「賃上げは企業の社会的責務」、ベアの「前向きな検討」も明記…経団連春闘方針
- 政治・経済
- 2023年1月18日
経団連は17日、2023年春闘で、経営側の交渉方針を示す「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」を発表した。急速な物価上昇を受け、基本給を底上げするベースアップ(ベア)を「前向きに検討することが望まれる」と明記した。中小企業を含めて幅広く賃上げの動きが広がり、景気の浮揚につなげられるかが焦点となる。
経労委報告では、賃上げに積極的に対応することが「企業の社会的な責務」と指摘。現在の経済状況はエネルギーや原材料価格の上昇と円安の進行で、働き手の生活や企業収益への影響が懸念されるとして、「物価動向を特に重視」するとした。消費増税時以外で、物価動向に言及するのは初めて。
賃上げ方法を巡っては、ベアを後押しする姿勢を明確にした。経団連はかつて「ベアは論外」などと否定的な姿勢を続けてきたが、14年以降は容認する姿勢に転換。近年は「ベアも選択肢」(21年)、「自社の収益状況に基づいて検討する必要がある」(22年)などとしてきた。今回、表現を一段と前進させた。
経営側の物価高への危機感は強い。昨年11月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)は前年同月比3・7%と、約41年ぶりの伸びとなった。連合がベア3%程度、定期昇給分を含めて5%程度の賃上げを要求していることについては「消費者物価が上昇し、要求水準を昨年より引き上げることは理解できる」とした。
雇用の7割近くを占める中小企業の賃上げの重要性も訴えた。例年、中小の賃上げ率は大企業を下回っている。原材料高で業績が圧迫され、賃上げが難しい中小も多い。「取引条件の改善と適正な価格転嫁が不可欠」とし、賃上げ原資の確保に向け、大手企業などに取引価格の協議に応じるよう求めた。
23年春闘は、経営側と労働組合側の関係者らによる「経団連労使フォーラム」が24日に開かれ、事実上スタートする。3月には自動車や電機など主要企業の集中回答日を迎える。
読売新聞オンラインより転用
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