新表示「日本ワイン」30日スタート 国産厳格に…市場拡大へ虎視眈々
- 企業・経済
- 2018年10月30日
世界的に評価が高まっている日本製ワインの新たなブランド表示「日本ワイン」が30日スタートする。輸入原料を使った国内製造品と厳格に区別し、国産ブドウのみで国内醸造されたワインだけが表示できる品質基準だ。日本と欧州連合(EU)の経済連携協定で欧州産ワインの攻勢も見込まれる中、国内ワイン各社は新表示を武器に日本ワインの市場を内外で広げようと虎視眈々と狙っている。
■「本物」を明確に
「規模拡大を図る絶好の機会だ」
メルシャンの代野照幸社長は25日、長野県上田市で開いた新醸造所「シャトー・メルシャン椀子(まりこ)ワイナリー」の着工式でこう述べ、新表示に強い期待感を示した。同社は国産ワインへの国際的な高評価を踏まえ、ブドウ畑と醸造所への投資を拡大。今秋から生産を始めた「桔梗ケ原ワイナリー(長野県塩尻市)」に続く、新ワイナリーの着工で日本ワインの供給増に布石を打った。
日本のワインは、世界最大の国際ワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」で今年、甲州市勝沼町のワイナリー2社が金賞を獲得するなど高い評価を得ている。一方、これまでは海外の原料ワインや濃縮果汁といった輸入材料を使っても、国内で製造すれば「国産」を名乗ることができた。
今回の新表示は本物の日本ワインを明確にするもので、代野社長はブランド価値の向上と市場の活性化につながると評価する。
■売り込みの好機
他社も新表示は国産ワインの売り込みの好機とみて増産などに動いている。
サントリーワインインターナショナルは、「登美(とみ)の丘ワイナリー(山梨県甲斐市)」のブドウ栽培面積を拡大するほか、農業生産法人を設立し、栽培者がいない農地も借り受け、平成34年をめどにブドウ栽培面積を2倍に増やす計画だ。
サッポロビールやキッコーマン子会社のマンズワインも、国産ブドウの栽培面積を大幅に増やす。
また、東京五輪・パラリンピックでビール、ワインの「ゴールドパートナー」を務めるアサヒビールは、五輪のタイミングで全世界に同社の日本ワインをアピールする考えだ。
各社が力を入れる日本ワイン。来年初めにも発効が見込まれる日EUの経済連携協定では、ワインの輸入関税が即時撤廃されることから、欧州産ワインとの対決も今後、注目される。(平尾孝)
■日本ワインの表示ルール 国内のワインのラベル表示はこれまで公的なルールがなかったため、輸入したワイン原料や濃縮果汁を使用しても、国内でワインに醸造したり、瓶詰めすれば「国産ワイン」と表示できた。だが、国税庁告示「果実酒等の製法品質表示基準」が10月30日に施行され、「日本ワイン」の表示は、国産ブドウだけで国内で製造された果実酒のみに認められる。日本で製造されたワインは「国内製造ワイン」と表記し、濃縮果汁などの輸入原料を使用したワインは「濃縮果汁使用」「輸入ワイン使用」などの表記が義務づけられる。
一言コメント
世界のトップブランドに育ててほしい。
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