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西日本豪雨 続く鉄道網の寸断 貨物列車も運休、代替輸送能力は被災前の13%…赤字路線「廃線になるのでは」と不安


西日本豪雨による鉄道網の寸断は被災から1カ月以上経過した今も続いており、各方面に影響が出ている。特に深刻なのは物流だ。中国地方の輸送の大動脈を担うJR山陽線は三原(広島県三原市)-海田市(同県海田町)間と下松(くだまつ)(山口県下松市)-柳井(同県柳井市)間で運休。これにより同区間を使用する貨物路線も止まったままで、西日本の物流は大きな打撃を受けている。

トラックなどに比べて定時制や大量輸送の面で優れる貨物列車は、近年のドライバー不足もあって取扱量は増加傾向にある。JR貨物によると、山陽線で輸送されていた1日当たりの貨物は全国の約3分の1に当たる約2万7千トン。上りは宅配貨物、農産品、食料品など、下りは宅配貨物、雑誌書籍、食料品が多くを占めている。しかし、西日本豪雨以降、山陽線を走る貨物列車は三原以西で全て運休。JR貨物の担当者は「中国地方発着を中心に荷物を受け付けられない状況」と打ち明ける。

JR貨物は、トラックやフェリーを代替の輸送手段としているが、1編成で最大650トン、10トントラック65台分という貨物列車の能力には全く及ばず、被災前の13%程度しか輸送できていない。貨物列車を使っていた各業者は、自前でトラックをチャーターするなど輸送力の確保に追われている。

JR貨物は、倉敷駅から伯備線や山陰線、山口線を経由し新山口駅に至る区間で貨物列車を走らせる「代替ルート」も検討しているが、非電化区間があるため既存車両をそのまま使えない。走行できるディーゼル機関車の予備は10両ほどで、「他の線区に影響を出すわけにもいかず、予備車両を運用しても現在と輸送能力がほとんど変わらない」(担当者)という。線路設備が貨物列車の重量に耐えられるかの確認や運転士の訓練も必要で、JR貨物の担当者は「山陽線の早期復旧を祈るほかない状況だ」と話している。

西日本豪雨によって発生した鉄道網の寸断。JR西日本によると中国地方の在来線は今も7線8区間で運休が続いている。沿線住民が抱えるのは「豪雨を機に廃線になるのでは」という懸念だ。実際、過去には災害を機に赤字路線が廃線になったケースもあり、多くの人々が不安を募らせている。

「このまま列車がなくなれば、世の中から取り残されてしまう感じがする」。福塩(ふくえん)線と芸備線の2路線が通る広島県三次(みよし)市のJR三次駅前で代替輸送のバスを待っていた同市内の主婦、森野幸美さん(67)は不安そうに話した。芸備線三次-備後落合(広島県庄原市)間と福塩線塩町(しおまち)(三次市)-府中(同県府中市)間の再開は来年1~3月の見込み。橋が流失した芸備線三次-狩留家(かるが)(広島市安佐北区)間も再開まで少なくとも1年以上かかる見通しだ。

JR西によると、豪雨により近畿・中国地方の鉄道は7月11日時点で12路線15区間が運休。施設被害も279カ所で確認された。JR西は、電源設備が水没し復旧まで1年以上かかるとしていた木次(きすき)線出雲横田-備後落合間について、被害を受けていない路線から電源ケーブルを引くなどして8月上旬に運転を再開。山陽線なども当初より1カ月前倒し、10月中に全線復旧させるとしている。

ただ、運休が長期化している沿線住民の間からは、「このまま廃線になるのでは」との懸念の声が漏れる。JR西は各路線の収支を公表していないが、採算ラインは1日1キロ当たりの平均利用者数を示す輸送密度で2千人以上。平成28年の芸備線備後落合-三次間の輸送密度は225人、福塩線塩町-府中間は206人で、いずれも「赤字路線」だ。

災害に伴う赤字路線の廃線をめぐっては、岩手県のJR岩泉(いわいずみ)線が22年に発生した土砂災害の影響で4年後に廃線。東日本大震災の津波被害を受けた東北地方を走る大船渡線の一部と気仙沼線は、バス高速輸送システムに切り替えられた。

赤字路線は山間部や海沿いにあることが多く、土砂を撤去するための重機が地形的に搬入しにくいなどの問題がある上、復旧には周辺の河川などを管理する国や自治体との調整が必要になる。実際、橋が流失した芸備線では河川の防災対策と一体となった鉄道の工事計画を練る必要に迫られており、沿線の自治体などはJR西に路線存続を求める要望書を提出している。

地方にとって、鉄道は欠かせないインフラだ。鉄道アナリストの川島令三さんは「鉄道を失った地方都市は、観光客の減少や人口流出などで急速に衰退するケースが多い。街の玄関口である駅がなくなれば地図に地名が掲載されなくなるなど交通手段以外の役割も大きく、存続はまさに死活問題だ」と指摘する。

産経新聞

 

一言コメント
廃線だけは避けたいところだ。


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