石炭火力でアンモニア「混焼」、政府がインドネシアで脱炭素事業に参画へ
- 政治・経済
- 2022年1月10日
政府は、インドネシアでアンモニアを石炭に混ぜて燃やす石炭火力発電事業に参画する。二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアとの「混焼」を東南アジアで展開し、石炭火力への国際社会の理解が広がることを目指す。
東南アジア諸国連合(ASEAN)各国を歴訪中の萩生田経済産業相が、高度人材の採用支援とともに、近く表明する。混焼は、インドネシア国営の電力会社PLNのスララヤ火力発電所で、導入可能性を調べる。調査は政府が費用を負担し、PLNと三菱重工業が実施する。
世界的な脱炭素の流れを受けて、CO2の排出量が多い石炭火力には逆風が吹いている。昨年11月に開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、40か国以上が全廃を目指すことで合意した。
日本は、短期間のうちに再生可能エネルギーに切り替えることが難しく、石炭火力は当面必要との立場だ。岸田首相はCOP26の演説で、アジアで燃料をアンモニアに切り替える事業などに1億ドル(約115億円)を投じる考えを示していた。
ほかの東南アジアの国でも混焼を支援するほか、水素燃料の活用や、火力発電で排出したCO2を回収し、安定的に地中に封じ込める技術で協力する。
萩生田氏は合わせて、東南アジアやインドなどで、専門的な知識や技能を持つ5万人の高度人材に、就職機会を提供する目標も表明する。今後5年間、日本での受け入れや現地での採用増に向けた支援を強化する。
成長著しい各国の成長を取り込むには、現地事情に詳しい人材が欠かせない。日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じた企業情報の提供や、日本語教育と就業体験の一体的な提供を支援する文部科学省と連携し、外国人留学生の日系企業への就職を後押しする。
製造業のサプライチェーン(供給網)を巡っては、工程や物流の見える化を中心に、先進的な100事例をつくり出す考えを示す。2021年度補正予算を使って、東南アジアで事業を展開する企業同士が部品の在庫データを共有する仕組みづくりも後押しする。
コロナ禍では、世界的な半導体不足が発生し、特定の国に頼らない供給網の重要性が再認識された。見える化により、瞬時に仕入れ先の状況が把握できれば、災害時だけでなく、平時でも市場動向に応じた生産が可能になる。
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