足場固めか早期解散か 岸田首相判断、与野党が注視
- 政治・経済
- 2023年5月5日
衆院議員任期の折り返しが秋に迫る中、岸田文雄首相がいつ解散を決断するのか、与野党が目を凝らしている。
4月の衆参5補欠選挙は自民党の4勝1敗で乗り切ったものの、実態は「辛勝」にすぎず、党内では足場固めが先決との慎重論が目立つ。一方で、野党陣営の準備が整わないうちに勝負に出るのではないかとの観測もくすぶる。
◇「補選辛勝」冷や水
「重要な政策課題の結果を出すことに全力を尽くしているところであり、今は解散・総選挙については考えていない」。首相は4日、モザンビークの首都マプトで行った内外記者会見でこう語った。
解散時期の選択肢として、政権内では(1)先進7カ国首脳会議(G7サミット)で成果をアピールした上での6月の通常国会会期末(2)内閣改造・自民党役員人事で人心一新を図った後の今秋(3)首相の再選が懸かる党総裁選を無風に持ち込むことを狙った来年の通常国会以降―が取り沙汰される。
来年に持ち越せば、防衛費増額のための増税や少子化対策の財源確保など、国民の負担増に直結する課題の具体化を迫られ、逆風は免れそうにない。3月以降、内閣支持率が上昇傾向を示したことから、補選で足をすくわれなければ「会期末」論が加速するとの見立てもあった。
だが、想定外の接戦ぶりに、自民内では「危なっかしくて戦えない」(ベテラン)などと戒める声が上がる。茂木敏充幹事長は記者会見で「支持層を固め切れたか、無党派層の支持で大幅な後れを取っていなかったか、よく点検・分析をして選挙態勢を構築する」と基盤固めを訴えた。
集票力に陰りが見える公明党も慎重だ。国政選挙並みに注力した統一地方選で、落選者は過去最多の12人に上った。支持母体・創価学会の選挙疲れをいやし、態勢を立て直すのが急務だ。小選挙区の「10増10減」で定数が増える東京、埼玉、愛知で新たに候補者擁立を決めたことで、自民との関係もぎくしゃくしたままだ。
公明が議席を持つ大阪と兵庫の6選挙区には、日本維新の会が公明との協力関係を「リセット」して独自候補を立てる構え。公明関係者は「早期解散なら六つ全てで戦うしかない」と話すが、維新とは時間をかけて妥協を探りたいのが本音だ。補選後の4月25日、首相と会談した山口那津男代表は「謙虚に受け止めていこうという認識で一致した」と記者団に強調してみせた。
◇急襲で維新封じ?
「首相は維新の台頭を気にしている」。自民幹部は、統一地方選と補選で勢力を拡大した維新への警戒感を、首相の言葉の端々に感じ取る。
次期衆院選で立憲民主党に代わる野党第1党の座を狙う維新は、全289選挙区への候補者擁立を目指し、「政治塾」などを通して発掘を急ぐ。まずは東京や神奈川など大都市圏を中心に作業を先行させる方針で、自民選対関係者は「少なくとも比例代表で躍進しそうだ」とみる。
ただ、現状では野党の準備の遅れは否めない。自民は現職を中心に約240選挙区で擁立のめどが立ったのに対し、立民の内定者は140人に満たず、前回衆院選の3分の2程度。維新はさらに少なく、70選挙区程度にとどまる。
国民民主党が政策的に近い維新との連携に意欲を示すなど、新たな動きもある。野党に候補者一本化といった準備のいとまを与えず解散した方が得策との意見も自民には根強い。ただ、早過ぎる解散で仮に勝利しても、首相が来秋の総裁選まで効果を持続させるのは容易ではなさそうだ。
時事通信より転用
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