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詐欺被害にバブル崩壊、資産3億から4畳半一間へ…“どん底”から三度立ち上がった社長が叶えた「夢」


それは1986(昭和61)年の夏の朝だった。眠い目で新聞を開くと「あなたも軽トラで開業独立!月収80万!」というチラシの文字が飛び込んできた。当時は高卒で日用品卸の会社に就職し2年、月給は13万円。「これや!!!」-。それが全ての始まりだった。

京阪神や東京でオフィス配送を中心にした物流・倉庫業を手がけるジェイカス(本社:西宮市)。中小ならではの機動力や即応力、さらには大手並みの物流システムを導入し、存在感を高めている。その会社を一代で築き上げたのが加賀澤一社長(58)。その波乱万丈の半生のきっかけが20代で遭った悪質な詐欺被害だった。

■全財産を投じたものの…残ったのは

チラシを手に大阪の雑居ビルに面接に行くと、強面の男が「初期投資に軽トラ1台(250万)を購入してほしい。代金には指導料も入ってるけど、あんたやったら若いから月80万どころか100万は稼げるわ!」とまくしたてた。軽トラ1台の相場は50万円。だがためらうこともできず勢いに飲まれるように契約。全財産を投じ、足りない分は男から借金をした。

だが、最初の1カ月こそ仕事を回してくれたものの、男への借金を返し終わるとピタリと止まった。月80万どころか10数万の月も。たまらず男に掛け合うと5、6人に囲まれ、脅された。「もうまるっきり『なにわ金融道』の世界(笑)」と加賀澤さん。残ったのは真新しい軽トラ1台。やむなく手描きのチラシを作り、大阪や兵庫の会社に配りまくるも相手にされるはずもなく、1日パン1個、公園で水を飲んでしのぐ生活を続けた。荷を運んだことのある業者の計らいで宅配の手伝いをしたこともあったが、顧客との信頼関係もないまま置き配をして大問題になり、契約解消になった。

「そのとき思ったんです。自分は騙されて大変な目に遭った。それなのにこんな事をしてたらダメだ。騙された人や苦労した人のためにちゃんとした会社を作ろう、地に足が着いた仕事をしよう、と」。もう一度チラシを配り、無謀な案件でも体を酷使して引き受けたが、その先で出会った人に「辞めるのはいつでもできる。ただ、悔いの無いように思いっきりやってから、辞めなさい。一番辛いのは、人生で悔いが残ること」と言われ、迷いが晴れた。

■バブルの罠、「1000万円ぐらいはした金」と思っていた

「まだ自分は中途半端だ」。コツコツと地道に働き続けると、次第に依頼も増え、昔の友人らに声をかけて車も増やし、売り上げも順調に伸びた。だがそうこうするうち、地元の先輩から株に誘われ「そこからはもう、狂ったようでした」と加賀澤さん。日本中が熱に浮かされた時代。株は買った側から値上がりし、加賀澤さんも仕事そっちのけでトランシーバーを片手に証券会社の電光掲示板の前に入り浸った。

「22、23歳で、『1000万ぐらい、はした金』だと思ってました。今では考えられないけれど、銀行だって契約書も整わない段階から5000万円とか振り込んでくる。支店長と外国旅行も行きましたよ。マンション投資にゴルフ会員権、一通りやってましたね」。当時の資産は約3億円。北新地で1本100万円のボトルを毎晩開けた。だが、1990年代のバブル崩壊で一気に消し飛ぶ。相次ぐストップ安で証券会社の窓口は黒山の人だかりに。株もマンションも会員権も全て売り払ったが3000万ほどの借金が残った。家も高級マンションから四畳半一間の古びたアパートへ。また一から荷を運んだ。

そんな加賀澤さんの転機は、阪神・淡路大震災だった。住んでいた宝塚のマンションは1階がつぶれたが、幸いけがはなく、すぐに携帯電話を持って7時間かけ大阪へ。大手メーカーに頼まれ、自転車で被災地の納入先を回った。「小回りがきくのは小規模業者だから。メーカーにも感謝され、評価された」と加賀澤さん。そんな中、配送先から「設置はまた別の業者に頼むなんて二度手間」とクレームを受けたのをきっかけに、メーカーで研修を受講。「配送→設置、修理」を一体で手がけたり、「イベント物流会社」として配送と設置、イベント運営などをワンストップで担ったりすることで顧客の利便性を高め、業績を伸ばした。

さらに倉庫業にも進出。億単位の出資が必要だったが、銀行を回って資金を集め、平成16年に倉庫業にも進出して間もなく、リーマン・ショックで一気に苦境に。リスケ(返済猶予)対象にもなったが3年で何とか脱却し、その間に財務指標等のビジネス知識も学んだ。そして今、「物流革命」のまっただ中にいる。

■たどり着いた「地域」とのつながり

「アメリカやドイツなど自動化・無人化した物流先進国と比べれば、日本は30年遅れている。少子化も進み、いずれ日本経済は収縮する。これから必要なのは企業の“存在意義”。『世の中をこうしたい』という明確なメッセージが無ければ生き残れないし、人材も集まらない。うちにとってそれは、地元の人に愛されること」と加賀澤さん。

そんな加賀澤さんの夢は、カナダ・バンクーバーのように、休日には人々がくつろぐ港町。「日本の港湾ってどこも灰色で殺風景で、週末になると人影がなくなる。でも、倉庫とか拾い施設をうまく使って、地元の人々が買い物をして、遊んで、音楽を聴いて、憩える場ができたら。マンション群などもある神戸の六甲アイランドや西宮市の西宮浜なら、それができるんじゃないか」。そしてこの11月末に、倉庫を使ってその「夢」を実現させられることになった。私費を投じ、参加団体などから出店料は取らず、イベントへの参加も全て無料。趣旨に賛同した地元の企業も約40社・団体が参加することになった。

「ある意味、コロナ禍だからこそ何かしないと-と思えたのかもしれない。お金儲けでなく、地域に必要と思ってもらいたい。仕事では世界を見つつ、地元の人たちにとって、なくてはならない存在でありたい。ロボットにできない、人間らしいことを探し続けたいんです」

RICファーマーズフェスタ:11月29日8時半~14時。ジェイカス神戸営業所内にて。入場無料。クラフト体験や地元産品の販売、神戸発のアイドルグループ、コウベリーズのライブなどもある。


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