イラン、ウラン濃縮度上限超えへ 合意破り第2弾、国際的孤立の恐れ
- 国際
- 2019年7月7日
【カイロ=佐藤貴生】イランは7日にも、核合意の履行を一部停止する第2段階として、合意の定めるウラン濃縮度の上限を超過した濃縮に乗り出す。高濃縮ウランは核兵器に転用できるため、濃縮制限を破れば核兵器製造の意図があると解釈されかねない。米国とイランの緊張はさらに高まりそうだ。核合意を昨年離脱したトランプ米政権だけでなく、合意維持を目指してきた欧州諸国からも批判が強まり、イランが国際的に孤立する可能性もある。
イラン国営メディアは同国高官の話として、核合意が定める濃縮度上限である3・67%を超え、7日にも5%前後の濃縮が行われると報じた。
イランは、米国の核合意離脱と対イラン制裁の再発動で経済的苦境に陥っている。米国がイラン産原油の取引を禁じ、欧州など各国の企業も手を引いたことが大きい。イランは、核合意の当事国である英独仏がイランとの原油取引を回復させることなどを求め、核合意の履行を徐々に停止する強硬姿勢を見せている。
イランのロウハニ大統領は5月8日、英独仏が60日後(7月7日)までに経済取引に関する「合意履行」を保証できない場合、上限を超えるウラン濃縮を開始すると表明していた。
イランは今月1日、低濃縮ウランの貯蔵量が上限の300キロ(六フッ化ウラン換算)を超過したと発表。重水の貯蔵上限である130トンも順守しない方針を示している。
イランは2010年、濃縮度約20%のウラン製造に成功しており、この段階になると核兵器に使われる90%超の製造技術に近いとされる。ロウハニ師は「必要なだけウランの濃縮度を上げる」としつつ、「合意の枠内の状態には1時間で戻れる」と主張している。
今月4日にはシリア向けに原油を運んでいたイランのタンカーが、欧州連合(EU)の対シリア制裁に抵触するとして英領ジブラルタル沖で英当局などに拿捕(だほ)された。
事件を機にイランに対する信頼が揺らぐようなら、核問題をめぐる欧州側の姿勢にも影響が出る可能性がある。
■イラン核合意 2002年に浮上したイランの核開発疑惑をめぐり、米英独仏中露の6カ国とイランが15年7月に結んだ合意。イランが濃縮ウラン貯蔵量や遠心分離機の削減などを受け入れる見返りに、米欧は原油取引の制限といった核関連の制裁を解除した。米国のトランプ政権は18年5月、オバマ前政権が主導したこの合意には欠陥があるとして離脱し、対イラン制裁を再び発動した。
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駆け引きは激しくなる一方だ。
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