並んでいる品物はすべて無料! 全国に広がる不要品放出市「0円ショップ」
- 政治・経済
- 2017年12月27日
使わなくなった物、いわゆる不要品のシェア(共有)に再び注目が集まっている。1990年代以降、公園などで定期的に開かれるフリーマーケットが賑わってきたが、近年はスマホ向けフリマアプリの登場によって出品や決済が簡単になり、その市場規模はアプリでの扱いだけで年間3000億円を軽く超えているという(2016年/経済産業省による調査)。
このシェアのブームの中で、まだ規模は大きくないが、全国的に広がりつつあるのが不要品放出市「0円ショップ」である。見た目はフリーマーケットと似ていて、レジャーシートなどの上に不要品を並べるスタイルだが、名前の通り、何とそれらすべてが無料なのだ。お金のやり取りは一切なく、気に入った物、欲しい物があれば、自由に持って帰って構わない。
「0円ショップ」のような活動は、路上や公園など、定期的に野外で行われているものだけでなく、無料の不要品を専門に扱う店舗や「ジモティー」に代表されるネット掲示板方式の放出サイトも登場し、その規模が拡大しつつある。
刊行されたばかりの鶴見さんの著著『0円で生きる』では、こういった「お金のやり取り」を伴わない、無料の生活の場を広げていく試みが数多く紹介されている。その中での鶴見さんの主張を引用してみよう。
「最近のブームを見ればわかるとおり、我々はもともと、余っている物があれば共有したり人に分けたりしたかったのだ。滅多に使いもしないものを、ひとりがひとつずつ買うのが好きではなかった。まだ使える物はゴミにしたくなかった。けれどもそれらのことは、どことなくパッとしないことと思わされ、やりづらくさせられていた。物をひとつでも多く売ろうとする側は、浪費や贅沢を好む気風を現代風と、質素で倹約を重んじる気質を『古臭い』と思わせる広告戦略まで使ってきたのだ」(『0円で生きる』より)
つまり、「0円ショップ」のようなシェアの場は、人間が本来身につけていた生活の知恵であり、無駄にお金に依存せずとも生きていける証でもあるのだ。過剰消費や賃金格差、貧困、食品ロスなどの社会問題を是正する糸口が、ここに見つかりそうな気がする。
ちなみに、初めて訪れた「0円ショップ」で手に入れたのは、ドリカムのCDと大友克洋のマンガ、そして使用感がほどんどない樹脂製の洗濯ピンチハンガー。特に同様のものが壊れたばかりだったハンガーは、とても嬉しかった。まさに「欲しい人」が「欲しい物」を手に入れた良い例である。
デイリー新潮編集部
2017年12月27日 掲載
コメントする