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「204円」弁当に「1080円」おにぎり! ハイレベルすぎるスーパー弁当の知られざる“進化”


© ITmedia ビジネスオンライン 2.5キロ以上ある「爆弾おにぎり」(1080円)

コロナ禍が収束せず、自宅で過ごす時間が長い生活が続く。毎日3食、家でごはんを手作りするのは厳しいと思う人も増えている。そうした時に、スーパーの弁当が頼りにされている。

価格が安いので、コロナ禍の影響で生活に余裕がなくなった人にも支持されている。全般にコンビニよりは100円ほど安い。「ロヂャース」の204円弁当や、「ラ・ムー」の198円弁当といったように、ディスカウントスーパーでは200円前後の超安価な商品も存在する。

日本チェーンストア協会が発表した、2021年10月度の販売統計(月報)によれば、総菜部門の既存店売上高は前年同月比108.6%となっており、依然好調だ。9月度も同111.1%で、デルタ株が収束してからも、スーパーの弁当や総菜が売れている。

スーパーの弁当や総菜のレベルアップが目覚ましいのも、好調の要因として挙げられる。

「お弁当・お惣菜大賞」という、日本スーパーマーケット協会が主導する表彰制度も設けられている。弁当部門をはじめ、総菜、丼、麺、スイーツなどの部門賞が毎年発表されている。12年に始まり、21年の応募総数は4万2549件に上った。特に各部門で1商品が選出される最優秀賞を、受賞するのは大変な栄誉だ。

そうした中で、受賞歴を重ねる優秀なスーパーがある。埼玉県を本拠に関東に店舗が広がる「マミーマート」、神奈川県逗子市を拠点とする「スズキヤ」、関西の高級スーパー「いかりスーパー」、福岡県と長崎県に店舗がある「ダイキョーバリュー」などだ。これらのチェーンには、グルメ弁当を続々と生み出す独特な仕組みがある。

一方で、時折開催される駅弁大会を除いて、1000円を超える弁当は、高級スーパーでも成立しづらいようだ。しかし、デカ盛りによって実現させるケースもある。

埼玉県に4店ある「スーパーマルサン」の名物「爆弾おにぎり」や、関東から関西にも進出した「ロピア」の「ローストビーフパエリア」「照り焼きのレタスチャーハン」などが挙げられる。これらの“ドカ盛りメニュー”は、いずれも1000円くらいする。しかし、4~5人分以上の量があるので、家族などで分ければ、1人当たりの食費では激安となるのだ。

では、スーパーの弁当は実際、どのような進化を遂げているのか。具体的に見ていこう。

●ハイレベルなサンマの弁当を開発

まず、お弁当・お惣菜大賞における常連組の取り組みを見てみる。

マミーマートは、埼玉県を中心に東京都、千葉県、群馬県、栃木県に「マミーマート」及び「生鮮市場TOP」チェーン約80店を展開する中堅の食品スーパーだ。競合に、ヤオコー、ベルクといった強力なチェーンがある。同社がとった差別化戦略は、どこよりも食べておいしい弁当や総菜を提供することだった。

21年におけるお弁当・お惣菜大賞の弁当部門には、マミーマートの「骨まで食べられる三陸産秋刀魚と秋の味覚御膳」が輝いている。しかも、同社は8年連続で何らかの賞をとっている。関東で最もグルメ度が高いスーパーの一つだ。製造はグループ会社の彩裕フーズが担う。

骨まで食べられる三陸産秋刀魚と秋の味覚御膳は、丸ごと1匹のサンマの塩焼が入っている。それだけでもインパクトがあるが、メザシのように頭からしっぽまで食べられてしまう画期的な弁当だ。昨年に開発した商品で、今秋は2年目の販売となる。

開発の動機として「コロナ禍で移動制限が求められる中、何とか秋の季節感を出せるものをと検討して、サンマをシンプルに塩焼で提供するのがベストと考えた」と同社・広報は説明する。実際、年配の顧客からはサンマを食べたいとの要望が多く寄せられていた。

しかし、お年寄りに骨のある魚は危なくて食べさせられないと、買い控えする主婦も多い。

そこで、水産加工食品などを扱うモリヤ(宮城県気仙沼市)が開発した、魚の骨を脆弱(ぜいじゃく)化する特許製法を施したサンマを使った。高温真空調理により、身にダメージを与え過ぎずに骨が軟らかくなる加工で、風味や栄養は損なわれないという。

実際に食べたところ、まるでシラスのように骨があるのかも分からないほどだった。

当初は、骨まで食べられるという利点が伝わらず売れ行きは低調だった。しかし、粘り強くPOPなどで宣伝を続けた結果、538円という価格帯だが売り上げは2位にまで浮上した。これまで累計で17万食を販売している。そして現状、同様の商品が大手スーパーの売り場に並ぶようになっている。

今後は「骨まで食べられるお魚シリーズ」として訴求する予定で、年明けに第2弾のホッケが登場するという。

21年は、この他にも丼部門で「自家製辛味噌で食べる焼き鳥丼(かわ・もも)」と「お肉たっぷりスタミナ丼」が入選するなど、彩裕フーズは計9作が入賞した。

20年も、惣菜部門で「浜名湖産生青のりと藻塩のコロッケ」、麺部門で「うまみ溢(あふ)れるごぼう天そば」と2部門で最優秀賞を獲得している。19年はパン部門で「5種野菜とローストビーフバジルポテト」が最優秀賞を受賞した。

部門に偏りがなく、ハイレベルな商品をコンスタントに送り出せるのはなぜか。彩裕フーズの「他社に無いもの、自社にしかできないものを原料から作ること」というモットーが、組織に浸透しているからだろう。原料から考えることでオリジナリティーが出せる上に、従業員の加工技術が向上。コスト管理がしやすく利益も確保できるのだ。

●ネパール出身社員のカレー弁当

ダイキョープラザ(福岡市)は、お弁当・お惣菜大賞において、21年まで9年連続でいずれかの賞を受賞している。九州で“最強の弁当”が売りの企業だ。生鮮専門スーパー「ダイキョーバリュー」などを福岡県内に5店、長崎県五島列島に1店、それぞれ展開している。

19年には麺部門で福江店(長崎県五島市)の「ニンニク薫る五島つばき油めん」が最優秀賞を獲得した。通常はゆでて麺つゆにつけて食べるのが一般的だった五島名産「五島うどん」を、焼きうどんにしたものだ。

開発にあたっては、焼きそばを食べ歩いて研究を重ねた。ゆでたうどんを普通に炒めると麺がくっついて塊になってしまうが、五島名産の椿油で炒めると、麺がほどけることを発見。風味も向上した。このように、五島つばき油めんは、五島の食文化史を変える意義深い商品だ。なお、香りづけには、14年の惣菜部門準大賞受賞作である自家製の「にんにく味噌」を使用している。

21年には、弁当部門で五島の山海の幸をたっぷりのっけた「五島を食べる本気ののり弁」が入選した。また、おにぎり部門では、五島「塩工房つばき窯」の塩職人・山田等氏の天然塩を味わう「五つの味の塩おにぎり」が入選している。五島発の弁当は、同社ならではの名物となっている。

また、弥永店(福岡市)の売りの1つに、本格的なネパール料理の弁当がある。開発には、ネパール出身の同社の社員、コイララ・カマル氏が携わっている。20年7月より「コイララカレー」を出し始め、水曜に販売(今年は終了)。毎回完売になる人気となっている。お昼前に売り切れる日もあるほどだ。カレーの種類は、チキン、マトン、ダル(豆)が中心で、ダルの種類はいろいろ変わる。その日のメインのカレーに、4~6種の和え物などのおかずを入れて作るカナセット(弁当)を出している。

弥永店では、専門店も顔負けの12尺分もの非常に充実したスパイスコーナーを作っている。また、バスマティライスなど長粒米も10種類ほど品ぞろえしている。そのスパイスと長粒米を使ってカレーを数種類作っており、人気の商品となっている。

さらに同社では、元西鉄グランドホテルシェフで、フランス料理界最高の名誉とされる「ディシプル・ド・オーギュスト・エスコフィエ」の称号を持つ、青野清彦氏が店舗を巡回して実演販売を行う。商品は、海老クリームコロッケ、ハンバーグ(5種のソース)、チキン南蛮、ハヤシライス、ローストビーフなどがあり、品数も豊富だ。弁当も多数そろえており、電話やSNSでの問い合わせが多い人気商品となっている。

「日曜朝市」と「木曜夕暮れ市」を2枚看板に、年末のアメ横かと思うほどの集客を誇るダイキョーバリュー。弁当・総菜売り場は10坪ほどのスペースで、直営総菜部の売り上げ構成比は8%を占める。弁当は25~30種類を販売。最も売れるのは、スタンダードな「焼鮭弁当」で、月間約45万食が出る。弁当の平均単価は438円となっている。

同社では、9年も連続でお弁当・お惣菜大賞に入賞できた理由として「日々おいしいものを作ることを考え、地元の食材でお客さまに食べてもらいたいものを追求している。出来上がった商品からさらに意見を出し合い、改良して出品しているからではないか」(弥永店・浦田一延店長)としており、美食に対する姿勢の違いを強調した。

●2.5キロの爆弾おにぎり

さて、激安路線の方に目を転じてみよう。

埼玉県内に4店を構えるマルサン(埼玉県越谷市)が展開する「スーパーマルサン」は、「まる弁」という270円の激安弁当が売りのディスカウントスーパーだ。店舗ごとに品ぞろえは異なるが、越谷花田店(埼玉県越谷市)の八木栄樹店長によれば、まる弁の種類は同店でも30種類くらいあるとのこと。総菜・弁当売場にずらりと並んだ光景は圧巻だ。

越谷花田店では、まる弁は1日に300~500個が売れる。全て店内の手づくりなので、担当者は午前6時に出勤して準備を進める。

常時、十数種類の弁当が270円で販売されているが、売れ筋は「サバ弁当」「鮭弁当」「唐揚弁当」「和風ハンバーグ弁当」あたりだ。天丼やカツ丼も270円。サバ弁当の場合、大きな切身のサバの塩焼だけでなく副菜、漬物が入り、ご飯もしっかりと分量がある。

「正直、まる弁では利益は出ていないが、まる弁を目的に来てもらって、他の商品を見てもらいたい。お店全体で売り上げを出す考え方」と八木店長。薄利多売で、地域の顧客に喜んでもらって、末永く愛される店にするための集客装置としてまる弁を位置付けている。

その成果があって、特に休日にはオープン前に長蛇の列ができる人気スーパーとなった。

同店の新しい名物が、超特大サイズの「爆弾おにぎり」(1080円)。2.5キロもの重量があり、まるで鏡餅のようだ。通常のおにぎりの10個分以上の大きさがある。しかも中には、ロースカツ、唐揚げ、ひじき煮など8種類以上の具材が入っている。食べる時はホールのケーキのように包丁で切り分ける。

もともとは、メガ盛りを売りにした桶川店(埼玉県桶川市)の名物。今年7月にこのおにぎりがテレビ放映され、越谷花田店にもないのかと顧客からの問い合わせが相次ぎ、8月から提供し始めた。

ボウルにラップを敷き、その上にご飯を盛り、具材を入れて、ご飯を被せ、上にのりを張る。さらに裏返してのりを張り、丸く成型する製法に到達。担当の吉田禎寿氏は、今では5分くらいで1個を作れるまでにスピードアップした。

週末を中心に販売し(予約可)、売れるのは最高でも1日に10個くらいだが、子どもたちにとても喜ばれている。また、遠方からわざわざ爆弾おにぎりを買いに来る人が後を絶たず、客層が広がった。

「爆弾おにぎりを見に来てもらえるだけでも、並べて置く価値がある」と八木店長は、新たな名物の誕生に満足げだ。

●チェーンの個性がにじみ出る

価格の安さでは、ロヂャースも負けてはいない。ロヂャースは北辰商事(さいたま市)が経営するディスカウントスーパーで、ロードサイド中心に、埼玉県と東京都に15店を展開している。

ロヂャースでは、最安値で204円の弁当を販売している。店内調理で提供され、チキンカツ、メンチカツ、アジフライ、エビフライ、野菜炒めといった種類がある。激安でもメインのおかずにプラスして、きんぴらごぼう、ウインナーなどの副菜も入っている。ご飯もしっかりと入っているので、満足できる人も多いはずだ。米は自社のプライベートブランド「マイカイ」の福島県産会津喜多方こしひかりを使用。マイカイのふりかけも付いている。ソースやしょうゆが付いていないのは少し残念に感じられる。

スパゲティナポリタン、焼きそばはなんと106円で販売されているが、量が少ない。食事としては物足りず、おかずの一つとして考えるべきものだろう。

ロヂャースは激安弁当でもうけるというよりも、弁当で味わった米やふりかけの購入につなげるのが狙いで、試食代わりに使っている面が強い。

スーパーの弁当には、機能性を追求したもの、グルメに振り切ったもの、200円前後と安さの限界に挑んだもの、デカ盛りで楽しさを演出したものなどと、さまざまな意図で販売された商品がある。チェーンの個性がにじみ出ているといえる(文中の弁当・総菜には一部終売、曜日など限定で販売される商品が含まれる)。

(長浜淳之介)

ITmedia ビジネスオンラインより転用


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