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藤田菜七子27歳、永野猛蔵22歳が引退の“異常事態”…「騎手のスマホ不正使用」本当の問題点とは何か?「たかがスマホという感覚でいる限り…」


 このところ、JRAの若手騎手によるスマホの不正使用が相次いで発覚している。

 昨年5月、古川奈穂、永島まなみ、今村聖奈、角田大河、河原田菜々、小林美駒の6名が競馬開催日にスマホを使用していたため、30日間(開催10日間)の騎乗停止処分となった。

 今年7月には水沼元輝が、競馬場とトレセンの調整ルームで複数回スマホを使用していたため9カ月間の騎乗停止処分を受けた。スマホのケースのみを預ける偽装工作が悪質とみなされ、重い処分となった。

 そして、10月、永野猛蔵と小林勝太が調整ルームでのスマホ使用により、裁定委員会の議定が出るまで騎乗停止となった。両者とも、2台のスマホのうち1台を専用ロッカーに預け、もう1台を調整ルームに持ち込んでいたという。

藤田菜七子、永野猛蔵が相次いで引退の“異常事態”

 それからほどなく、藤田菜七子が2023年4月ごろまでに複数回、調整ルームにスマホを持ち込み通信していたことが明らかになった。騎乗停止となった藤田は、騎手免許取消を申請し、10月11日付で引退した。

 さらに、11月13日、騎乗停止中の永野も騎手を引退。また、横山琉人と佐々木大輔が調整ルーム内での通信行為に間接的に関わっていたことが判明し、30日間の騎乗停止処分が下された。永野は、スマホの不正使用とは別に、自身の負傷療養中、親族に馬券予想行為をしていたことも確認された。ただし、騎乗経験がない馬で、競馬の公正確保には抵触しないと判断されたとのこと。JRAが1年間の騎乗停止処分を伝えたところ、本人から騎手免許取消の申請があったという。

 まとめると、わずか1年半ほどの間に12人の若手騎手がスマホの不正使用で騎乗停止処分となり、うち2人が自ら騎手を引退したのだ。

 同時期に、自家用車による競馬場の芝コースへの進入、暴力沙汰、飲酒運転、調教助手による傷害事件などの不祥事も重なり、競馬界全体のイメージが悪くなりかねない状況になっている。

 これでは、ルールを守らないことが常態化していると見られてもやむを得まい。明らかに異常事態である。

なぜスマホ使用禁止? 大前提は「公正競馬」の徹底

 そもそも、なぜ、騎手による調整ルームでのスマホ使用は禁じられているのか。

 大前提に、JRAが掲げる「公正競馬」の徹底がある。公正確保のため、レース前の装鞍所での馬体検査、騎手の検量(馬が背負う斤量のチェック)、レース中に走行妨害がないか、全能力を出し切っているかなどを監視し、レース後には禁止薬物の使用の有無を理化学検査でチェックしている。出走の10日前までにJRAの競馬場やトレーニングセンターに入厩していなければならないという「10日ルール」もそのひとつだ。それにより、追い切りのタイムや映像、関係者のコメントなどの情報もまんべんなくファンに伝えられる。

公正の反意語は「不正」「偏向」だ。競馬における不正として誰もが思い浮かべるのは「八百長」だろう。中央競馬でも1965(昭和40)年に「山岡事件」と呼ばれる不正事件が起きた。天皇賞や有馬記念などを勝った一流騎手だった山岡忞(つとむ)が暴力団から金品などを提供され、八百長行為を行い、収賄罪で逮捕された。それを機に、競馬の前には調整ルームに入室し、外部との接触を断つなどルールが厳格化された。厩舎関係者による予想行為が禁じられたのも、山岡事件がきっかけだった。

 細かく言うと、スマホの調整ルームへの持ち込み自体は禁じられていなかったのだが、冒頭で触れた6人の若手騎手による違反(通話やインターネットの閲覧)以降認められなくなった。

 騎手たちは開催前に外部との接触を断って公正確保に尽くしている――ということを対外的に示すという象徴的な役割も、調整ルームのルールは担っている。が、それがたびたび破られてしまった。

馬券の発売が「合法」と認められるまで

 なぜ、調整ルームのルール違反は、長期の騎乗停止処分につながるほどの「重大な非行」とみなされるのか。

 その背景には、日本では、競馬も賭博のひとつとして違法とされていた時代があったという歴史と、公営競技以外のギャンブルは認められていないという現状がある。

 詳述すると長くなるので簡単にまとめると、明治時代の終わり、東京の池上競馬場などで日本人が主催する競馬で馬券が売られ、大盛況となった。競馬ブームが訪れたのだ。しかし、主催者の不手際や、馬券で家を潰す者が現れるなど社会問題になり、馬券の発売が国に禁じられた。収入源を絶たれた競馬関係者は苦境に陥った。その状況を打破すべく「日本競馬の父」と呼ばれた安田伊左衛門が自ら衆議院議員となって馬券復活運動をつづけ、大正時代に帝国議会で競馬法が可決され、馬券の発売が合法になった。

 博打は御法度の我が国で、先人たちが長年苦労してやっと通した競馬法のおかげで、日本は世界最高額の馬券売上げを誇るまでになったのだ。昨年、2023年は、その競馬法制定100年を記念する重要な年だったのだが、既述のように、ルールを守らない騎手が出てしまった。

関係者が「たかがスマホ」という感覚でいる限り…

 よく「たかがスマホで騎手を辞めるなんてもったいない」という声を聞く。確かに藤田も永野も非常に惜しい才能だが、辞めさせられたわけではなく、自ら騎手免許の取消を申請したのだ。それに、「たかがスマホ」というが、競馬法をもとに競馬を施行している日本では、原資となる馬券の合法的な発売の根幹に関わる重大な問題なのである。「海外ではレース前のスマホ通信は禁じられていないのに日本だけ厳しいのはおかしい」という声もあるが、それが許されるのは、競馬以外のギャンブルも認められている国だからか、あるいは馬券が発売されていない国だからだ。その理屈を日本に当てはめることはできない。

 関係者が「たかがスマホ」という感覚でいる限り、また同様のことが繰り返されるのではないか。レースを控えた騎手にとっては「たかがスマホ」ではないから、「重大な非行」とみなされ、重い処分が下されるのである。

 ヨーロッパの競馬主催者にとって「お客様」というと馬主という感覚だろうが、日本で「お客様」というと、馬券を買うファンである。ファンは、自分の楽しみのために金を賭けているわけだが、同時に、「命の次に大事」とまで言う人もいる金を、主催者に、いや、レースに預けている、という感覚でもあるはずだ。不信感を抱かずに金を預けられるような状況が望まれる。ギャンブルという、いかがわしいイメージがついて回るものだからこそ、厳正で公正な運用が求められるのだ。

「ルールがおかしい」という主張は理解を得られない

 JRAによると、監督官庁の農林水産省からも強い指導をされており、開催前、開催中の通信機器に関する運用体制は、今後、厳しい方向に進んでいくようだ。

 違反した騎手たちも、調整ルーム入室義務期間中に外部と通信してはいけない、ということをわかったうえで騎手になったはずだ。多くのファンは、週末不自由な思いをしても、それに見合うだけの金をもらっているんだから我慢するのは当然だろう、と思っている。

「違反者が多発するのはルールがおかしいからだ」という理屈は、そもそも理屈になっていないし、理解を得られない。通信事情が日進月歩の時代に逆行する運用体制がいつまでつづくかわからないが、一定期間違反者が出なければ、また時代に合わせていくための議論がなされるだろう。JRAは調整ルームのない海外のレースの馬券を売るようになっており、地方交流レースに乗るJRAの騎手は当日の調整ルーム入りとなっているので、いずれそれらとの整合性を取ることも考えているはずだ。

 競馬は国民的レジャーである。ファンが安心してお金を遣って遊べる競馬であってほしい。

Number Webより転用


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