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【初場所 伝説の8番】〈2〉霧島、反対された筋トレでつかんだ涙の初優勝


◆1991年初場所千秋楽 霧島(つり出し)北勝海(1月27日、両国国技館)

1991年初場所の番付© スポーツ報知/報知新聞社

 大関・霧島が91年、当時としては最も遅い初土俵から96場所、31歳9か月での最高齢初優勝(現在はともに旭天鵬の121場所、37歳8か月)を果たした。13日目、横綱・旭富士を上手投げで破り、横綱・北勝海と1敗でトップに並んだ。14日目の大乃国戦は取り直しとなったが、うっちゃりで勝利。北勝海の敗戦で、1差リードで千秋楽の直接対決となった。

 立ち合いでもろ差しを許したが、北勝海の両腕をはさみつけるようにまわしをがっちり取った。左を巻き替え、ぐいっと引き付けると、土俵外へとつり出した。初の歓喜に包まれて「おふくろに一番に知らせたい」。84年2月に亡くなった母・和恵さんが脳裏に浮かび、霧島は涙した。井筒部屋としても、30年初場所の大関・豊国以来61年ぶりの快挙。「この優勝を部屋のみんなが待っていた。本人の努力が実ったんです」と当時の井筒親方(元関脇・鶴ケ嶺)は目を真っ赤にした。

 平成の土俵を沸かせた元霧島の陸奥親方(63)は「優勝は14日目に勝って、もしかしたらと。千秋楽は、まわしを取ったら何とかなると思っていて、命綱でしたね。勝った瞬間は本当に頭が真っ白になりました」と懐かしんだ。

 入門時から、いくら食べても体重が増えないのが悩みだった。小結で迎えた89年初場所で1勝14敗に終わったことにショックを受け、肉体改造に着手。あるジムの会長から「筋肉で体を大きくできる」と助言され、ウェートトレに励んだ。ベンチプレス210キロ、スクワットでは350キロを記録。体重は約20キロ増の130キロ前後となり、その筋肉美から「和製ヘラクレス」と言われた。

 だが、当時は体を硬くしてしまうと、親方衆には筋トレを反対された。それでも「みんなと同じことをやっていても強くならない」と夜中に目が覚めたら、隠れてロードワーク、真っ暗な公園の鉄棒で懸垂…。それだけ打ち込んだ陸奥親方だが、今でも「もっとできたはず」と納得してない。綱には届かなかったが、飽くなき向上心が霧島を支えていた。(久浦 真一)

 ◆霧島 一博(きりしま・かずひろ)本名・吉永一美。1959年4月3日生まれ。63歳。鹿児島・霧島市出身。75年春、初土俵。84年名古屋、新入幕。90年春場所後、大関に昇進。96年春、引退。通算成績は754勝696敗40休。得意は左四つ、寄り、つり、右上手出し投げ。優勝1回。現在は日本相撲協会事業部長。187センチ、132キロ。

報知新聞社より転用


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