データミックスは企業間取引・企業経営に必須なビジネスニュース、政治・社会ニュースを配信しています

お名前ドットコム

【世界陸上】サニブラウンは日の丸を受け取らなかった、入賞の先を本気で目指したからこその振る舞い…担当記者の目


◆世界陸上 第2日(16日、ヘイワード・フィールド)

90年ぶりとなる男子100メートル世界大会決勝の舞台で、7位と健闘したサニブラウン(右端=代表撮影)

© スポーツ報知/報知新聞社90年ぶりとなる男子100メートル世界大会決勝の舞台で、7位と健闘したサニブラウン(右端=代表撮影)

 【ユージン(米オレゴン州)16日=細野友司】男子100メートル決勝で、サニブラウン・ハキーム(23)=タンブルウィードTC=が10秒06(向かい風0・1メートル)で7位入賞した。同日の準決勝は10秒05(追い風0・3メートル)の1組3着で突破。日本勢が同種目の決勝に進むのは史上初で、五輪を通じても1932年ロス五輪6位の吉岡隆徳以来、90年ぶりの快挙だった。歴史的な“10秒間”と、挑戦の軌跡を「見た」―。9秒86で制したフレッド・カーリーを筆頭に、米国が31年ぶりに表彰台を独占した。

 記憶はない。サニブラウンは、夢中の10秒間を駆けた。「独特の緊張感があった。全然、覚えていない」。我に返ると、地鳴りのような歓声。米国の表彰台独占を喜ぶ「USA!」を耳に刻み、トラックにぺたりと腰を落とした。力は使い果たした。「きつかったですね」。5年前、ロンドン大会200メートルと同じ、7位入賞。レース後に差し出された日の丸は、受け取らなかった。100メートルで、日本勢90年ぶり世界大会決勝。歴史は塗り替えたが「メダルを取ってないので、受け取ってもっていう感じ」。入賞の先を、本気で目指したからこその振る舞いだった。

決勝3分前。決戦の時を告げるように、2機の戦闘機が上空の青空を切り裂いた。「何が起こるか分からない。やってやろう」。名前をアナウンスされ、顎をくっと引いて100メートルの旅路を見やった。号砲。序盤から鋭く立ち上がれず、伸びない。タイムも準決勝から0秒01落とした。「準決勝で使い切った感じがあって、体の動きは良かったけど、最後が甘かった。悔しかったけど、やりきったかな」と静かにうなずいた。

 17年3月2日。味の素トレセンの会議室で、サニブラウンが紡いだ目標が忘れられない。「地上最速を目指そうと思う」。この言葉に、常にウソなく向き合った5年間だったと感じる。日本を離れ、同年秋から米フロリダ州が拠点。ウサイン・ボルトの9秒58。人類の高みを、本気で目指した。今大会銅のブロメルら9秒台スプリンターと日々汗を流し、筋力や精神力を鍛えた。「海外に行って(フロリダ)大学に行って、(19年に)プロになって、というのは本当に正解だと、良い証明ができた」と実感を込めた。

 目標に真摯(しんし)だからこそ、次の一歩が果てしなく重いことも分かっている。メダルへ―。今大会でいえば、0秒18、2メートル足らずの差だ。「すぐそこで手が届きそうだけど、近いようで遠いというのが一番のイメージ」と形容した。わずか1センチを、たったの0秒01を削り出すのが、どれほど大変か。「1ミリを縮めるために皆、練習に励んでいるので。自分もしっかり、一日一日、一秒一秒を無駄にせず頑張りたい」

 サニブラウンを取材し始めたばかりの15年夏。セミの声が響く、暑い盛りの日だ。都内のグラウンドで「10秒の壁を感じてはいけない」と語った姿もよみがえる。当時まだ自己記録10秒2台。4年後の19年、9秒台突入で現実にした。

 「トップに立てる選手になるように、アメリカの1、2、3を崩したい」。決勝直後に口から出た言葉は、果たして。23年ブダペスト世界陸上、24年パリ五輪、25年には東京世界陸上が待つ。言葉を、目標を裏切らない大器に、表彰台、そして頂点の夢を託してみたい。

 ◆男子100メートルリアクションタイム 号砲の反応を表すリアクションタイムは、決勝ではC・コールマン(米国)の0秒104が最高。今大会予選から合わせ、全選手で最速タイのスタートだった。3着だったT・ブロメル(米国)が0秒110、2着だったM・ブレーシー(米国)が0秒118と続いた。サニブラウンは予選、準決勝進出者24人中3番目に速い0秒112で飛び出したが、準決勝は0秒124、決勝は0秒147の8人中6番目スタートと徐々に出遅れた。

 ◆吉岡 隆徳(よしおか たかよし)

 1909年6月2日、島根県生まれ。スピードスケート選手のように左右にステップしながら飛び出すスタートダッシュが持ち味。23歳で32年ロス五輪に出場すると1、2次予選、準決勝を突破して日本勢初の決勝進出。6位入賞の偉業を成し遂げた。

 同大会同種目で優勝したE・トーラン(米国)が「ミッドナイト・エキスプレス(深夜の超特急)」と呼ばれたことにちなみ、吉岡氏には「暁の超特急」の異名がつけられた。

 五輪短距離種目での日本勢入賞はその後、92年バルセロナ大会400メートル8位の高野進まで現れなかった。吉岡氏は36年ベルリン五輪にも出場したが、2次予選敗退。現役引退後は教職などを経て、実業団のリッカーミシン監督に就任。64年東京五輪に向けてまな弟子の1人である飯島秀雄を指導。準決勝進出を支えた。吉岡氏のスタート技術を伝授された飯島には「暁のロケット」の異名がついた。84年5月5日、胃がんのため、74歳で死去。

 ◆サニブラウン・ハキーム 1999年3月6日、東京都生まれ。23歳。小学3年から陸上を始め、東京・城西高2年時の15年7月、世界ユース選手権で100&200メートル2冠。同8月の北京世界陸上200メートルでは史上最年少16歳172日で準決勝進出。17年日本選手権短距離2冠。同年9月から米フロリダ大に進学し、19年6月の陸上全米大学選手権で9秒97の日本新(当時)を樹立。21年東京五輪は200メートル予選敗退。190センチ、83キロ。家族はガーナ人の父と、日本人の母、弟。

スポーツ報知より転用


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。

独自記事

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第5弾)

株式会社ブランニュープランニングの終りの始まりが来た。 民事再生という逃げ道をとった村田晃士氏 登記簿(関税人の名前消して) 3月末に動きがあった。私共データミックスの情報が嘘ではないことを証明した内容だ。(株)ブランニ […]

コメントなし

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第4弾)

2024年、石川県能登半島での大地震から始まってしまい、衝撃的な令和六年のスタートに不安を感じたが、被災者の皆さんの行動力や頑張りに胸を打たれながらの2ヶ月でした。特に心苦しいのがこんな大変な状況なのに発生してしまうのが […]

2 comments

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第3弾)

今年も残すところあとわずかとなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 アメリカは大谷翔平選手移籍の話題で盛り上がる中、わが国では政治家の裏金問題が岸田政権を揺るがす事態となっています。 今から来年のことが心配になっている […]

コメントなし

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する(第2弾)

2023年ももうすぐ終わる。 年末に向けて慌しくなる中、私は取材と周りの情報収集に走り回った。 「この人は信用できない。」 こんな声をたくさん聞く。 そう、村田晃士氏のことだ。 きちんとやっていそうだが 「中身はなんにも […]

1件のコメント

詐欺師か?ただの無能経営者か?行橋が生んだ経営者一家 村田晃士を追及する

世界中で猛威を振るった新型コロナが国内では5類に移行し、街も日常を取り戻しつつあるが、それに伴い様々なトラブルも増えてきているようだ。 福岡、天神に本社を置く「㈱ブランニュープランニング」という主に飲食店の内装やロゴ作成 […]

2 comments

独自記事一覧

石川の一撃

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?ゴルフ場を巡る攻防「尾崎朝樹氏・田原司氏と児玉氏との関係性は?」(第11弾)

中国で発生した新型肺炎は終息する兆しがなく、世界中で猛威を振るいつつあります。 暖かい季節になってきましたが、読者の皆様も健康管理など、くれぐれもご留意ください。 前回、ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(以下クイーンズヒル […]

4 comments

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?ゴルフ場を巡る攻防「田原司氏と児玉氏との関係性は?」(第10弾)

温暖化と言われる時代ですが、やはり寒い季節ですね。 読者の皆さん風邪など引かないようにしてくださいね。 児玉氏の毎年の様にお友達と行われるマックスゴルフコンペ動画を見て 貴殿のスイングに目を奪われましたよ。 それに加え「 […]

1件のコメント

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?役員構成変更そして今後のI・Bは?(第9弾 後編)

豪雨、台風と今年も不安定な夏でしたが、やっと涼しくなってきました。 東京五輪もいよいよあと1年となりましたが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。 (取締役 児玉崇氏) 前回はデータ・マックス社の度重なる役員構成変更に […]

コメントなし

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?さらなる役員構成変更の意図は?(第9弾 前編)

梅雨が明け真夏日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか? 昨年にも増して暑さが厳しく感じられますね。 しばらく酷暑は続きそうですが、読者の皆様もお体に気をつけてお過ごしください。 さて、昨年も報じてきた「データ・マ […]

コメントなし

「NetIB News」「データマックス」は善か悪か?信念か金か?(第8弾 後編)

後編 「役員構成変更に見え隠れする児玉氏の未来図とは」 前編に続いてデータ・マックスグループの役員構成について考えた。 ※同役員構成については、「NetIB News」「データ・マックス」は善か悪か?信念か金か?(番外編 […]

1件のコメント

石川の一撃記事一覧

Copyright© 2017 データミックス All rights reserved.