2カ月で警察官4人相次いで逮捕・本部長の事件隠ぺい疑惑・現職警察官36人処分 前代未聞の不祥事続きで揺れる鹿児島県警の1年
2024年4月以降、鹿児島県警の警察官4人が相次いで逮捕された。さらに、逮捕された元幹部が、県警トップである「本部長が事件を隠ぺいした」と主張し、事件は意外な方向へと発展、衝撃が走った。そして、その後も警察官による不祥事が続くなど、県民からの信頼は大きく揺らいでいる。失った信頼を取り戻せるのか。鹿児島県警の一年を振り返る。
連続の不祥事 鹿児島県警にとって最悪の2カ月間
4月、鹿児島県警にとって最悪の2カ月間が始まる。
8日、県警本部公安課の巡査長(49)が、情報漏えいの疑いで逮捕される。10日後の4月18日には、同じく県警本部公安課の警部(51)が知人女性の体を触るなどしたとして、不同意わいせつの疑いで逮捕された。
さらに、5月13日には、枕崎署の巡査部長(33)が、女子トイレに侵入し女性を盗撮した疑いで逮捕されると、31日には、県警のナンバー2ともされる前の生活安全部長、本田尚志被告(61)が、警察の内部情報を北海道のジャーナリストに漏らした情報漏えいの疑いで逮捕され、その後、起訴された。
本田被告の発言で事態が急展開 本部長が疑惑の中心に
警察の内部情報を北海道のジャーナリストに漏らした情報漏えいの疑いで逮捕された本田尚志被告。
6月に開かれた勾留理由開示請求の公判で、「県警職員が行った犯罪行為を、野川明輝本部長が隠ぺいしようとしたことがどうしても許せなかった」と訴え、枕崎署の巡査部長による盗撮事件を、野川前本部長が隠ぺいしたと主張した。
これに対し、野川前本部長は、「私が隠ぺいの意図を持って指示を行ったということは一切ございません」と、会見や県議会の場で繰り返し否定している。
両者の主張が食い違う中、県警は枕崎署員の盗撮事件の捜査について不手際があったことを明らかにする。本部長は「署で捜査を尽くすよう」指示したものの、枕崎署長には「捜査を中止する」と、誤った内容で伝わったと説明。この影響で捜査が2日間、中断していたという。
一連の事態を重く見た警察庁は、「捜査の基本に欠けるところがあった」として、野川前本部長を長官訓戒処分にすると共に、再発防止に向けた助言を行うため鹿児島県警への特別監察を実施した。
再発防止策は不十分との指摘 百条委員会の設置ならず
8月、県警は再発防止策を発表した。内容は、本部長や部長らによる「改革推進委員会」の設置、さらに、警部補以下の職員が本部長に直接提言ができる、改革推進研究会などを設置するというものだ。
県警の不祥事をめぐる議論は、鹿児島県議会でも交わされた。野党会派の県民連合の福司山宣介議員は「スケジュールを明らかにできるものはする。そういったものでないと説得力がない。これは再発防止策ではない。単なる考え方」と指摘した。
さらに、県民連合は調査権限の強い、百条委員会の設置を求めたが、最大会派の自民党県議団が設置を反対。10月、県議会の最終本会議で、決議案は否決されている。
「“県民に寄り添った対応をする”は全て嘘」
そんな中、10月、またしても県警の信頼を揺るがす事実が明かされる。
2件の詐欺事件と1件の強制性交事件で被害届の受理を渋るなど、不適切な対応があったとして、現職警察官36人を処分。
「『県民に寄り添った対応をしていく』といった言葉は、全て嘘です」詐欺事件の被害にあった女性は、鹿児島テレビの取材に、県警に対する悲痛な思いを訴えた。「本部長に直接話をさせてほしいと、5分でいいからとお願いしたが『できない』と。ただ『伝えておきます』それだけ」。
街頭では、「解決してほしいと思って相談に来るのに、そういった対応だと、ちょっともう信用ならない」といった声も聞かれる。
隠ぺい疑惑が晴れないまま、前本部長は東京へ異動
そして11月、野川前本部長は、事件の隠ぺい疑惑が晴れないまま、東京にある警察庁の自動車安全運転センターに異動した。
本田被告の公判も始まらない中、「過去に起きた客観的事実は変わるところがない。時間がかかったとしても、いずれは明らかになるだろうと認識している」という言葉を残し、鹿児島を去った。
新本部長着任後初の定例記者会見は謝罪の場に
後任の岩瀬聡本部長は、「県民のみなさまからの信頼を回復する、取り戻すということが大変重要。本部長として責任を持って率先して、やれることは何でもやるという気持ちで頑張ってまいりたい」と述べ、信頼回復に向けて強い決意を示した。
しかし、11月、今度は相手が16歳未満の少女と知りながら性交したとして、県警本部警務課に所属する30代の男性巡査部長が懲戒免職となった。
「まずもって法を順守すべき警察職員が今回のような事案を起こしたことについて、被害者、家族、県民のみなさまに深くおわび申し上げたい」新本部長の着任後初の定例記者会見は、謝罪の場となった。
さらに12月、警察官の昇任試験の面接試験の内容を受験した警察官に漏らした疑いで、本田被告と同僚の2人の現職警察官が12月26日付で書類送検されたことがわかった。
本田被告の捜査の過程で今回の漏えいが発覚したということで、2人の警察官が、それぞれ本田被告に試験内容を漏らし、その後本田被告が受験者の警察官にアプリでメッセージを送り試験の内容を漏らしたという。
県警は試験の内容を漏らした2人の警察官のうち1人を本部長注意の処分としたが、3人の認否については明らかにしていない。また、漏えいは試験の結果に影響がなかったとして、受験した警察官については不問としている。
組織のトップによる事件の隠ぺいはあったのか。失われた県民からの信頼を取り戻すことはできるのか。
鹿児島県警の再出発に、県民の厳しい視線が注がれている。
(鹿児島テレビ)
FNNプライムオンラインより転用

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