北ミサイル激化、防衛強化は新造艦が柱
- 政治・経済
- 2022年10月10日
イージス護衛艦「あたご」=若狭湾(彦野公太朗撮影)
北朝鮮が9月下旬から異例のペースで弾道ミサイル発射を繰り返している。政府が年末に向けて進める防衛力強化の議論では、ミサイル防衛(MD)は最重要課題だ。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備断念を受けて新造される「イージス・システム搭載艦」が柱だが、極超音速ミサイルなど現状のMD突破を狙った中国やロシア、北朝鮮の新型兵器への対処が焦点となる。
「ここ数日でも立て続けに弾道ミサイルを発射しており、挑発を執拗(しつよう)かつ一方的にエスカレートさせている」。井野俊郎防衛副大臣は9日未明、異例の午前1時台に弾道ミサイルを発射した北朝鮮を非難した。北朝鮮は9月25日以降、過去にないペースで発射を繰り返し、10月4日には5年ぶりに日本上空を通過するミサイル発射に踏み切った。 現状、弾道ミサイルの迎撃態勢は2段構えだ。1段目は日本海上のイージス艦から発射する迎撃ミサイルSM3。2段目は落下してくるミサイルを迎え撃つ「地対空誘導弾パトリオット(PAC3)」。エンジンの推力で低高度を飛ぶ巡航ミサイルには「03式中距離地対空誘導弾改善型(中SAM改)」などで対処する。 防衛省はSM3やPAC3の迎撃範囲を広げた改良型の配備を進める一方、レーダーの高性能化を図る。
「イージス・アショア」で配備予定だった新型レーダーを搭載する新造艦は基準排水量約2万トン、全長約210メートル、全幅約40メートルで「過去最大級の大きさ」(防衛省幹部)となる。 大きさを生かし、多数の垂直発射装置(VLS)などを備える。敵のミサイル圏外からでも攻撃できる長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」を含め、あらゆるミサイルを搭載したMDの基盤として整備する。令和6年度に建造を開始し、9年に1隻目、10年に2隻目を就役させる予定だ。 だが、北朝鮮などが開発を進める極超音速滑空兵器(HGV)には強化したMDでも対処が難しい。マッハ5(音速の5倍)以上で飛ぶHGVはレーダーが探知しにくく、かつ変則軌道を描くため迎撃しづらいからだ。北朝鮮が6日に発射した弾道ミサイル1発の弾種は不明だが、低高度で変則軌道を描いたとみられる。 防衛省は来年度予算の概算要求に「HGV対処の研究」を計上し、金額を示さない「事項要求」として年末にかけて上積みを図る。敵拠点への攻撃力を持つことで相手に攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる「反撃能力」だけでなく、HGV対処も喫緊の課題だ。
産経新聞より転用
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