<シャンシャン>パンダあやかり商法全国に拡大中
- 企業・経済
- 2017年12月21日
東京・上野動物園でジャイアントパンダの「シャンシャン(香香)」が12月19日に公開された。これにあやかった「パンダ商戦」は全国に拡大している。パンダジャーナリストの中川美帆さんがリポートする。【週刊エコノミスト編集部】
◇精養軒、東天紅……パンダ銘柄の急騰続く
東京・上野などで老舗西洋料理店を展開する精養軒の株価が11月28日、21年ぶりに2000円台に乗った。東京都が11月22日に、上野動物園で生まれたジャイアントパンダの雌の子ども「シャンシャン(香香)」を12月19日から一般公開すると発表したのがきっかけだ。
動物園の観客が増えて、上野本店の客足も増えるとの思惑が働き、買いが殺到。同じく上野が本店の中国料理店、東天紅の株価も急騰した。
こうした「パンダ関連銘柄」の株価はここ数年、子パンダ誕生への期待感からパンダの発情期である春先に高騰して、すぐ下がるパターンを繰り返してきた。
だが今年は違う。6月12日の子パンダ誕生、9月25日の命名、11月22日の公開日発表とイベントが続き、そのたびに株価はストップ高となるなど急騰した。
29年ぶりの上野動物園での子パンダ公開にあやかろうと、都内ではパンダ商戦が本格化している。上野マルイとJR上野駅の「駅ナカ」施設のエキュート上野は、12月からパンダフェアをスタート。この日に向けて開発した商品も含め、パンダの雑貨や食品を大々的に売り出した。松坂屋上野店は、シャンシャンをデザインした純金製の記念メダルを発売したところ、12月19日午後4時時点で予約も含め、100万円の大サイズが24枚、32万4000円の小サイズが44枚売れた。
約1000店が加盟する上野観光連盟は、「シャンシャン公開記念! 上野パンダMAP」を12月18日から無料配布。上野界隈の56店と宿泊施設を掲載して、記念グッズの進呈や割引などの特典情報を紹介し、上野の街を回遊してもらえるよう促している。
渋谷や池袋などでもパンダグッズのコーナーを設ける店が続出。渋谷ロフトでは、パンダの2018年のカレンダーの売れ行きが、定番人気の犬、猫に迫る勢いで伸びている。
東京土産として人気の「シュガーバターサンドの木」は、9月20日発売のパンダバージョンが1カ月で106万個売れた。「東京ばな奈」のパンダバージョンや、シャンシャン誕生記念切手のように、シャンシャン公開と同じ12月19日に都内で発売する商品もあり、引き続き購買意欲をかき立てそうだ。
◇関西でもパンダ列車にファン殺到
パンダブームは全国に広がりつつある。特に関西は、神戸市立王子動物園に1頭、和歌山県白浜町の民間施設「アドベンチャーワールド」に5頭のパンダがいるので、盛り上がりを見せている。
白浜町を訪れると、玄関口のJR白浜駅も南紀白浜空港も、菓子やぬいぐるみなどパンダ一色。和歌山県の観光PRキャラクターを務めるパンダのゆるキャラ「わかぱん」は、イベントに引っ張りだこだ。
大阪では、パンダ焼きなどを提供するカフェ「大阪ぱんだ」が10月に大阪市・日本橋に移転オープンして行列ができた。12月21日~18年1月21日は、多様な作家が手がけたパンダのアクセサリーやガラス工芸などを販売する「年越しパンダ展」が大阪の東急ハンズ心斎橋店などで開催される。
JR西日本は、京都、大阪と和歌山方面を結ぶ特急「くろしお」の車体にパンダをデザインした「パンダくろしお」を8月5日から運行。パンダファンと鉄道ファンが押し寄せている。
◇パンダ誕生の都内の経済効果267億円
パンダがいない地域でも、パンダブームに乗ろうとする動きが出てきた。
新潟県弥彦村の分水堂菓子舗は、「ニッポン全国ご当地おやつランキング」(全国商工会連合会主催)で1位を獲得した人気商品「白パンダ焼き」の中身がカスタードのミニサイズ、「ベビーパンダ焼き」(70円)をシャンシャン誕生後1週間で発売。大好評で売り切れることもある。
沖縄県西原町のパン製造会社オキコは、11月21日からパッケージにパンダを描いた「パンダのパン」を新発売。同社のパン製造開始とパンダ初来日が同じ1972年であることと、シャンシャン誕生にちなんだ。
関西大学の宮本勝浩名誉教授は、上野パンダ誕生による都内の経済効果を年間約267億円と試算。パンダグッズの購入費や飲食費、交通費、宿泊費、人件費などの増加による。これは都内だけの数値なので、全国にパンダブームが広がれば、経済効果はさらに高まるだろう。
18年1月31日までは、抽選で1日400組(1組5人まで)しかシャンシャンを見られないが、18年2月からは、抽選なしで誰でもシャンシャンに会える。まだまだパンダブームは続きそうだ。
一言コメント
経済効果があるならいいんじゃない。
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