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競泳・谷川亜華葉 パリで華麗に舞う 「世界新を目標に掲げて悠依さんに勝たないと」


練習後のクールダウンの時、笑顔で泳ぐ谷川亜華葉(撮影・吉澤敬太)© デイリースポーツ 練習後のクールダウンの時、笑顔で泳ぐ谷川亜華葉(撮影・吉澤敬太)

2024年パリ五輪の金メダルへ羽ばたくスイマー、谷川亜華葉(あげは、19)=イトマン近大=が8月8日の「蝶々の日」に合わせ、デイリースポーツの取材に応じた。高校生で初出場した昨夏の東京五輪、競泳女子400メートル個人メドレーは予選敗退したが、6月の世界選手権(ブダペスト)では右肩痛を乗り越え、8位入賞と確かな成長を刻んだ。東京五輪個人メドレー2冠の女王・大橋悠依(26)=イトマン東進=を超え、「世界新」が目標。161センチの小柄なアゲハがパリで美しく舞う。

◇   ◇

「泳ぐのが怖い」-。昨夏の東京五輪で高校生の谷川は失意の涙を流した。11カ月後、近大生となり、迎えた6月の世界選手権でまたも試練が襲った。

大会直前の練習中、右肩がずれた。「亜脱臼みたいな感じで周りの組織もガッツリやってしまった」。激痛で練習もできず異国で病院通い。将来を心配し周囲は休養を勧めた。

だが五輪の涙が浪速っ子をたくましくした。「意地で強行突破。薬で痛みを止めて後はアドレナリン。1日3錠までで4~6時間空けないとダメなのに30分後に飲んだりしていた。胃薬も飲んだ。それで痛みを減らして後はどうにでもなる」

気持ちで水をかいた。「今まで泳いだ予選の中で一番速かった。泳げると思っていなかった」。満身創痍(そうい)になり、世界舞台で初の決勝にたどり着き、安どの涙があふれた。決勝では8位ながら「すがすがしかった」と達成感があった。

弱い心を振り切った。高校生スイマーで注目され出場した五輪。直前に足首を痛め、パニックになった。予選12位で敗退。競技は初日で五輪の雰囲気に慣れる前に終戦した。

「初めてのオリンピック、日本代表というのがあって、プレッシャーに押しつぶされてしまった。怖いという思い、泳ぎたくないというくらい怖かった。私はプライドが高いから、頑張ろうとするけど体が追い付いてこない。そのズレで心から疲れてしまった」

五輪後もショックを引きずりながらレースに出続けた。その間は「泣き続けた」と言う。小学生時から女手一つで育てた母・里美さん(43)をはじめ、周囲から励まされ心身は回復。3月に劇的復活の高校新を出し、世界選手権の切符を獲得した。

そして、ブダペスト。再び訪れた悪夢に歯を食いしばり五輪の借りを返した。右肩には今も違和感が残る。それでも世界で戦う上で手にした勝負根性が最大の収穫。亜華葉は“さなぎ”を卒業した。

女王・大橋を追ってきた。「悠依さんは2冠を取り、その先の頑張り方、それまでの頑張り方、すべてを見せてもらっている。その背中を見て私は成長している」。超えることが恩返し。「悠依さんよりも上を見ている。世界新を目標に掲げて悠依さんに勝たないといけない」と誓った。

大橋からは「次は背負っていかないといけない立場になってきている」と後継も託された。「重みはあるけど、そういうレベルまで来られた自分を誇りに思う」とうなずいた。

世界選手権で新世代の台頭を目の当たりにした。女子400メートル個人メドレーで15歳のサマー・マッキントッシュ(カナダ)が自身より12秒24も速い4分32秒04で優勝。国内でも高校1年の成田実生(15)=金町SC=が谷川を猛追する。世代交代が進む競泳界で、19歳は特別、若くはない。

「パリでは決勝に残って表彰台に上がる。欲を言えば優勝ができたらいい。いつどうなるか、いつ辞めるか分からない。1個1個の大会をもしかしたら最後かもしれない、というくらい全力で取り組む」。色紙には「パリで優勝!!」と書き、蝶のイラストを添えた亜華葉。覚悟を胸に金メダルへと羽ばたく。(デイリースポーツ・荒木司)

◆谷川亜華葉(たにがわ・あげは)2003年6月15日、大阪府大正区出身。4歳で水泳を始める。四條畷高1年時の高校総体で200&400メートル個人メドレー2冠。昨年4月の日本選手権400メートル個人メドレーで、4分37秒90を出し初の五輪代表権を獲得。今年3月の代表選考会で同種目高校新記録の4分36秒45で優勝。4月、近大経営学部に進学。家族は母・里美さん、妹、弟。161センチ、52キロ。

◆蝶々の日 8月8日。8の字を横にすると蝶の形に似ており、蝶が葉っぱ(ハッパ)を主食としていることで沖縄の琉球城蝶々園が制定。

◆パリ五輪への道 五輪代表選考が例年通りなら、五輪前年、五輪と同一年に行われる世界水泳の優勝者が選出される。また、参加標準記録を突破し、五輪と同一年に行う全日本選手権で2位以上に入れば代表入りが有力になる。

デイリースポーツより転用


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