自民党安倍派は25日、内閣改造・党役員人事を受けて運営体制を強化した。会長候補と目される幹部が軒並み「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)批判や派内からの突き上げに直面し、今後の派閥運営に不透明感が漂っている。会長不在を危惧する声もあり、安倍晋三・元首相の国葬後の体制構築が焦点となる。

「安倍会長の遺志を継ぎ、心を一つにして政治を進めることを誓いたい」

安倍派の塩谷立会長代理は25日の派閥総会でこう強調し、結束を呼びかけた。この日は安倍氏の「四十九日」にあたり、出席議員が黙とうをささげた。

総会では、安倍氏の実弟の岸信夫首相補佐官と末松信介・前文部科学相を副会長に、萩生田政調会長を常任幹事に充てる人事が報告された。事務総長だった西村経済産業相の後任に高木毅国会対策委員長が就いた。高木氏を補佐する事務総長代理のポストも新設。柴山昌彦・元文科相、福田達夫・前総務会長、野上浩太郎参院国対委員長が就任した。

派内の体制は整ったものの、安倍氏が「将来の首相候補」として挙げた4人は身動きがとれないでいる。

安倍氏の最側近の一人だった萩生田氏は、文科相、経産相と政府の要職を歴任し、党三役への起用で「首相候補のキャリアを着実に一歩進めた」(中堅)と目されていた。ところが、旧統一教会との関係を週刊誌やワイドショーで繰り返し報じられ、「集中砲火状態」(ベテラン)となっている。24日には「関係を切る」とも明言したが、批判収束の兆しは見えない。下村博文会長代理も、文科相時代に旧統一教会の名称変更に関与したとの指摘があり、野党から批判を浴びている。

西村氏は入閣前、事務総長として派内の人事希望を取りまとめる役割を担っており、派内には「なぜ自分が入閣しているのか」(若手)との不満がくすぶっている。松野官房長官とともに閣内にいるため、派閥から距離を置かざるを得ない。

一方、参院安倍派会長の世耕弘成参院幹事長も会長候補に数えられる。衆院へのくら替えを模索するが、見通しはたっていない。

派内では、政府や他派閥との交渉力を高めるため、会長を置くべきだとの声が出始めている。内閣改造では、最大派閥として「閣僚5枠」を求めたが、実現しなかった。塩谷氏は25日の派閥総会で「思うようにいかなかった」と認めた。

安倍氏の国葬が行われる9月27日まで、会長不在の体制を維持することが決まっている。次期会長については、「(自然に)収れんしていく」(萩生田氏)との見方もあるが、安倍氏は「数年かけて後継者を育成するつもりだった」(幹部)とされ、次期体制の構築は難航が予想される。