混乱のGoTo影響は限定的 4連休、京阪神に近い観光地は人出増加も
- 政治・経済
- 2020年7月28日
浴衣姿で「ようこそ城崎温泉へ」と書いた横断幕を掲げるJR城崎温泉駅員ら=兵庫県豊岡市城崎町今津で2020年7月23日午前9時57分、村瀬達男撮影
新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、政府の旅行需要喚起策「Go Toトラベル」事業の影響も注目された4連休。最終日の26日の人出をスマートフォンのデータでみると、1週間前の日曜より減った地域が目立った。いまだ続く梅雨空の影響もあるが、観光関係者は客足回復の行方を慎重に見据えている。一方で近隣地域からの客で満室になった宿泊施設もあり、幾重もの感染防止策が講じられた。
ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータによると、26日の京都・嵐山は前週比34・4%減。大阪・ミナミに位置する大阪メトロなんば駅が2・2%減、近鉄奈良駅(奈良県)が3・6%減で、四国のとさでん交通はりまや橋駅(高知県)は7・7%減、山陰のJR米子駅(鳥取県)も3・3%減と振るわなかった。
一方で京阪神に近い観光地、白浜温泉(和歌山県)は20・8%増え、人出全体のほぼ半数を占める県外在住者の増加が目立った。JR金沢駅(石川県)は5・6%増、JR松江駅(島根県)は5・8%増だった。
◇温泉旅館では感染対策徹底 兵庫県豊岡市の城崎温泉では4連休初日の23日、城崎温泉旅館協同組合(76軒)が新たな対策指針を公表し、各旅館には入館時の検温の徹底が指示された。
老舗旅館「小林屋」では6月下旬の営業再開後も空室が目立ったが、連休中は京阪神などからの客で満室に。検温や消毒の他、客ごとにスリッパとげたを決め、スタッフの入室回数を減らすため従来は1皿ずつの夕食を幕の内弁当形式で出すなどした。
「Go To」について井上哲郎社長(70)は「旅館向け説明会は22日の開始当日。準備がバタバタで、感染の不安もある。期待はするが、感染者数が落ち着いてからでも良かったのではないか」と指摘した。
同市を含む県北部の但馬地域は26日まで感染者が確認されておらず、県内からの予約客からは東京や大阪からの客の有無の問い合わせもあるという。旅館協同組合の芹澤正志理事長は「客と旅館が互いに対策を取り、安全にGo Toを利用するしかない」と語った。
同県の淡路島では15カ所ある海水浴場が新型コロナの影響で開設されず、悪天候も重なって客足はいまひとつ。それでも、淡路島観光協会によると、23、24日は洲本市内の宿泊施設はほぼ満室で、道の駅も大阪や県内の他地域ナンバーの車が多かった。南部の大鳴門橋や北部の「淡路ハイウェイオアシス」などでの食べ歩きや温泉、買い物などが目的とみられる。同協会は「本来は最もにぎわうシーズン。梅雨が明ければ、ある程度は回復するのでは」と期待する。
◇「密」避けて自家用車で訪れる客多く
従来は関東方面からの宿泊客が多い奈良市。奈良公園や興福寺にほど近い「古都奈良の宿 飛鳥荘」は4連休はほぼ満室で、愛知や岐阜など東海地方から自家用車で訪れる客が目立ったという。担当者は「普段は公共交通機関を利用する人が多いが、電車では密が避けられず車でという人が多かったようだ」と話した。
一方、例年は7月下旬の連日、境内に参拝者があふれかえる春日大社の人出は芳しくなかった。県内への修学旅行のキャンセルも相次いでおり、秋田真吾広報課長は「元の状態に戻るにはまだまだ時間がかかる」と話した。
◇「旅行需要回復の出発点に」
旅行代理店大手各社は「Go To事業を巡る混乱の影響は少なからずあった」としつつ、「ほぼ予定通り旅行してくれた。今後、旅行需要が回復する出発点にはなりそうだ」と前向きに受け止める。
車で移動できる近場を選ぶ傾向が全国的に強く、関西への旅行客も関西在住者が最も多かった。関西の温泉旅館のプランや日帰りバスツアー、中国地方を訪ねるフリープランの利用が目立ったという。
一方、日本旅行によると、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」は4連休を通じて全国各地から集客した。Go To事業の対象から外れた東京在住者が関西への旅行をキャンセルする動きも一部あったが、影響は限定的だったという。
夏の間に旅行需要が例年並みに回復するのは難しそうだが、北海道や九州など飛行機を使うツアーの予約も入り始めており、各社は「感染状況次第だが、本格回復は秋以降になりそうだ」と話す。
一言コメント
受け入れ側も大変そうだ。
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