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スーツ販売が低迷、紳士服大手が抱える苦悩


紳士服首位の青山商事。2018年3月期は営業利益205億円(前期比1.9%増)と微増益を達成したが、既存店売上高は前年同月を下回る月が続いている(記者撮影)

汗ばむ陽気の日が増え、官公庁や民間企業の多くでは、ノーネクタイなどの軽装で勤務するクールビズが始まる季節となった。大手量販店や百貨店の衣料品フロアの随所では、「速乾」や「冷感」といった文字が踊り、今年もクールビズ商戦が熱を帯びている。その裏で、ビジネスウエアを主力に稼ぐ紳士服メーカーの足元の業績が振るわない。

紳士服メーカー大手の青山商事、AOKIホールディングス、コナカ、はるやまホールディングスが発表した4月の既存店売上高は、4社とも前年同月比で2~4ポイント下回った。2017年度(コナカのみ2017年9月期、ほか3社は2018年3月期)決算は、青山とAOKIがわずかに営業増益だったが、年間累計での既存店売上高は4社そろって前年割れとなっている。

苦戦する30~40代への訴求

「とにかくスーツが売れない。何とか客数を確保しようと値下げをして目玉商品を出すから、利益率はどんどん悪化する」。紳士服を扱う中堅アパレルの幹部はそう打ち明ける。

紳士服メーカーの業績が伸びない最大の理由は、スーツ需要の減少だ。売り場ではシャツやコート、礼服なども幅広く取りそろえるが、当然ながら収益柱は単価の高いスーツ。業界最大手の青山は、ビジネスウエア事業の売上高の約3割をスーツで稼ぐ。

総務省の2016年の家計調査によると、1世帯当たりの背広服への年間支出額は4262円。東日本大震災直後の2011~2012年よりは回復しているが、2000年の8782円と比べ、半分以下に減った。ネクタイに至っては、2000年の1439円から2016年は455円と、3分の1ほどに低下している。

各社は20代の就活生や新卒社員、50代以上の固定客の需要を取り込む一方、苦戦するのが30~40代への訴求だ。クールビズに限らず、年間を通じてカジュアルな装いで勤務するサラリーマンはIT企業などで増えつつある。今年3月からは、スポーツ庁が旗振り役となり、スニーカー通勤を奨励するプロジェクトも本格始動。これらカジュアル化の波に加え、低価格志向やネット通販の広まりも、30~40代の顧客の囲い込みを難しくしている。

紳士服メーカーが販売するスーツの売れ筋商品は、パンツとのセットアップで3万~4万円前後。青山の「THE SUIT COMPANY」や、AOKIの「ORIHICA(オリヒカ)」など、若者向けの業態では2万~3万円程度が主流だ。百貨店と比べれば安いものの、消費者の低価格志向が強まる中、さらに安い価格で販売する企業も出現している。

参入少ない半面、危機感薄く

代表格が衣料品大手のユニクロだ。今年の春夏アイテムでは、伸縮性や軽量感を重視した「感動ジャケット」を発売。同社の「感動パンツ」とセットアップで購入しても、1万円以内(税抜き)に収まる価格帯だ。

業界2位のAOKIホールディングスは最近、レディス商品の拡充に力を注いでいる(記者撮影)

スーツ以外のビジネスウエアでも、アイロン不要でコットン100%のワイシャツなど、素材感と機能性を兼ね備えた商品を低価格で投入している。「見た目のチープ感が多少あっても、若い人ほどコストパフォーマンス重視。以前と比べてユニクロは品質も改善していて、客の流出は止められない」(紳士服メーカー社員)。

さらにここ数年は、若年層を中心に衣料品をネット通販で購入する消費者が増加。アパレル市場のネット通販比率が約1割に達する一方、紳士服大手のネット販売比率は1~2%程度にとどまる。サイズ感や価格帯の面で障壁が高いとはいえ、各社のネット戦略には周回遅れの感が否めない。

ファストファッションはZARAやH&Mなど海外勢の攻勢も激しいが、新規参入の少ない紳士服業界では大手4社が市場のシェアを取り合う構造に変化が乏しかった。

スーツは一定の買い替え需要が見込めるうえ、流行の影響を受けにくい。トレンドの変化に応じて売り上げが浮き沈みしがちなアパレル企業と比べて、在庫の値引き処分に追われることも少なく、これまで業績は底堅く推移してきた。紳士服大手の幹部は「危機感が足りなかった。スーツ市場のパイが広がらない今、現状維持が精いっぱいだ」と率直に認める。

業績拡大への活路を見出そうと、青山は2015年に靴修理店「ミスターミニット」の運営会社を買収。AOKIも結婚式場「アニヴェルセル」のほか、カラオケやマッサージ店を展開し、事業の多角化を図る動きが加速する。もっとも、新事業が本格的に利益貢献するまでには一定の時間がかかる。縮小均衡をたどるスーツ市場に主軸を置きながら、今後の成長を実現するのは容易ではなさそうだ。

 

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