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世界平和サミット、対露めぐる「亀裂」浮き彫りに 戦局好転で和平の主導権確保を


スイスで閉幕したウクライナ和平のための「世界平和サミット」は、和平の実現に向けた国際社会の合意形成で一定の前進を果たす一方、ウクライナ支援に積極的な米欧と、貿易などを通じてロシアに近い「グローバルサウス」と称する新興・途上国の間の温度差が浮き彫りとなった。世界を分かつ「亀裂」をどう埋めるのか。国際社会は大きな課題を突き付けられた。

会合には、参加した約100カ国・国際機関の代表のうち、米欧を中心に57カ国が首脳級を派遣した。これに対し、ロシアやその後ろ盾である中国に近い新興・途上国は、インドのモディ首相が参加を見送ったのをはじめ、南アフリカやインドネシア、ブラジルなどは高官級や大使級を派遣するにとどまった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は会合の決裂を避けるため、自身が提唱する10項目の和平案「平和の公式」のうち、和平の根幹に関わる「領土保全」や「露軍の撤退と敵対的行為の停止」といったテーマに詳しく立ち入るのを回避せざるを得なかった。それでも共同声明には、インド、南ア、インドネシア、サウジアラビアなどが加わらなかった。

ドイツのショルツ首相は、今回の会合などを通じ和平追求は「繊細な手入れを要する小さな植物を育てるようなものだ」と述べ、和平結実まで長期的取り組みが避けられないとの認識を示した。 最大のジレンマは、和平を実質的に進めるには一方の紛争当事国であるロシアの関与が不可欠であるものの、ロシアにはウクライナが主張する「公正に基づく平和」を受け入れる意思が全くないことだ。 ウクライナとしては今回の会合を通じてロシアの侵略を非難する国際世論をまとめ上げ、国際社会の圧力を背景にロシアをウクライナの掲げる条件下で和平に応じさせる構想を描く。

しかし、ロシアは14日、一方的に併合した4州からのウクライナ軍の撤収や北大西洋条約機構(NATO)加盟の放棄を条件に和平に応じると表明したほか、中国は先に独自の和平案を提示して新興・途上国に支持を呼びかけ、和平の主導権を握る構えを打ち出している。 実際、トルコやサウジなどからは「実質的な成果を求めるのならば会合にロシアを招待すべきだ」などとロシアの意向を代弁したかのような声も上がる。

ロシアは今後も中国と連携して新興・途上国の取り込みを図っていくはずだ。ウクライナがロシアへの譲歩を排した和平を達成するには、戦局を好転させてロシアを追い詰め、ウクライナの唱える「公正な勝利」への国際的な支持をさらに広げていく必要がある。

産経新聞より転用

産経新聞

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