しみけん「間違った偏見を持たないでほしい」 拡大するアダルト系YouTube“真の役割”
- エンタメ
- 2021年8月30日
日本では月間6500万人以上(18~64歳)が利用しているというYouTube。アップロードされた動画の総時間も昨年1年間で対前年80%増と急成長を続けている。そんなYouTube界において、今、ジワジワと数を増やしているのが、“脱がない”アダルト系コンテンツ。露骨な描写について“厳しい規制”が設けられている中、セクシー男優やセクシー女優が、自らのキャリアを活かしつつ、様々な企画でYouTube界に乗り込んでいる。男優歴23年、自らも2020年より「【公式】しみけんチャンネル」で趣向を凝らした様々な動画を公開しているしみけんに、拡大するアダルト系YouTubeコンテンツについて、その理由から視聴者の反応、さらに現在の業界事情について話を聞いた。
■日本の“性教育の遅さ”は昔のまま「小中学生に届けるにはYouTubeが一番だった」
セクシー男優によるテクニック指南から、セクシー女優の赤裸々トークや仕事現場密着など、今、YouTube内で拡大しているアダルト系コンテンツ。アダルトコンテンツに出演する一方で、自身のYouTubeチャンネルをはじめ、様々な媒体で性に対する悩みや疑問に答えるなど、性教育の普及にも力を注いできたしみけんは、その現状を「当然のこと」と分析する。
「人が性に興味を持つのは当たり前のことですから、需要があるのは当然です。23年間AV男優をやってきて、めちゃくちゃいろんなものを見てきたけど、人々の性の悩みや知りたいことはまったく変わっていませんからね。しかも、国際的には性教育は5歳から始めるべきだと言われているのに、日本は昔のまま、性教育をきちんと行っていません。日本の大人の大半は、自分が教えられた経験がないから『赤ちゃんってどうやってできるの?』って聞かれても、戸惑った顔をしてしまい、子どもは勘がいいから変なことを聞いちゃったと思って二度と聞けなくなって、その答えをネットの世界に求めてしまうんです」
周囲の人に聞けない、性や身体への疑問は誰にでもあるもので、“込み入った悩み”にも対応しているコンテンツに、大人であっても助けを求める場面はあるし、実際に“救い”にもなっている。しみけんがYouTubeを始めたのも、“性”について正しい知識を広めたいという思いからだった。
「それまで性感染症とか、望まない妊娠とか、女性の性被害についてなど、若い人たちに正しい知識を伝えたいと思って、医師や有識者の方々と組んで、ニコニコ超会議や病院サミットなどの動画で発信していたんですが、それでも届けられないのが18歳未満の人たちでした。そんなとき、ラファエルさんのYouTubeにコラボ出演させていただいたら、小学生が見てくれていたことを知って、小中学生に届けるにはYouTubeが一番ではないかと思ったんです。ただ、現実問題として、“しみけん”という名前がつくだけでYouTubeでは18歳以上限定になってしまう可能性が高いので、『しみけんチャンネル』では、これから親になる世代に向けての発信を意識して、18歳未満の人たちに対しては限定のつかない方とコラボすることによって、うまく届けられるよう考えています」
■ネットに多数ある過激で非現実的なアダルト動画「知識のないまま、その世界に入るのが一番怖い」
そんなしみけんがYouTubeを始めて驚いたのは、自分が思っていた以上に視聴者の性に対する知識が低いことだった。
「例えば、ある男子中学生から『中出ししないと童貞卒業ではないと言われましたが、それは本当なんでしょうか』というリプをもらったんですが、そんなレベルなのかと、驚きました。性コンテンツを発信していると、『子どもが興味を持つからよくない』とか『寝た子を起こすな』とかよく言われるんですが、寝た子が知識のないままインターネットに入るのが一番危ない。ネットの世界には、過激な演出で現実的ではないアダルト動画も多いですからね。未熟な知識のまま、それを見て行為に及ぶことは、望まない妊娠や暴力的な行為にもつながります。YouTubeを始めて、いろいろな人たちから質問や相談を受けるようになったことで、もっともっと基礎に立ち返って教えてあげなければいけないことがたくさんあると勉強になりましたね」
アダルト系YouTubeコンテンツの拡大においても、しみけんは危惧を感じている。
「情報過多になるとどれを信じていいのかわからなくなりますからね。実際、ちょっと違うんじゃないかなってことを言っているチャンネルもあるので、とにかく、発信者が自分の名前と立場を出しているかどうかを見てほしいですね。自分の名前を出している人は発言に責任を持っていますから。それをしていない、どこの所在かわからない人のチャンネルは、話半分で聞いたほうがいいかもしれないです」
■消えることはない“AV”への偏見も「“間違った偏見”を持たないでほしい」
一方、アダルト系YouTubeコンテンツの拡大において、しみけんが歓迎し、エールを送っているのが、女性たちの活躍だ。中にはメイクやルーティーンなど美容系の発信をして、同性から高い支持を集めているセクシー女優も複数存在する。
「素晴らしいことだと思いますね。人間って見えないことに対して悪い憶測をしがちなので、AV女優さんって暗い過去を持っているとか、変わっているのではないかとか、どうしても想像してしまう部分があると思うんですけど、YouTubeなら自分のイメージを発信できるし、人がしていない経験も発信できるし、いい機会だと思います」
性に対する悩みや知りたいことが昔からまったく変わっていないのとは反対に、23年前と比べてしみけんが「滅茶苦茶変わった」と断言するのは、女性の性に対する意識だ。
「僕はスティーブ・ジョブズが女性の性を開放したって言っているんですけど(笑)、2008年にiPhoneが登場してから、AVのイメージはガラッと変わったと思います。それまではビデオレンタル店に行って奥の怪しいコーナーで借りなければいけなかったものが布団の中で自分のスマホで見られるようになった。興味があるのに押さえつけられていたものを開放したのがスマホだったと思います」
女性たちがアダルト業界に入ってくる理由は、お金のため、性に興味を持っているからなど様々だが、開放された分、「昔に比べて女性が入ってきやすくなったと感じている」としみけんは語る。「まだまだ男性がメイン」の世界ではあるが、時代の変化を受けて、若干、内容には変化が生じているという。
「レイプものがなくなったり、コンドームをつけるところを見せるシーンを入れている作品も、少しずつ増えています。ただ、僕自身はとてもジレンマがあるんです。YouTube等で、常日頃からコンドームをしない男はクズだと言っていながら、AVでは中出しの作品に出ていて。もちろん、実際はコンドームをつけていますが、モザイクがかかっているので、作品を観る限りは、言ってることとやっていることが違うじゃん!ってことになっていて……。AVはファンタジーだから仕方ないんですけど、ジレンマがあるので、トークライブなどでは話のネタにしています」
「実体験に照らし合わせた発言をすることが自分の一番のこだわり」と語るしみけん。性教育について考える直球の動画も発信していれば、脱がない状態でどれだけできるのか、“ネタ要素”をふんだんに盛り込んだコラボ動画も両立させている。今後、YouTubeにおけるアダルト系コンテンツの広がりにどのようにアプローチしていくのか。
「裾野が広がれば山が高くなるじゃないけれど、興味を持ってもらうことがまず一番ですね。単純にAVの世界って馬鹿馬鹿しくて面白いことが多いから、教育的な面だけでなく、単に笑ってもらいたくて発信しているところもありますし、ソコが無くなったらコンテンツとして終わってしまう。だからAVネタを扱った動画も笑い話として聞いてほしいんです。AVへの偏見は、ゼロにならなくていい。でも、“間違った偏見”を持たないでほしい。YouTubeで僕を知ることで、性に対して正しい知識を持つ人、悩みを解決できる人が増えればいいなと思っています」
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