粉もん、パン…神戸の味直撃 小麦粉が値上げへ 企業努力も限界「回らなくなる」
製粉会社大手4社は20日の出荷分から、強力粉や薄力粉など業務用の小麦粉を値上げする。政府が各社に売り渡す輸入小麦の価格を10月から平均2・2%引き上げたことに伴うもの。価格は1年半前から上昇傾向にあり、パンに洋菓子、お好み焼きなど小麦粉と縁が深い神戸への影響は避けられず、業者や店からは悲痛な声が上がる。小麦製品は食卓に欠かせないだけに、家計にも響いてきそうだ。(貝原加奈、吉田みなみ)
「いまが一番高い気がする」。兵庫県洋菓子協会会長で洋菓子店「ボックサン」(神戸市須磨区)のオーナー、福原敏晃さん(65)は嘆く。店で使う国産小麦粉は輸入小麦に比べて値上げ幅が大きく、バターや卵、砂糖など他の原材料も値上がりしている。人件費や運送費もかさみ、企業努力による吸収は限界に。「商品に転嫁しないと回らなくなるのでは」と苦慮する。
小麦粉の売り渡し価格は半年ごとに見直される。今回の値上げについて、農林水産省は「米国や豪州での天候不順による小麦の減収懸念や、燃料油価格の影響で海上輸送運賃が上がっていることが要因」とする。
これらの状況から、日清製粉(東京)は、パンなどに使う「強力系」を25キログラムあたり25円▽うどんや洋菓子などに使う「中力系・薄力系」同130円▽「国内産小麦100%」同190円-の値上げを発表。他の3社も同程度の値上げを決めた。日清製粉によると、業務用の小麦粉は昨年6月以降、値上がり傾向にある。
「粉もん」のまち、神戸市長田区でお好み焼き店「ふじ」を営む藤井和子さん(69)は「生地だけでなく中華麺も値段が上がっている。個人経営の小さな店では数十円の値上げでも客に強い印象を与えてしまう」と肩を落とす。今回は値上げはしないが、「来年の消費増税のタイミングでは上げざるを得ない」と話す。
一方で、発想の転換で乗り切りを図る店も。「食ぱんの店 春夏+秋冬」(神戸市兵庫区)の髙橋朋治代表取締役(51)は「看板商品の大きさや値段を変えると客離れが心配。レジ横などに置く新商品の価格設定を考えたい」と工夫する。
パンは大型スーパーやコンビニと競合関係にある。中小の製パン業者でつくる全日本パン協同組合連合会会長の西川隆雄さん(75)=加古川市=は「大手が値上げに踏み切らない中、中小はしにくい。手作りでは生産性を上げづらく、町のパン店の経営は厳しくなる一方だ」と頭を抱える。
神戸市垂水区の主婦(62)は「パン店を見つけると必ず立ち寄るほど好き。うどんなど他の身近な食品も値上げされるのでは」と気をもむ。
一言コメント
家計にとっても打撃だ。
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