次期自民党総裁選への出馬を目指す岸田文雄前政調会長が苦闘を続けている。

2020年9月の菅義偉政権発足で無役になって以来、党内での存在感が薄れ、「ポスト菅」候補の人気番付でも下位で低迷しているからだ。

岸田氏にとっては、巨額買収による公職選挙法違反で有罪が確定した河井案里前参院議員の当選無効・失職に伴う参院広島選挙区再選挙が、当面最大の課題となる。広島は故池田勇人元首相以来、「宏池会(現岸田派)の天領」(自民長老)とされ、岸田氏の総理・総裁候補としての命運もかかる。

注目の4.25トリプル選挙

岸田氏はここへきて敵基地攻撃能力を提起するなど保守傾斜の動きも見せている。ただ、1957年の池田派発足以来、自民党内のリベラル勢力の牙城とされてきた名門派閥・宏池会の伝統にはそぐわず、岸田派内での批判も相次ぐ。派閥領袖としての真価も問われる状況だ。

参院広島再選挙は4月8日告示・25日投開票の日程で行われる。鶏卵汚職事件での吉川貴盛・元農林水産相の議員辞職に伴う衆院北海道2区と、羽田雄一郎・前立憲民主党参院幹事長の死去に伴う参院長野選挙区の補欠選挙が同時に実施される。いわゆる「4.25トリプル選挙」として、秋までに断行される次期衆院選の試金石としても注目されている。

広島の再選挙には自民党公認で公明党が推薦する元経済産業省課長補佐の西田英範氏(39)と、立憲民主党など主要野党が推薦・支援する無所属のフリーアナウンサー、宮口治子氏(45)らが出馬する。同選挙区は2019年7月の参院選で巨額買収事件の舞台となった。与野党双方の統一候補が「政治と金の在り方」をめぐって激突する。

ただ、このトリプル選挙は自民党にとって「極めて厳しい状況での選挙戦」(自民選対)となる。北海道補選は、自民党が有権者の汚職事件への強い批判から候補擁立を見送る不戦敗を選択。長野補選も立憲民主党が故羽田氏の実弟を擁立したことで、「弔い選挙で自民候補には勝ち目がない」(同)とみられている。

だからこそ、広島再選挙の勝敗が「その後の菅首相の政局運営も左右する」(閣僚経験者)とみられている。

広島は圧倒的な保守地盤とされ、参院広島選挙区は定数2を与野党が1議席ずつ分け合ってきた。これまで自民候補が野党候補の2倍近い票を獲得しており、「本来なら負けるはずのない選挙」(自民選対)だからだ。

しかし、今回は自民分裂の果ての巨額買収事件を受けての再選挙で、自民党にとって「猛反省のうえでのみそぎの戦い」(地元県連)となる。その一方、立憲民主党は当初、4年後の改選時に現職同士が競合するとの懸念から、野党統一候補で戦うことに及び腰だったとされる。

消えぬ前回選挙の「恨み」

自民党は4.25ダブル補選での敗北ショックを避けるため、「二階俊博幹事長ら執行部が河井案里氏に有罪判決直後の議員辞職を働きかけたことが、再選挙につながった」(自民幹部)とされる。ただ、主要野党は「与党の思惑通りにはさせない。4年後への配慮など必要ない」(立憲民主幹部)として、統一候補擁立による全面対決に踏み切った。

そこで問題となるのが、新人候補の西田氏をめぐる与党の支援体制だ。自民分裂選挙となった2019年7月の参院選で、岸田派重鎮で自民現職だった溝手顕正・元国家公安委員長が落選したのは、「公明党が菅首相や二階氏の意向も踏まえて、新人の河井氏に肩入れしたのが原因」(岸田派幹部)との見方が多い。このため、今回選挙では当初、地元の自民県連から「公明の支援はいらない」との声すら出ていた。

しかし、公判中の案里氏の夫で元法相の河井克行被告(4月1日に議員辞職)が当選した衆院広島3区で、次期衆院選の与党統一候補として公明党の斉藤鉄夫副代表が決まり、公明党は西田氏の全面支援を表明。ただ、「西田氏陣営では前回選挙の恨みは消えていない」(自民選対)のが実態だ。

自民党は岸田派が選挙戦の中軸を担い、3月27日に3度目の同党県連会長となった岸田氏が陣頭指揮をとる。岸田氏は同日、「出直し選挙だ。今度は間違いなくしっかりとした人間を選ぶ」と陣営に檄を飛ばし、岸田派所属議員や秘書団を西田陣営に集結させる必勝態勢を組んだ。

ただ、前回分裂選挙のしこりもあって、二階幹事長ら党執行部は「選挙は岸田派任せで、お手並み拝見」(細田派幹部)の構え。菅首相は4月1日に岸田氏と会談し、「大切な選挙だ。頑張ってほしい」と激励したが、「党を挙げての総力戦とはなりそうもない」(自民幹部)のが実情だ。

そうした中、岸田氏が3月26日夜、自身のツイッターに「敵のミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させることができる能力を保有することが必要」と投稿したことも波紋を広げた。中国や北朝鮮によるミサイル攻撃抑止のための敵基地攻撃能力の保有を訴える内容だったからだ。

敵基地攻撃能力保有については、安倍晋三前首相が2020年9月の退陣直前に、年末までの結論を求める談話を発表した。しかし、公明党の反発もあり、菅首相は判断を先送りした。

岸田氏は「1人の党員としての考え方」と語るが、次期総裁選出馬に向けて「安倍氏に代表される党内保守派に秋波を送った」(自民長老)と受け止められている。

保守派へのすり寄りにしか見えない

ただ、故大平正芳、故宮澤喜一両元首相らに代表される「軽武装・経済重視」のリベラルな政治路線を堅持してきたのが宏池会(岸田派)だ。同派内では「宏池会らしくない発言。自分の考えはないのか」(岸田派長老)との批判が噴き出す一方、自民党内には「公明を怒らせるだけだ」(幹部)と、広島再選挙への悪影響を指摘する向きもある。

岸田氏は3月30日に安倍氏と会談。同25日に設立された選択的夫婦別姓制度推進派による議員連盟への出席も見送った。こうした岸田氏の動きについて、党内では「総裁選のカギを握る安倍氏や麻生太郎副総理兼財務相へのすり寄りにしかみえない」(自民長老)との声も広がる。

広島再選挙の勝敗には岸田氏の総裁選への挑戦権が懸かる。岸田氏も連日地元に張り付いて、街頭演説や集会で西田氏への支援を訴えている。ただ、当初の自民党の情勢調査では「西田氏が一歩先行」という結果だったが、ここにきての地元メディアの情勢調査では「宮口氏の追い上げ」が目立っているとされ、自民県連も危機感を募らせている。

菅首相は、トリプル選挙のヤマ場となる4月中旬に訪米し、バイデン大統領との首脳会談に臨む。自民党内の一部には「外交で成果を挙げれば、トリプル選挙で全敗しても連休前に解散を断行。5月衆院選で勝ってチャラにすればいい」(二階派幹部)との声も出る。

西田氏が敗れると菅首相への打撃も大きいが、「岸田氏が失脚すれば、結果的に菅首相の再選へのプラス要因にもなる」(無派閥有力議員)とのうがった見方もある。まさに「広島特有の仁義なき戦いの様相」(自民県連)で、「平時の首相候補」と揶揄される岸田氏は「自らの殻を破れるかどうか」(岸田派長老)が問われることになる。

東洋経済オンラインより転用東洋経済オンライン


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