ずさん捜査を断罪 速やかに再審公判を 袴田事件
昭和41年に静岡県の一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放された袴田巌さん(87)の差し戻し審で、東京高裁(大善文男裁判長)が13日、袴田さんの再審開始を認める決定を出したことを巡り、再審開始を認めた平成26年の静岡地裁と同様に高裁は、確定判決で犯行着衣とされた「5点の衣類」について捜査機関による捏造(ねつぞう)の可能性が「極めて高い」とし、当時の捜査手法を改めて断罪した。
東京高裁で袴田事件の再審が認められ、「再審開始」の幕を掲げる弁護士=13日午後、東京都千代田区(萩原悠久人撮影)© 産経新聞
警察、検察の供述調書計45通のうち44通で任意性が否定され、証拠から排除されるなど、当時の取り調べに問題があったことは確定判決の時点でも認定されていた。それでもなお死刑判決を下す要因となった5点の衣類の証拠能力が否定されたことで、「無罪」の可能性は強まったといえる。
事件発生からすでに半世紀以上が経過した。今月、87歳となった袴田さんには、長期の身柄拘束による拘禁症の影響が色濃く残り、日常生活で支援者らの見守りが不可欠。無罪を信じ、支えてきた姉、ひで子さんも90歳となり、残された時間は少ない。
今後、検察側が決定を不服として特別抗告すれば、再審開始を巡る審理は最高裁に舞台が移ることになる。袴田さんらの年齢や健康状態を考え、速やかな再審公判の実現が求められる。再審請求には証拠開示のルールが存在せず、審理の長期化も指摘される。再審制度の在り方そのものについての議論も急務だ。
産経新聞より転用
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