北朝鮮の偵察衛星に制御能力、日韓上空を安定周回…軌道データ解析
- 国際
- 2024年3月12日
北朝鮮が昨年11月に打ち上げた軍事偵察衛星が高度上昇を繰り返し、地球を安定的に周回していることがわかった。読売新聞社が米軍の公開データを専門家に依頼して解析した。日本政府もこの動きを把握しており、衛星に地上からの指示に従う制御能力が備わっているとみて警戒している。
この衛星は北朝鮮の「万里鏡(マンリギョン)1号」。米宇宙軍は人工衛星追跡サイト「スペーストラック」に登録し、他の衛星やスペースデブリ(宇宙ごみ)とともに日々の動きを追い、軌道のデータを公開している。 日本の宇宙工学の専門家が読売新聞社の要請で昨年11月下旬~3月初旬のデータを調べたところ、2月下旬に少なくとも5回、急激に高度を上昇させていた。
衛星の打ち上げ直後の平均高度は約502キロ・メートルで、徐々に高度を下げた。宇宙空間のわずかな空気抵抗などの影響を受けたとみられる。ただ、2月下旬の上昇で平均高度は約4キロ・メートル高くなり、打ち上げ直後とほぼ同じ軌道に戻った。
木原防衛相は昨年11月、北朝鮮の衛星に関し、地球を周回していることは認めたうえで、「意図した軌道を周回し、機能を果たしているかは慎重な分析が必要だ」との見解を示していた。
匿名を条件に解析に応じた専門家は「高度は短期間に急激な変化が起きており、地上から指令を送って人為的に軌道修正を図ったと考えるのが妥当だ」と指摘した。複数の日本政府関係者は取材に対し、「衛星は北朝鮮の制御下にあると判断している」と語った。
今回の解析では、衛星は米軍岩国基地(山口県岩国市)や軍港のある韓国南部・釜山(プサン)などの周辺上空を通過していた。衛星が地上の同一地点を観測できるのは、5日に1回程度とみられることもわかった。北朝鮮は画像を公開していないが、釜山停泊中の米原子力空母や米領グアムのアンダーセン米空軍基地などを撮影したと主張している。
撮影能力などまだ不明な点は多く、ロシアの支援で技術を進展させている可能性もあり、日本政府は米国や韓国と連携し、分析を急ぐ方針だ。
読売新聞より転用
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