データミックスは企業間取引・企業経営に必須なビジネスニュース、政治・社会ニュースを配信しています

お名前ドットコム

豊洲市場のマグロ初競り、勢力図に変化? 「ノーマーク」のスーパーが参戦した理由


 新年恒例のマグロ初競りが、2023年1月5日に東京・豊洲市場(江東区)で行われる。かつては、最高値の「一番マグロ」が3億円超えを記録。新型コロナウイルスの流行後は「億超え」はないものの、縁起の良い初物の競りは風物詩として脚光を浴びる。初競りと言えば、すしチェーン「すしざんまい」を運営する「喜代村」、同市場のマグロ専門仲卸業者「やま幸」の2社の印象が強いが、近年、食品スーパーが参戦している。その狙いとは―。

1年の幕開けとなる初競り。豊洲市場では毎年、「初荷」を祝うのぼり旗が売り場に飾られ、全国各地から集まった主役の生マグロがずらりと並ぶ。スタートは午前5時すぎ。緊迫した雰囲気の中、競り人が鳴らす鐘の音が響き渡り、威勢の良い掛け声とともにマグロが1匹ずつ値付けされる。競りでは、集まった買い手の仲卸業者などが一斉に指のサインで希望値を示し、最も高い値段を付けた人が入手できる。最高額で競り落とされた1匹が「一番マグロ」と呼ばれ、最高級ブランドとの評判も高い青森県大間産クロマグロが定番だ。

 過去に1億円以上の値が付いた一番マグロは、大間産の3匹だ。史上最高値は、旧築地市場から移転した豊洲市場で初めて行われた19年、1匹3億3360万円(1キロ当たり120万円)が付いた。翌20年の同1億9320万円(同70万円)、築地市場時代の13年の同1億5540万円(同70万円)と続く。いずれも、喜代村が落札。国内外に強烈なインパクトを与えた。  

21年、コロナ下で迎えた初競りは一変した。一番マグロは2年連続の1億円超えから一転、21年は1匹2084万円(1キロ当たり10万円)、22年は同1688万円(同8万円)と大きく値を下げた。入手したのはどちらもやま幸。すし店「銀座おのでら」とタッグを組んで臨んだ。22年は6年ぶりに2000万円を割ったが、国産天然クロマグロ1匹の価格としては、高騰する年末の約3倍に相当。豊洲市場関係者は「ご祝儀相場に変わりはない」と説明する。  

初競りでは喜代村、やま幸が毎年注目を集めてきたが、この2社以外にも貴重な初物に目を付ける業者が出現した。埼玉県を拠点に食品スーパーを運営する「ベルク」だ。

◆スーパーに大間マグロ、「赤字覚悟」

 ベルクは、1959年に埼玉県秩父市で創業。同県を中心に千葉県、群馬県、東京都など関東全域で131店(22年12月現在)を展開する郊外型の大型スーパーだ。豊洲市場では、アジやサバなどの大衆魚やさまざまな水産物を仕入れている。  

通常、ベルクなどのスーパーが扱うマグロは、価格が手頃なメバチマグロの解凍品や養殖クロマグロなどが多い。初競りで価格が高騰する大間産ブランドマグロを欲しがるのは、高級すし店などを顧客に持つ仲卸業者がほとんどで、スーパーが買うことはほぼなかった。そんな中、ベルクは21年と22年の初競りに参加し、競争が激しい大間産を1匹ずつ入手。原島一誠社長は「食べる機会がめったにない、おいしい初物をお客さんに味わってもらいたかった」と思いを語る。  

初参戦の21年は、入荷した大間産約10匹のうちで最も大きく、この年の一番マグロ(208キロ)より重い237キロを1匹約900万円(1キロ当たり3万8000円)で落札。22年は、約20匹並んだ大間産のうち、一番マグロ(211キロ)に次いで2番目に重い200キロを同400万円(同2万円)で競り落とした。どちらも高値水準の1キロ単価1万円を大きく超えている。  

仕入れた初物は2年とも、初競り翌日に埼玉県や千葉県など計約10店で限定販売。赤身や中トロ、大トロの部位ごとに分け、刺し身用にして1パック(2~3人前)1000~3000円ほどで提供した。購入しやすい価格に抑えたため「赤字覚悟だった」(原島社長)というが、販売開始前から来店客の行列ができる人気ぶり。同社長は「とても好評で喜んでもらえた」とうれしそうに話した。

◆巣ごもり需要で追い風、仲卸業者と一騎打ちも

 新型コロナの流行で、人々の生活や消費行動は大きく変わった。外出自粛などで飲食店は売り上げが大きく落ち込み、外食需要が激減。豊洲市場も窮地に立たされた。それに加えて国内では、サンマやイカをはじめとする魚介類の水揚げ量が減少傾向にあり、厳しい状況が続いている。  

こうした中で、ベルクは新たな挑戦として初競りに挑んだ。「われわれスーパーが豊洲市場を支え、もう一度盛り上げていきたい」(同社海産部バイヤーの木野寛康さん)と感じたのがきっかけだった。巣ごもり需要の増加で店の売り上げが伸びたことが追い風になったほか、コロナ禍で価格が下がるのでは、との予測もあった。豊洲市場の業者にとっては驚きの参戦で「ノーマーク」だった同社は、22年はやま幸と一番マグロを競い合い、一騎打ちを展開。ギリギリまで奮闘した。  

同社は21年から「ベルクまぐろ宣言!!」と銘打った販売強化を実施。入手した初物の販売情報などをインターネット交流サイト(SNS)で発信したほか、22年には、釣り上げた大間の漁師に同社社員が感謝状を手渡し、漁師の思いをまとめた映像を動画投稿サイトで公開した。さらに、同宣言を打ち出した新聞折り込みチラシを約220万部配布し、22年に「新聞折込広告大賞」(日本新聞折込広告業協会主催)で最高賞の「J-NOA大賞」に輝いた。  

23年の初競りで初物を狙うかはまだ未定だが、原島社長は「正月を含め、価格の割においしいと価値を感じてもらえるマグロを提供していきたい」と意気込む。動向が注目されそうだ。

◆2023年の初競りは?

 日本の古き良き風習で、重宝されてきた縁起物の初荷。毎年注目される豊洲市場のマグロ初競りは、買い手同士が譲らず、白熱して値段が上昇するほど「大損するかもしれない」(仲卸業者)というリスクもはらむ真剣勝負だ。一方、命懸けでマグロを釣る漁師にとっては、一獲千金の夢でもある。  

23年の一番マグロについて、ある市場関係者は「1億円を超えることはなさそうで、前年並み(1500万~2000万円程度)になるのでは」と予想。もう少し高値になりそうとの見方もある。候補となる大型の国産天然クロマグロの水揚げが少なかったり、初物を狙う業者が増えたりすれば、大きく上回る可能性もある。マグロに魅せられたプロたちのさまざまな思いが交錯する、新年の「晴れ舞台」から目が離せない。

時事通信より転用

時事通信

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。

独自記事

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第5弾)

株式会社ブランニュープランニングの終りの始まりが来た。 民事再生という逃げ道をとった村田晃士氏 登記簿(関税人の名前消して) 3月末に動きがあった。私共データミックスの情報が嘘ではないことを証明した内容だ。(株)ブランニ […]

コメントなし

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第4弾)

2024年、石川県能登半島での大地震から始まってしまい、衝撃的な令和六年のスタートに不安を感じたが、被災者の皆さんの行動力や頑張りに胸を打たれながらの2ヶ月でした。特に心苦しいのがこんな大変な状況なのに発生してしまうのが […]

2 comments

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第3弾)

今年も残すところあとわずかとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 アメリカは大谷翔平選手移籍の話題で盛り上がる中、わが国では政治家の裏金問題が岸田政権を揺るがす事態となっています。 今から来年のことが心配になっている […]

コメントなし

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第2弾)

2023年ももうすぐ終わる。 年末に向けて慌しくなる中、私は取材と周りの情報収集に走り回った。 「この人は信用できない。」 こんな声をたくさん聞く。 そう、村田晃士氏のことだ。 きちんとやっていそうだが 「中身はなんにも […]

1件のコメント

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する

世界中で猛威を振るった新型コロナが国内では5類に移行し、街も日常を取り戻しつつあるが、それに伴い様々なトラブルも増えてきているようだ。 福岡、天神に本社を置く「㈱ブランニュープランニング」という主に飲食店の内装やロゴ作成 […]

2 comments

独自記事一覧

石川の一撃

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?ゴルフ場を巡る攻防「尾崎朝樹氏・田原司氏と児玉氏との関係性は?」(第11弾)

中国で発生した新型肺炎は終息する兆しがなく、世界中で猛威を振るいつつあります。 暖かい季節になってきましたが、読者の皆様も健康管理など、くれぐれもご留意ください。 前回、ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(以下クイーンズヒル […]

4 comments

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?ゴルフ場を巡る攻防「田原司氏と児玉氏との関係性は?」(第10弾)

温暖化と言われる時代ですが、やはり寒い季節ですね。 読者の皆さん風邪など引かないようにしてくださいね。 児玉氏の毎年の様にお友達と行われるマックスゴルフコンペ動画を見て 貴殿のスイングに目を奪われましたよ。 それに加え「 […]

1件のコメント

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?役員構成変更そして今後のI・Bは?(第9弾 後編)

豪雨、台風と今年も不安定な夏でしたが、やっと涼しくなってきました。 東京五輪もいよいよあと1年となりましたが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。 (取締役 児玉崇氏) 前回はデータ・マックス社の度重なる役員構成変更に […]

コメントなし

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?さらなる役員構成変更の意図は?(第9弾 前編)

梅雨が明け真夏日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか? 昨年にも増して暑さが厳しく感じられますね。 しばらく酷暑は続きそうですが、読者の皆様もお体に気をつけてお過ごしください。 さて、昨年も報じてきた「データ・マ […]

コメントなし

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?(第8弾 後編)

後編 「役員構成変更に見え隠れする児玉氏の未来図とは」 前編に続いてデータ・マックスグループの役員構成について考えた。 ※同役員構成については、「NetIB News」「データ・マックス」は善か悪か?信念か金か?(番外編 […]

1件のコメント

石川の一撃記事一覧

Copyright© 2017 データミックス All rights reserved.