北海道に近づく冬、稚内は零下に「早く節電終わって」
- 政治・経済
- 2018年9月12日
早くも最低気温が零下となった街もある北海道で、道内の電力を担う火力発電所の全面復旧が11月以降にずれ込む見通しが示された。冬が近づく中、長引きかねない節電生活への不安が広がっている。
電力不足の長期化は暮らしに影響しそうだ。
この秋最も早く最低気温が零度未満の「冬日」となった稚内市。吐く息は白く、水たまりには氷が張った。市職員柴田貴代さん(43)は「寒さに勝てず、昨晩は電気を使用する灯油ストーブをつけたが、今日からは物置にしまってある移動式の灯油ストーブを出して、節電します」。
要介護3以上の約80人が入居する札幌市厚別区の特別養護老人ホーム「かりぷ・あつべつ」。施設に予備電源はなく、停電時は施設は真っ暗に。たんの吸引が必要な入居者のため、車のエンジンをかけ、何とか電源を確保した。
自家発電機の導入には600万円かかり、負担は大きい。寒さが厳しい時期に計画停電となれば、灯油ストーブの購入も検討する。運営する社会福祉法人の下斗米博さん(44)は「計画停電になるなら準備が必要。早めに情報がほしい」と訴える。
札幌市内の保育園長は「正直早く節電が終わってほしい」と嘆く。停電が復旧しても、暗い廊下に出たり、電気のついていないトイレに入ったりすると急に泣き出す園児もいる。停電が子どもたちの心理に与えた影響が大きいと感じる。園内では事務室や廊下などは極力電気を消すが、園児がいる場所だけは電気を消せない。「早く園内全体を明るくして、ケアを進めたいのに……」
北海道水産物加工協同組合連合会の斉藤貢常務理事(56)も「停電が最小限の損害で済み、一安心していたところだったのに」と困惑する。カズノコやイクラなど、年末年始向けの商品の製造が最盛期のいま、電力不足は死活問題だ。
製造、保管には冷蔵庫や冷凍庫が欠かせず、温度が変われば風味が落ちる恐れもある。事務所は照明を落とせるが、製造現場での節電は難しい。商品によって原料も製造方法も異なるため、斉藤常務理事は「一律の対策を打ち出しにくい。それが悩みの種」とため息をついた。
札幌市の福田亜紀さん(44)は自宅がオール電化。停電が復旧後、自動で点灯する玄関灯の電源は切り、炊飯器は使わずに、圧力鍋で短時間で米を炊く。
電気代の値上げを受け、節約には努めてきた。「やれることはもうやってきた。これ以上できるかどうか」。屋根につけた太陽光発電設備が活用できる日中に、洗濯をしようと思っている。
いつまで続くかわからない電力不足に備える動きもある。
農機具などを販売するイワサ札幌店(札幌市東区)では、発電機を並べていた棚が空っぽに。岩佐哲哉社長(52)によると、価格は約10万~20万円前後で、年間の販売台数は20~30台程度。停電があった6日、店頭にあった在庫約15台があっという間に売り切れた。
10日から本格営業を再開すると、すぐに20台ほどの注文が入った。東日本大震災後は約3カ月で100台ほど売れたが、今回の売れ行きの勢いは「当時と同じか、上回るくらい」。来週以降、約100台が入荷する予定だが、予約が相次いでいるという。
一言コメント
寒冷地だけに、これからが心配だ。
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