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WDと東芝メモリ連合は「サムスン」に勝てるか 日本の半導体産業「最後の砦」の行方


両社で共同投資する三重県の四日市工場(撮影:梅谷秀司)
6月に東芝メモリの売却が完了した。提携する米ウエスタンデジタル(WD)は対立を乗り越えてメモリ事業を成長させていけるのか。WD日本法人の小池淳義社長に聞いた。

WDと東芝はユニークな関係だ

──東芝メモリの売却が完了しました。

パートナーの経営が軌道に乗り、資金的にも安定するのは、われわれにとっても喜ばしいことだ。

──WDと東芝、東芝メモリの関係をあらためて教えてください。

半導体の前工程で研究開発や生産を共同で行うスキームで、後工程と販売はライバルになるユニークな関係だ。前工程には莫大な投資を必要とするし、研究開発も巨額なので、このビジネスモデルは非常に有効だ。異なるカルチャーの相乗効果で、1+1を3にできている。

──東芝が経営危機に陥り、メモリ事業の分社・売却に追い込まれました。反対したのはなぜですか。

小池淳義(こいけ あつよし)/日立製作所出身。2006年サンディスク日本法人社長、2018年4月から現職。大学時代にアメリカンフットボールを始め、現在は日本社会人アメリカンフットボール協会会長を務める(撮影:尾形文繁)

東芝とは合弁会社を通じて共に事業を運営している。

2社の関係が3社になり複雑でうまくいかなくなることを恐れた。(ライバルである)韓国のSKハイニックスが買い手になることへの不安もあった。

──SKは資金を出すが、事業には口を出さないスキームとされています。安心できますか。

まだわからない。

──東芝メモリとは今後も協業が続きます。わだかまりはありませんか?

それはまったくない。この1年間、現場のエンジニアの間でそうした話題は出ていない。お互いに将来どうなるか精神的な不安がまったくなかったとはいわないが、研究開発や設備投資は計画どおり実行している。

――2006年からサンディスク(SD)ジャパン社長として東芝との協業に携わってきた小池社長が、この4月にWDジャパン社長にも就任しました。今こうした人事を行った狙いは何ですか。

SDがWD傘下に入ったのは1年以上前だ。両社の日本法人を統合しないといけなかったが、すぐにはできない事情があった。税金の問題や各社の文化の違いがあり時間がかかった。今回、日本にあるグループ3社の社長を兼務することでWDジャパングループとして統括していくことになる。

――東芝との対立で日本法人の統合に手が回らなかった面はありますか。

それもある。

――WDはハードディスク装置(HDD)の会社です。SDはフラッシュメモリによるHDDの置き換えを目指してきました。いわばライバルです。統合してうまく行きますか。

SDではフラッシュメモリだけだったが、HDDも含めてストレージ(記憶装置)を総合的に提案できるのは強みだ。それを日本でも力を入れていく。

――サーバーの記憶装置もHDDからフラッシュメモリを利用したSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)への置き換えが進んでいます。HDDは負の遺産になるのではありませんか。

HDDはフラッシュメモリに比べて記憶容量当たりのコストが圧倒的に安い。技術進化も止まっていない。これからもHDDはなくならない。

日本の半導体産業に必要なもの

――小池社長は日立製作所やその子会社、さらにルネサステクノロジ(日立と三菱電機の半導体合弁、後にNEC系と統合しルネサスエレクトロニクスになる)で長く半導体事業に携わってきました。半導体事業は総合電機の一部門であるのと、独立した専業と、どちらが適していると考えますか?

リスクマネジメントという観点からは総合電機のメリットがあるかもしれない。だが、専業のライバルは24時間、120%半導体だけを考えている。すべての経営資源を半導体事業に投入できるのは意味がある。

──東芝メモリ売却では日の丸半導体を残したい経済産業省の関与がありました。日本で半導体産業を続けるには何が必要でしょうか。

“日本人だけ”や“日本のやり方”に固執するのではなく、世界の優秀なエンジニアを日本に集められるようにすることが大切だ。

また、工場周辺のインフラ整備など働く環境をよくしてほしい。業界首位、サムスン電子の韓国の巨大工場では近くまで高速鉄道が引かれている。それは難しいとしても、半導体産業にかかわる外国人にとって四日市は世界一だ、行ってみようとなるような支援はありがたい。

WDは外資系だが、日本で800人以上のエンジニアを採用している。東芝とともにこれまで四日市だけで約3兆円を投資しており、今後も日本には兆円単位で投資していく。

──サムスンに太刀打ちできますか。

サムスンは巨大で技術的にも優れた強敵だ。だが、WDと東芝メモリの合計シェアではサムスンに拮抗している。技術面でも勝っているとまではいえないが、十分に戦っていける。今後も両社で研究開発を怠らず、必要な設備投資を継続することが重要だ。

──中国は国を挙げてメモリ産業を育成しています。

まだ技術的に3世代遅れているが、国策でやっているので脅威ではある。一歩でも二歩でも先を行くように努力するしかない。

 


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