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いくつもの泣き笑いがあった東京五輪は8日に閉幕。目標を達成した選手がいれば、涙をのんだ選手もいた。そんな日本代表選手たちの裏話に迫る連載(不定期)をスタート。第1回は自転車トラック種目、女子オムニアムで銀メダルを獲得した梶原悠未(24)=筑波大大学院=が「あわや」のシーンについてなど、秘話を明かした。

梶原悠未© サンケイスポーツ 梶原悠未

右太もものばんそうこうは勲章だ。1日に4種目を行うオムニアム。3種目目終了時点で2位の梶原は最終種目の終盤、「ガシャーン」という衝撃音とともに落車。会場には緊張感が走った。

「(ライバルとの)ポイント差を確認していて…無理やり振り返って掲示板を見たので、前の選手の動きに対してハンドルを切れませんでした」

10周ごとに1位5点、2位3点…4位1点(最終周は倍)が加わる最終種目のテンポレース。優勝にはあと何点必要か。逆転されないために誰をマークすべきか。戦略を立てるために必要な動作だった。残り9周での落車にも、昨年の世界選手権女王は慌てなかった。

梶原が銀メダルを手に、応援への感謝をつづった(撮影・武田千怜)© サンケイスポーツ 梶原が銀メダルを手に、応援への感謝をつづった(撮影・武田千怜)

「よし。ここで上(1位)と下(3位以下)のポイントを止まって見られる。1度、心拍を落ち着かせて、冷静に戻ろう。これをチャンスと捉えようと思いました」

規定により、落車しても5周以内に集団に戻れば、周回遅れとはならない。冷静な梶原に対して、支えるコーチ陣はバタバタだった。

「すぐに駆けつけてくれた。事前に『落車しても落ち着いていけばいい』と話していたけど、いざ落車するとコーチがすごく焦っていて。5周あるのに、2周くらいで戻されました(笑)」

何とか逃げ切って銀メダルを獲得したが、〝試練〟はこれだけではなかった。最終種目。ライバルがスタートラインで待つ中、梶原はなかなかコースに出てこなかった。

「ヘルメットが壊れてしまって、(締まり具合を調節する)ダイヤルが回らなくなった。シューズが壊れることは想定していて、常に通訳さんに背負ってもらっていたんですけど…。倉庫までスペアを取りにいってもらった。これを乗り越え、動揺せずにいられるか試されているのかな、と思いました」

アクシデントあり。緊張あり。楽しさあり。五輪は他の国際大会とは違う雰囲気が漂っていた。

「本当に全員が金メダルを狙いにくる。これがオリンピックなんだと実感しました。今回の経験を忘れず、3年後は圧倒的に勝てる選手になっていたいです」

直近の目標は10月13~17日に英国で開催の世界選手権。2連覇を狙う。

「アルカンシェル(世界選手権王者を示す虹色のジャージー)を着続けたい。4連覇してパリに行こうと思っています」

東京では成し遂げられなかった夢、五輪の金メダル獲得へ。梶原が全ての経験をペダルに込める。(武田千怜)

■ファンに感謝

自転車競技の日本女子で初の表彰台となる銀メダルに輝いた梶原。祝福のメッセージは500件以上も届いたという。快挙達成には、応援してくれるファンの存在が欠かせなかった。サンケイスポーツを通じて、感謝のメッセージを披露した。

梶原 悠未(かじはら・ゆうみ)  1997(平成9)年4月10日生まれ、24歳。埼玉・和光市出身。筑波大坂戸高から筑波大に進み、昨年4月から筑波大大学院。高1で自転車を始め、10カ月後の全国高校選抜で3冠。2016年にシニアに転向し、17年12月のW杯第3戦のオムニアムで日本女子初優勝。W杯通算4勝。20年2月の世界選手権で日本女子初の金メダル。155センチ、56キロ。太もも回りは61センチ。

サンケイスポーツより転用


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