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“ミタゾノ”は舞台化 家政夫ドラマ人気の背景に「家事の捉え方の変化」


© NEWSポストセブン 提供 今秋の舞台化が決定! (c)テレビ朝日

今夜最終回を迎えるTOKIOの松岡昌宏主演のドラマ『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系、金曜夜11時15分〜)。最近、この秋に同作の舞台化が発表され、話題となった。ドラマオタクのエッセイスト・小林久乃氏は、女性の「家政婦」ではなく男性の「家政夫」ものが人気の背景に、現実世界の変化を感じるという。小林氏が綴る。

* * *

クライマックスを迎えつつある春ドラマ。このクールが始まる前の小さな驚きのひとつに、松岡昌宏さん主演『家政夫のミタゾノ』の、第5シリーズの放送決定があった。初回シリーズから見ているファンとしてはうれしかった。また深夜、三田園薫さん(ミタゾノさん)に会えるのだと。

そして4月、OAがスタート。見ていて、家政婦ドラマの主役がいつの間にか女性から男性へとバトンタッチしていることにふと思いが至った。「家政婦」は昭和時代から2時間ドラマの題材として、よく登場した。若い読者の皆様にはあまり馴染みがないかもしれないが、故・市原悦子さんが主演した『家政婦は見た!』シリーズ(テレビ朝日系)は、名作と呼ばれて人気を博した。1983年の放送開始から20年以上、主役が亡くなるまで愛され続けた。

記憶に新しいところでは松嶋菜々子さん主演『家政婦のミタ』(日本テレビ系・2011年)という、前出の作品をオマージュしたタイトルで連続ドラマがスタート。最終回の視聴率は40%と、平成の世にモンスター級の記録を残した。そして次に登場したのが『家政夫のミタゾノ』である。

いつの間にか、家政“夫”ドラマに

『家政夫のミタゾノ』。タイトルを初めて聞いた時は新手のギャグなのかと思った。『家政婦のミタ』の記憶がまだ新しいうちに、言い間違いをされかねないタイトルとは……しかも主演はアイドルの松岡昌宏さんである。謎に包まれている設定になっているけれど、第1シリーズで男性だと放送されていたので“家政夫”となる。

1話完結の連続ドラマだ。「むすび家政婦紹介所」に依頼があった家庭や会社、施設に出向き、家事全般を行うのがミタゾノさんの仕事。出向いた先には部外者には隠したい事情がいくつもあり、それらを彼がつぶさに見つけて、問題を大胆に解決していく。ミタゾノさんは不正を簡単には許してくれない、おかしなことがあると「フンっ!」と鼻で笑う。それでも家庭に仕える者として、低姿勢で決め言葉は「痛み入ります」。

家事も完璧で、実在のカリスマ家政婦を超えるほどの、対応力と知識を持つ。“女性顔負け”と言いたいわけではない。確かに女装のミタゾノさんはすらっとした脚でスタイル抜群だけど、あくまでも男性。作中では、ただ家事が得意なスペシャリストとして存在している。

家事の得手、不得手に性別は関係なし

そして令和になっても家政夫ドラマが続く。『私の家政夫ナギサさん(以下、わたナギ)』(TBS系・2020年)を覚えているだろうか。仕事はできるけれど、家事がまったくできない会社員の主人公・相原メイ(多部未華子)が、家事代行サービスを依頼。現れたのは、家政夫の鴫野ナギサ(大森南朋)だった。最初は毛嫌いするものの、ナギサの家事を超えた細やかな気遣いにメイの心が動く。会社員時代に部下を傷つけてしまった過去を持つナギサも、心が溶解されて、2人は婚約をする……という物語。

ハードボイルドな役柄の多かった大森南朋さんのエプロン姿も相まって、ドラマは人気上昇。その影響で、家事代行サービスへの依頼も増えたという。私も忙しいときには家事代行サービスを利用することが多い。少し前までは「贅沢だ」「(女性として)サボりだ」と言われ、背徳感があったことも確か。でも今では、時間を有意義に使うためのシステムのひとつとして前向きに捉えている。

この流れを見て、生きやすい時代になったとつくづく思う。そもそも、家事の得手、不得手には性別は関係ない。昔、私もよく家族、親戚一同から言われていた「料理くらいできないと」「座っていないで、(食器の)片付けを手伝いなさい」。その傍らで「よく食べて偉いね、さすが男の子!」と、食後だらだらしているのに褒められる従兄弟をうらめしく見ていたものである。

家事は男女どちらが行っても構わない。家政夫ドラマが増えたのは、家事は女性がするべきもの、男性は家事を手伝うものという風潮がなくなった現れだ。

ドラマは最終回を迎えるが、『家政夫のミタゾノ』は今秋、舞台化されることが決まった。前述の歴代作品たちが遂げてこなかった、先へ進もうとしているのだから素晴らしい。これは見たい。ファンとしては、生のミタゾノさんを見たい!

NEWSポストセブンより転用


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