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戦時下ロシアでユニクロ酷似の衣料品店が登場 その背景と実態は


 赤地にアルファベットのJとCの文字を白抜きしたロゴが店の内外に取り付けられている。自然と連想されるのは日本のカジュアル衣料品店「ユニクロ」の店構えだ。ここはロシアの首都モスクワ。記者(大前)は2023年9月下旬まで駐在していた。その時点で既に、ロシア国内のユニクロ全店舗が閉じられてから1年半以上がたっていた。

 「この店はユニクロに似ていませんか?」。レジに立つ女性に尋ねてみた。胸の名札によると彼女の名前は「ワレーリヤ」さん。こんな質問には慣れていたのか、彼女は一瞬ニヤリとすると、「似ています」と素直に認めた。ただし、「うちはロシアのブランドです」と言及するのも忘れなかった。

「開店したのは7月28日です」というワレーリヤさん。私が取材した9月下旬にはまだ2カ月しかたっていない。彼女が渡してくれたファッション誌によると、この時点で「JC」はモスクワや第2の都市サンクトペテルブルクなどで11店舗を展開していた。

外国企業撤収の「穴」を埋める動き

 ファーストリテイリングがユニクロのロシア事業を始めたのは10年春だった。シンプルな衣服デザインと高すぎない値段設定が地元消費者の好評を博した。22年初頭までに同国内に50店舗を出店するに至った。だが、22年2月、ロシアが隣国ウクライナへの「特別軍事作戦」を始めた状況を鑑み、ユニクロは翌月にロシア事業の停止に追い込まれた。米エール大経営大学院の調査では、このような外国企業は500を超える。

 日本を含む西側の政府は矢継ぎ早に厳しい対露制裁を発動し、ロシアを封じ込めようと試みた。それでも、エネルギーと食糧を自給できるロシアの経済は、当初予想されていたよりもはるかに強い耐久力を持っていた。

 23年7~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で5・5%の増加を記録。小売売上高も11・3%増加しており、消費活動の回復を印象づける。そのため、外国企業によるロシア市場撤収や事業停止の「穴」を埋めるような動きも多く見られる。

前身ブランドを模倣するロシア企業

 一例として、ロシアのカジュアル衣料品店「グロリア・ジーンズ」は22年春、ユニクロが入居していたモスクワと周辺地域の店舗で事業を始めた。さらに「ユニクロを模倣したブランドではないか」と見られているのが冒頭で紹介した衣料品店だ。

 店名は英語の表記を使い、「Just Clothes」。一部のロゴは頭文字を取って「JC」と記している。赤地のロゴにとどまらず、店内の商品陳列や動画広告の作りを見ても、ユニクロを強く意識した様子がうかがえる。

 実は今のロシアでは、撤収や事業停止した外国企業のブランドを模倣するような戦略を取るロシア企業が少なくないのだ。つまりJCの手法は珍しいわけではない。なぜ、これらの企業は「前身」をコピーするようなやり方を選ぶのだろうか。【モスクワで大前仁】

毎日新聞より転用


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