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ファッションの丸井、「証券事業」参入の思惑


 ファッションビルを運営する丸井グループは5月10日、証券事業に参入することを発表した。証券子会社を設立し、積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の対象となる投資信託の販売を2018年夏から開始する。

スマートフォンの専用アプリを使って、自社のクレジットカード「エポスカード」による支払いで購入できる。クレジット支払いで投資信託を購入できるスキームは、日本では初めて。丸井の青井浩社長は同日行われた会見の席上で「異業種の柔軟な発想で市場を開拓したい」と強調した。

■畑違いではない証券事業

同社は650万人のカード会員を有するが、そのうち約55%を20~30歳代と若い層が占める。今回手掛ける証券事業では、こういった若年層を中心顧客とするもくろみだ。10年後に100万人の顧客へサービスを提供し、資産残高を1兆円とすることを目指す。

「その手で来たか」――。百貨店業界関係者は、丸井の表明に驚きの声を上げた。異例の参入のように映るが、証券事業は“まったくの畑違い”ではない。同社はファッションビル運営だけでなく、クレジットカードによる割賦販売・手数料収入を主体とする金融事業を展開している。現在の収益柱はこの金融事業で、営業利益の8割以上をたたき出す。

既存の金融事業との相乗効果を期待できることから、実は丸井は2年前から証券事業への参画を検討していたという。顧客は月々の支払いをエポスカードで決済すると、ファッションビルなどで利用できるカードポイントが貯まることになるため、そのメリットを訴求することができる。

収益面でも相乗効果がある。投資信託を販売する証券会社には信託報酬が入るが、それは極めて薄利である。その点、丸井は信託報酬に加えて、自社クレジットカードでの長期的な収益向上を見込める。

 水道光熱費やスマートフォン料金の支払いのように、顧客が毎月一定額を利用することで企業が継続的に収益を稼ぐことができるビジネスモデルを「リカーリング」といい、この顧客はゴールドカードへの転換率が5倍高くなるとされている。また、ゴールドカードの会員はLTV(顧客生涯価値)も一般カードに比べて5倍になる、との試算がある。

「丸井が打ち出した投資信託の販売スキームはリカーリングだ。証券事業自体は大きな収益にはならないが、カード事業における顧客ごとのLTVは非常に大きくなる」(青井社長)

■「若者向けの金融を提供してきた」

今後はマルイなど全国30店弱のグループ店舗で、初心者向けセミナーや申し込み後のフォローアップセミナーを実施する計画。わかりやすく提案することで、投資になじみのない若い顧客の掘り起こしを狙う。

「丸井が持つ20~30歳代の顧客基盤は、一般的な証券会社だと取り込めない層。そう考えると、同社の投資信託販売は面白いビジネスになるのではないか」と、QUICK企業価値研究所・調査部の永田和子シニアアナリストは分析する。

 今回の証券を含め金融事業を強化してきた丸井はそもそも、創業事業が月賦販売だった。月賦販売商に勤めていた青井忠治氏が1931年にのれん分けで創業。1960年に月賦をクレジットに呼称変更し、日本初のクレジットカードを発行した。

翌月・分割払いなど利用しやすい環境を作ることで、「若者向けの金融を提供してきた、という自負がある」(青井社長)。限られた富裕層だけではなく、収入や年代を問わず、すべての人に金融サービスを提供するとの企業理念を掲げており、今回若者を主顧客とする証券事業を展開するのは、その方針に沿ったものである。

 金融事業をさらに発展させる背景には、もう1つの柱だった小売事業の先行きに対する不安がある。青井社長は「モノだけを売っている百貨店型の小売業は、10年後にこのまま残っているのだろうか」との懸念を示す。

そこで、小売事業では現在、事業構造の転換を打ち出している。「モノからコトへ」という消費トレンドの変化を意識し、商品が売れたときに売り上げと仕入れを計上する従来型百貨店方式(消化仕入れ)の売り場面積を減らし、テナントからの賃料収入を主とする定期賃貸借の売り場面積を広げている。

 特に、これまでの柱だったアパレルの比率を減らし、需要が底堅い飲食の比率を拡大。サービス分野も拡張しており、この4月には、新宿マルイ本館にアップルの新しいストア「Apple新宿」をテナントとして誘致した。

■競合が少なくない証券事業

金融事業では、商業施設や映画制作会社などコンテンツ系企業との連携を強め、提携カードを増やしている。社内研修を通じて、社員の接客力向上にも注力。それらの結果、ショッピングクレジットの取扱高はここ数年2ケタ増を続けている。

 事業構造転換の効果が発現し、丸井の業績は目下好調だ。今2019年3月期について、売上高を示す売上収益が2490億円(前期比4.2%増)、営業利益が400億円(同13.5%増)と、連続で増収増益になると見込む。

ただ、継続して成長を続けるためには課題もある。クレジットカードの新規会員は年間80万人以上を獲得する計画を掲げるが、前2018年3月期まで2年連続で未達に終わっている。

強化中のEC(ネット通販)事業も2018年3月期の売上高が230億円と全体の10%以下にとどまっている。物流センターの機能拡張などにより2021年3月期に330億円に引き上げる算段だが、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」など新勢力が勢いづく中、順調に伸ばしていけるかは未知数だ。

今回参入を表明した証券事業についても、競合は多い。楽天傘下の楽天証券は、楽天カードを利用して投資信託の積立資金を支払えるサービスを確立している(ただ、純粋なクレジット払いではなく、カードポイントがつかない)。KDDIやコミュニケーションアプリのLINEも証券ビジネスの準備を進めている。丸井は新分野で、異業種の独自性をどこまで追求することができるか。

東洋経済オンライン

 

 

 

一言コメント
もう証券会社は飽和状態だろうが、勝算はあるのだろうか?


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