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「実写版ワンピース」 ネトフリが平気で「映画10本分」以上の予算を投入するワケ


 日本のマンガ・アニメ文化が世界に影響を与えている中、特に注目を集めているのが、Netflixが製作・配信する「実写版ワンピース」だろう。同社が9月6日に発表した「Netflix週間グローバルTOP10」(英語シリーズ)で1位を獲得するなど、好スタートを切っている。

 海外メディアの報道によると、今作の投じた製作費は1話あたりなんと1800万ドル(約26億円)。単純計算になるが、現在公開されている8話目までで製作費は200億円を超えていることになる。

 日本における商業映画1本の製作費の平均は約3.5億円といわれている。スタジオジブリが作画期間2年をかけた大作『もののけ姫』の製作費が約24億円といえば、その規模の大きさが伝わるだろうか。

 著名マンガタイトルの実写版をめぐっては、過去にハリウッド肝いりで製作した映画『ドラゴンボール・エボリューション』など、興行的に手痛い結果となった事例もある。そんなジンクスを恐れず、Netflixが本作に巨額の投資を行った理由は何か。

●平気で「映画10本分」以上の予算を投入するワケ

 実写版ワンピースは、原作者の尾田栄一郎氏をエグゼクティブプロデューサーに招いている。同氏は8月31日に「この作品に一切の妥協はありません!!」という熱い思いをつづった直筆レターを公開しており、実写化に一抹の不安を抱えていたファンも期待したはずだ。

 Netflixは、もとはといえばDVDのオンライン事業の会社だった。時代の変化を察知してオンライン配信にシフトしてからは、しばらくは有名タイトルの誘致によって知名度を上げるという王道パターンで業績を伸ばしていた。

 しかし、近年のNetflixはネット配信で連続ドラマを見るという新しい消費行動を根付かせることによって、新たな市場を作り出している。これは、コンビニチェーンやスーパーマーケットがプライベートブランド商品の開発に乗り出すことと似ている。自社で開発した商品は卸値や粗利の設定が他社製品よりも柔軟に設定でき、利益率も高まる傾向にある。

こう考えると、ネットフリックスはすでに完成したコンテンツを他社から仕入れて「小売り」する立場から、作品を作って・売るまでも手掛ける「プライベートブランド」へ舵を切ったともいえる。

●伝統的な映画ビジネスに対するネットドラマの優位性

 ネットフリックスのオリジナルコンテンツの最初の成功は、2013年に配信された「ハウス・オブ・カード」だ。当時はネット配信のドラマに映画並みの予算をつぎこむことは珍しく、業界の目線も懐疑的であった。しかし、同作の大ヒットを皮切りに、風向きが変わる。

 私たちの一般的な感覚として、ネットドラマと映画を比較するとどのように映るだろうか。例えば、権威性や話題性といった観点でみると、筆者はどうしても映画の方に軍配が上がるイメージがある。

 しかし、今の時代はネット配信のドラマの方が映画よりもビジネスモデルという観点では優れているかもしれない。というのも、映画の収益は「足が早く、長持ちしない」性質がある。映画というビジネスの主な収益は「チケット」と「円盤」(DVDやブルーレイディスク)に大別できる。チケットは言い換えれば買い切りの視聴権であり、何度も映画館に足を運ぶ熱心なファンを除けば顧客はリピートしない。

 また、DVDやブルーレイディスクも買い切りで何度も見られる。しかし、こちらも決済タイミングは一度限りであり、ネット配信の普及により市場は縮小傾向にある。

 一方で、Netflixのような動画配信サービスは、サブスクリプション型であり、目当ての作品を見終わった後も解約されなければ課金が継続する。同社の決算資料などを確認すると、直近のNetflixにおける解約率は2.3%と低い水準にとどまる。

 確かに、Netflixの解約率をめぐっては22年に値上げしたことで一時的に解約率が5~10%程度の水準まで高まったものの、値上げ後も残ったユーザーは引き続きサービスに課金し続けているのだ。

 つまり、今後ワンピース目当てでNetflixに加入したユーザーのうち、相当数の割合はNetflixを解約することなく、継続的にお金を払ってくれる可能性が高いのだ。

 Netflixのユーザーは23年第1四半期の時点で約2億3800万人に達している。会員数の伸びは22年に値上げの影響で一時的にマイナスとなるも、足元では毎月100万人以上のペースで数が増加しており、上昇ペースは加速している。

 営業利益は18億2700万ドルと、前年同期比で15.7%増加している。実写版ワンピースの多大な製作費を織り込んでも十分な利益を確保できるはずだ。つまり、万が一実写版ワンピースが振るわなかったとしても、Netflixの財務を左右するようなリスクシナリオはそもそも存在し得なかった。むしろ、低予算の結果としてクオリティが落ち、悪評が蔓延(まんえん)する方が同社にとってはダメージになりうる。

 ネットフリックスが莫大な製作費を投じる理由は、ユーザーに質の高いコンテンツを提供しつづけることが、新規ユーザーの獲得とLTV(顧客生涯価値)の最大化につながるという黄金サイクルが完成している点に尽きるのだ。

 ITmedia ビジネスオンラインより転用


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