運転免許証の偽造、海外サイト野放し 大きさや形は本物と酷似、悪用の犯罪相次ぐ
- 詐欺・悪徳商法
- 2019年1月13日
インターネット上で運転免許証の偽造を請け負うサイトが存在し誰でも注文できる状態になっている。愛知県警は実際に注文した男を逮捕したものの、海外にサーバーが置かれていることなどから、運営者は特定できていない。偽造運転免許証を身分証明に悪用した犯罪も相次ぐ一方、こうしたサイトの閲覧防止などの対策は追い付いていない状況だ。【井口慎太郎】
名古屋税関の職員が2018年10月26日、中部空港島にある中部外郵出張所で、中国から国際郵便で送られてきた封書の中に「運転免許証」を見つけた。通報を受け県警が調べると、大きさや形は本物と酷似していたが、「交」の文字の透かし模様がなく、ICチップも埋め込まれていない偽造品と分かった。
県警は11月8日、受取人だった同県安城市の派遣社員の男(26)を有印公文書偽造容疑で逮捕した。男は、サイト運営者と共謀して架空の氏名や住所、自身の顔写真などを印刷した運転免許証を偽造したとして起訴され、「身分証明に使うため購入した」と供述したという。この男の他にも県警は17~18年、31~42歳の男4人を運転免許証の偽造容疑で書類送検している。
捜査関係者によると、5人は同じサイトで偽造運転免許証を注文していた。料金は、ネット上で番号を入力する個人情報不要のウェブマネーで支払う仕組み。サイトの表記は日本語だが、サーバーは海外に置かれていて、運営者の拠点把握は困難という。捜査幹部は「摘発を逃れるためで、偽造品は中国で作っている」とみる。
このサイトは注文から約1週間で手元に届くとし、「本物と99・9%一致」とうたう。記者が連絡先のフリーアドレスにメールを送ってみると、手付金5000円の支払いを指示され、希望する有効期限や免許の種類を聞かれた。違法性を問うと「大事故が起こらなければ大丈夫です」と返信があった。
警察は犯罪性のあるサイトについて、令状を取ってIPアドレスやアクセス状況を照会し、削除を要請している。しかし、サーバーが海外にある場合は令状の効力がなく、サイト運営者にたどり着く情報が得られにくい。
このため、警察庁とセキュリティーソフトの業界団体が協議し、実在する企業をかたる▽現金をだまし取る▽偽ブランド品を販売する――の3類型のサイトは、セキュリティーソフトで閲覧できなくする措置を取った。ただ、運転免許証の偽造を請け負うサイトは、利用者の被害相談がないとして3類型に該当しないとされている。
◇携帯電話の契約に身分証明として悪用
愛知県警は2017~18年、身分を偽って携帯電話を契約したとする詐欺容疑で男8人を摘発したが、一部は偽造運転免許証を身分証明に悪用していた。18年11月には神奈川県藤沢市のIP電話レンタル業の男(48)を偽造有印公文書行使容疑などで逮捕し、事務所で偽造運転免許証のコピー数十枚を発見した。
不正入手した携帯電話は特殊詐欺など犯罪に使われている。愛知県警は藤沢市の男を、特殊詐欺グループに携帯電話を提供する「道具屋」とみている。
運転免許証は偽造防止のため1973年に透かし模様が入り、2009年から順次ICカード化されている。懐中電灯などで光を当てれば透かし模様やICチップの有無が分かる。だが、携帯電話や口座の契約時に身分証明書で本人確認している販売店や金融機関の窓口では、そこまで確認されていないのが実情だ。一方で捜査幹部は「透かしとICチップがなければ偽造は難しくない」と話す。
携帯電話会社などが加盟する電気通信事業者協会(東京都)の担当者は「顔写真や、契約書の生年月日と年齢が合っているかは確認するが、身分証明書が本物かまでは確認していない」と語る。ある地銀の支店長は「身分証明書の偽造を疑っていたら窓口が回っていかない」と漏らした。
一言コメント
いい対策はないものかね。
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