東京都多摩市のオフィスビル建設現場で5人が死亡した火災で、ビルを施工していた準大手ゼネコン「安藤ハザマ」(東京都港区)は昨年6月にも、都内の物流倉庫の解体工事現場で同様の火災を起こしていた。同社への取材で明らかになった。警視庁捜査1課は、同社が作業の危険性を認識していたとみて、業務上過失致死傷容疑で捜査している。

同社などによると、昨年6月20日、江東区の物流倉庫の解体工事をしていたところ、ガスバーナーで鉄骨を切断するときに出た火花が、近くにあったウレタンに着火し、約5000平方メートルを焼失した。この火災を受け、同社は下請けの協力会社などに注意喚起したという。

同課によると、今回の多摩市の火災では、作業員3人は地下3階で、鉄骨の柱をガスバーナーで切断していた。その際に飛んだ火花が、床下に敷き詰められていたウレタンの断熱材に着火したとみられる。火花がウレタンに着火しないように、シートやベニヤ板を敷いていたが、床の隙間(すきま)から火花が入り込んだ可能性がある。

作業員3人のうち、バーナーで切断していたのは1人で、他の1人は飛び散った火花を水で消す担当、もう1人は1・5メートル下の地下4階から火花が火災にならないように作業を見張っていた。火が付いた直後、水や消火器で消火活動に当たったが、火の回りが早かったという。

警視庁によると、死亡した5人のうち4人の身元は、岩本靖雄さん(51)=神奈川県▽栗原功至さん(52)=東京都▽菅野俊規さん(44)=同▽沢田俊治さん(49)=同。残る1人は60代の男性作業員とみられる。岩本さんは地上3階、栗原さんと菅野さんは地下3階、他の2人は地下4階で発見された。

◇安藤ハザマの社長が陳謝「何かが足りなかった」

火災が起きた東京都多摩市のビルの施工者、安藤ハザマは27日、東京都港区の本社で記者会見。福富正人社長は「被災された方々を最優先に、近隣の方々や発注者にもおわびし、誠心誠意対応したい」と陳謝した。

同社によると、昨年6月の倉庫解体現場で起きた火災後、「火気を使う作業時は、付近の可燃物を撤去する」など6項目の安全規定を設けていた。しかし、火災は繰り返され、飯村俊章・同社首都圏建築支店長は「深く反省している。規定を徹底してきたが、何かが足りなかった」と話した。