大宮ソープ「築90年」でも現役だった理由 弁護士「新たに開いたり、建て替えることは法律上不可能」
- 政治・経済
- 2017年12月20日
男女4人がCO(一酸化炭素)中毒などで死亡したさいたま市大宮区のソープランド「Kawaii大宮」の火災で、現場の建物は登記上は「築90年」だったことが分かった。古い建物を改修しながら使っているソープはほかにも多いのが実情で、専門家は、法律の影響などで新築できない事情があると解説する。
消防や関係者によると、建物は3階建てで、屋内の南北2カ所に階段があるが、客が利用する北側の階段は傾斜がきつく、人がすれ違えないほど狭かったという。窓が少なく、火災で停電していたとみられることが逃げ遅れにつながった可能性もある。
出火した「Kawaii大宮」について風俗関係者は「マットのない簡易的なサービスながら、10代後半や20代など、若い“素人”の女性と遊べることを売りにした、最近、流行している営業形態だった」と話す。
店がトレンドに敏感でも、建築物は非常に古い。閉鎖登記簿をさかのぼると、コンクリート・鉄骨造の3階建ての建物は1927(昭和2)年8月の新築と記載されていた。これが事実なら、築年数は実に90年ということになる。
建物の登記が初めて行われたのは67年で、69年には根抵当権が設定されている。実際に建てられたのはこのころとみられるが、それでも50年が経過している。その後も改修は行われたはずだが、登記上は建て直しされていないことになる。
なぜ、このような古い建物が“現役”で使用されているのだろうか。弁護士の高橋裕樹氏は「ソープランドは66年に風俗営業法の規制対象になり、学校や病院から一定の距離を置かなければならないなどのルールが作られた。現在ではソープランドを新たに開いたり、店を建て替えたりすることは事実上、不可能となっている」とした上で、こう続ける。
「66年以前から営業している店については、後から近くに病院や学校ができるなど違法な状態になったとしても、さかのぼって営業許可を取り消すことはできないので存続しているというグレーな状況が続いてきた」
自治体の条例の縛りもあり、各地のソープランドは古い店舗の改装を重ねて使用しているのが現状なのだという。
前出の風俗関係者は「火災があった店は格安店で知られる。薄利多売で稼ごうと部屋をたくさん用意したために、廊下が狭くなるなどの弊害があったのかもしれない」と話す。同じように昭和初期の建物を使っている店はほかにいくらでもあると証言する。
「高級店では万一の際の避難経路を店内で地図にして明確化していたり、スプリンクラーを設置しているところもある。風俗店を利用するなら安全面も考慮して遊ぶべきだと、今回の火災はあらためて知らしめた」(同)
東京・吉原を例に取れば総額6万円以上の価格設定の店舗にはこうした設備がみられるところがあるという。足を運ぶ前には、事前に店側に防火態勢の確認も必要かもしれない。
コメントする