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世界が大騒ぎ「ロシアのウクライナ侵攻」その理由 なぜそこまでウクライナに執着するのか


ウクライナの南部オデッサのウクライナ軍(写真:Christopher Occhicone/Bloomberg)© 東洋経済オンライン ウクライナの南部オデッサのウクライナ軍(写真:Christopher Occhicone/Bloomberg)

ロシアによるウクライナ侵攻の可能性が高まっているとして、ヨーロッパ情勢が緊迫化している。2022年に入ってすでに4度の米露間の協議が行われており、1月21日にはアメリカのブリンケン国務長官とロシアのラヴロフ外相との外相会談が開催されたが、めぼしい成果は得られなかった。

外相会談後にはアメリカからの書面にて、北大西洋条約機構(NATO)東方拡大はしないようにとのロシアの要望を拒否。ウクライナのNATO加盟をめぐる米露の立場は完全に行き詰まり感を見せている。

アメリカは、ロシアによるウクライナ侵攻に備えて、アメリカ軍の東欧への派遣を準備している。仮に、ロシアによるウクライナ侵攻が行われた場合、第二次世界大戦以来のヨーロッパ地域での戦争にまで発展するおそれがある。はたしてこの危機は回避できるのだろうか。

ロシアのウクライナへの「執着」

ロシアとて、意味もなくNATOを敵に回して戦争を始める意味はない。ウクライナ国境に10万人規模と言われる戦力を集結させているロシアの狙いは何か。それを知るためには、なぜ、ロシアがウクライナにこれほど執着しているのかを知る必要がある。

ロシアがウクライナに執着する理由は大きく2つあると考えられる。1つは国家安全保障に関するもので、もう1つはロシアとウクライナの歴史的・文化的親近性に関係するものだ。

国家安全保障に関してロシアは、よく報じられているとおり、ウクライナのNATO加盟阻止が主たる目的である。隣国ウクライナがロシアの抑止を目的とするNATOに加盟することで、ロシアの安全保障が脅かされるのを防ぎたいということであり、シンプルでわかりやすい論理である。安全保障の観点から見れば、ロシアはウクライナにおける影響力を確保し、自らの勢力圏にとどめようとしていると見える。

しかし、ウクライナがNATOに加盟しようがしまいが、この期に及んでロシアの勢力圏にとどまるとは考え難い。さらに、ウクライナが集団防衛の国際組織であるNATOに加盟することがロシアにとってどの程度の脅威になるかといえば、ロシアが侵略の意図を見せない限り、NATOがロシアを攻撃することはありえない。

実際、ロシアはNATO原加盟国であるフランスやドイツとは良好な関係を築いており、特にドイツとの間では、アメリカやヨーロッパ諸国の懸念に抗してガスパイプライン「ノルドストリーム2」を開通させようとしているほどである。また、ヨーロッパ以外の唯一のNATO加盟国であるトルコとの関係も良好であり、トルコにとってのロシアはアメリカと並んで主要な武器の購入国である。

また、軍事力の大きさで比較しても、ウクライナがロシアにとって大きな脅威になるとは考えられない。ウクライナが兵員約25万、戦車2500台、装甲車両1万1435台、自走砲785基であるのに対し、ロシアは兵員約100万、戦車1万3000台、装甲車両2万7100台、自走砲6540基とされる。

NATOが喉元まで迫ってくる?

それでもロシアがウクライナのNATO加盟を恐れる安全保障上の背景には、ウクライナがロシアとNATO(ポーランドやルーマニア)との間に位置しているという事情がある。

ウクライナが加盟すれば、NATOがロシアの喉元までやってくることになる。ただし、2004年にNATOに加盟したバルトのエストニアやラトビアもまた、ロシアと国境を接しているのである。バルト諸国はロシアにとっての安全保障上の脅威となっているだろうか。必ずしもそうとは言えないだろう。

では、ロシアがウクライナを特別視するもっと重要な理由は何か。それはウクライナとの歴史的・文化的親近性とそれに伴う近親憎悪にあると考えられる。

近代国家としてのウクライナ国家は1991年のソ連崩壊後、初めて国家として成立した非常に若い国であるが、歴史的に見れば、ロシアを含む東スラブ民族の発祥の地である。つまり、ロシア人はウクライナを自分たちの一部と感じている。

一方のウクライナ人はロシアではなくウクライナとしてのアイデンティティを持っており、この双方の認識の違いが問題なのである。ロシアによるウクライナへの執着は大きく、ウクライナのロシアへの思いはほとんどないというわけである。この関係を一方的な片思いに例えてもあながち間違いではないだろう。

ウクライナ内でも「分裂」している

ただし、ウクライナもけっして一枚岩ではない。黒海に臨むロシア軍の要衝が置かれるクリミアや、ロシアと接するウクライナ東部のドンバスと呼ばれる地域では、ロシア語話者が大半で、実際にロシアとの親近性を感じているのに対し、首都キエフやポーランドに近い西部地域では、ロシアとの親近性を感じていないどころか、反感を持っている。

特に、西部地域では、かつてソ連の構成国であったにもかかわらず、現在、ウクライナ語しか話せない人々もいる。このウクライナ国内における分断が最大の問題となっている。国内の対立からの内戦が最も大きな犠牲を生むことは歴史が示している。

ご存じのとおり、2014年初めにウクライナでクーデターが起こり、親欧米反露の右派政権が成立したことで、同年3月にロシアはクリミアを「併合」する暴挙に踏み切ったが、同時に親ロシア系が多数を占めるドンバス地域では分離独立の機運が高まった。ウクライナの新政権がドンバス地域とは政治的立場を異にする極右政権と見られたためである。こうしてドンバス一部地域の半独立状態が生まれ、ウクライナ正規軍と分離武装勢力との間で戦闘状態が発生した。

ただ、ロシアはクリミアとは違って、ドンバス地域を「併合」する動きは見せなかった。この地域はクリミアほどの軍事的な価値を持っていないからだ。言ってしまえば、ロシアにとってコストとパフォーマンスが見合わなかったのである。ただし、ロシア軍は陰に陽に武装派勢力を支援してきたし、住民への社会的支援も実施している。ウクライナ政府による社会保障がまったく及んでいないからである。

見方を変えれば、ドンバス地域の住民を保護しているのはロシア政府しかいない。ここに、ドンバス地域とロシア政府との結びつきが一層強まっていく要因がある。

このようにロシアの兄弟民族であるウクライナ人が、ロシアとの歴史的・文化的紐帯を断ち切り、国内のロシア文化を否定し、ロシア語を排除しようという動きを見せていることが、ロシア人には許容できないのである。これはロシアにとっての歴史文化的アイデンティティの否定に他ならない。

しかも、ロシア文化圏に属するドンバス住民を武力攻撃している(とロシアには見える)のである。これが、ロシアがウクライナ問題に強硬に固執する国民心理的な理由だ。

ウクライナは停戦協定に後ろ向き

この内戦状態を打開するために、ドイツとフランス、そして欧州安全保障協力機構(OSCE)が動いて、2015年2月に現行の停戦協定である「ミンスク2」がウクライナとロシア、分離派武装勢力(自称「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」)、およびOSCEによって署名された。この協定は、当時のドイツのメルケル首相の尽力により実現したもので、ウクライナ情勢の安定化にとって最も重要な政治的合意となっている。

これによって熾烈な戦闘は回避されたが、散発的な交戦は続いており、戦線は膠着状態となっている。ミンスク合意の履行を欧米諸国が求めるのは当然として、興味深いことに、ロシアがミンスク合意の履行の重要性を繰り返し述べているのに対し、ウクライナ側はミンスク合意に否定的であることだ。

どういうことなのか。ミンスク合意は単なる停戦合意ではない。停戦ラインと中立地帯を定めるほか、地方分権化を進め、ドンバス地域の特別な地位、つまり強い自治権を認めることや、それに伴う首長選挙が行われるべきことなどの政治条項が含まれているのである。

ウクライナがこの合意を否定的にとらえ、ロシアが肯定的にとらえている背景にはこうした事情がある。そして、ロシアのウクライナにおける目標は、ドンバス地域に自治権を確立させて、親露派地域としてウクライナに残すことだ。ロシアが不満を募らせている本当の理由は、ウクライナ政府が停戦協定を守らず、ドネツク・ルガンスク一部地域の武力による奪還を試みていると考えていることにある。

このように見てくると、ロシア側からの見え方と欧米からの見え方は全然違うことに気が付くだろう。この「見え方の違い」が最も危険なのである。緊張緩和に向けた重要な方途は、相手側の見え方、受け止め方をよく理解して行動することだ。

プーチンのロシアには、ロシア語話者やロシア文化圏に生きる人々を保護するという大義が存在する。この大義に照らしても、ドンバスの自治権を確保することは絶対譲れないラインである。

現在、ロシアの国会であるドゥーマにおいて、ドンバス地域の独立承認についての議論が提起されていることに注意が必要だ。ウクライナ側との合意が困難である以上、ウクライナ東部のドンバス地域を独立させてしまったほうが、扱いが簡単になるとの判断に傾きつつある可能性がある。

その場合には、ロシアがドンバス地域を国家承認し、「人民共和国」との協力関係に基づき、内政干渉ではなく、「国際法に基づき」ウクライナと対峙するというシナリオが現実味を帯びることになる。そうすると、ロシアがウクライナに侵攻したと言えるのか難しい判断となるだろう。

最悪の事態を避けるには

段階的に事態を進めることでNATOやアメリカが武力行使に踏み切るきっかけが曖昧になるのもロシア側の意図である。形だけでも「合法性」を整えて非難をかわそうというのである。このシナリオの場合、ロシアによる大規模な軍事侵攻が発生するよりも、欧米側の対応はより中途半端なものになる危険性がある。

ロシアはいかなる侵攻を行うつもりもないと繰り返し主張している。それはそのとおりだ。軍事侵攻はあまりに大きなリスクを伴うからだ。むしろ、ドンバス地域の独立承認を後押しするなどのソフトな侵攻を検討する可能性が高いのではないか。その意味で、今事態を悪化させないために最も重要なのは、ウクライナ東部の停戦を実現し、情勢を安定化させることである。

1月26日、パリでドイツ、フランス、ロシア及びウクライナの政府高官による四者会談(ノルマンディー・フォーマット)が行われ、ミンスク合意に基づく停戦の実現の重要性が確認され、2週間以内にベルリンで再度協議を行うことでも合意された。

この協議にはアメリカは参加していない。現在、ウクライナ情勢はNATOの戦略とリンクされているが、この問題での米露間の立場は簡単には埋められない。事態のエスカレーションを防ぐためには、まず、ミンスク合意の履行を確保することが最優先事項となっているのである。引き続き、ノルマンディー・フォーマットの推移を注視していく必要がある。

東洋経済オンラインより転用


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