博多・中洲の名物屋台「かじしか」が再出発へ 公募落選の悔しさばねに
- 政治・経済
- 2017年4月4日
福岡市の屋台経営者公募で落選するなどした屋台18店が31日、営業最終日を迎え、親しまれてきたのれんを下ろした。博多区中洲中島町の名物屋台「かじしか」もその一つ。「プレミアムフライデー」のこの日、午後7時の開店前から常連客が訪れ、限定100食のラーメンをすすった。「屋台をずっと続けたかった」。選考に漏れた下村克彦さん(50)、長女の和代さん(27)親子は悔しさをばねに、近くに店舗を借りて再出発する。
リズミカルに麺の湯を切り、豚骨スープに流し込む。下村さん親子は一つ一つの動作をかみしめるようにラーメンを作り続けた。最終日の一杯に付けた値段は5円。「お客さんとの『ご縁』があってやってこられた。これからもお付き合いいただきたいですし」と笑顔を見せた。
「福岡のためになることをやりたい」。20歳になった和代さんが当時会社員だった克彦さんを説き伏せ、2010年10月に親類から屋台営業を引き継いだ。
すし店のような食材の新鮮さやユニークな串焼きが評判となり、常連客は全国各地に60人以上。客は名前を紹介し合うルールで、ここで知り合い、結婚する人もいた。福岡の観光に一役買っていると信じてきた。だが昨年11月の公募は書類選考で漏れた。落選など考えたこともなかった。
仕込みに追われる毎日の生活。同時並行の調理、接客、精算…。何度もやめたいと思った。最大のピンチは12年。和代さんが突如、手足のしびれや皮膚異常を起こす難病にかかり、店を1年半離れた。
応援してくれたのはお客さんだった。無病息災のお札、手作りのお守りや千羽鶴が届き、店に来たことがない人からも励ましの手紙をもらった。「私には屋台がある。お客さんがいる」。うまく曲がらない指で料理を作る。
公募について市を訴えようと考えたこともあるが、「そのエネルギーをお客さんに向けよう」と思い直した。新しい店舗は博多区奈良屋町の雑居ビル1階。「今度はここから福岡を盛り上げたい」。4月下旬、新生「かじしか」がオープンする。
西日本新聞
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