ヤクルトがベンチ一体野球で2勝目 「高津戦法でマクガフが蘇生した」と高代氏
- スポーツ
- 2021年11月24日
「日本シリーズ・第3戦、ヤクルト5-4オリックス」(23日、東京ドーム)
ヤクルトがサンタナの一発で接戦にケリをつけ、第1戦で炎上したマクガフの救援で2勝目を挙げた。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「ベンチ一体、全員野球と高津戦法のたまもの」と語り、ヤクルト一丸野球の強さに脱帽した。
九回の攻防は見応えがあったね。1点リードでマウンドに上がったのは第1戦で抑えに失敗しているマクガフ。ここで借りを返すことができるのか、再び失敗するのか。そこには天と地ほどの差があったが、何とか踏ん張った。
この回、先頭の若月にバットを折られながら中前へ弾き返され、嫌なムードが漂っていた。その後、犠打と内野ゴロで二死三塁に場面が変わり、打席に吉田正を迎えたところで、ベンチは申告敬遠を選択した。
これは勇気のいる決断なんです。吉田正は首位打者のタイトルを獲るほどの強打者だが、仮に彼を生還させれば相手に勝ち越し点を与えてしまう。次打者はこの日、2点本塁打を放っている4番の杉本だったしね。
そんな危険を冒してでも歩かせた。吉田正の打撃力の高さを認め、勝負を避けたのだ。高津監督自身が下した決断であり戦法。そしてこの「杉本勝負」の指示に応えたヤクルトバッテリーも見事だった。
杉本の初球、マクガフは速い球を内角へ投げた。2球目も同じ内角への速い球を中村が要求した。腰を浮かせて構えた高めのボールゾーン。“少しでも中へ甘く入ると危ない”と感じたが、きっちり投げきった。
一塁ゴロで2勝を手にしたヤクルトだったが、私は苦しみながらもこの大きなピンチを脱出したことで、自信を失いかけていたマクガフを生き返らせることにも成功したと思った。
2戦目に高橋を完投させ、マクガフに2日分の“休養”を与えたことで、メンタル面で調整できたのではないか。打たれた翌日に使わず、ひと呼吸置いたことが吉と出たのだろう。
この試合は高津監督の采配のほかに、もうひとつ今年のヤクルトの特長が出たシーンを見た。
今シリーズで1本もヒットを打っていなかったサンタナが、七回に逆転2ランを右中間へ放った。
相手投手はスライダーを縦横巧みに操る吉田凌。ヤクルト打線は1、2戦目でこの吉田凌を打ちあぐんでいたが、サンタナは明らかにその得意球のスライダーを狙っていた。外角へやや甘く入ったところをジャストミートしたものだった。
3試合目の登板で、チームとして配球に慣れてきていたのかもしれないが、1人の投手に対し、チーム全員でかかっている証拠だと感じた。こういう傾向はシーズン中から見られた。
今年、ヤクルトが巨人の3連覇を阻止してリーグ優勝したが、巨人が個人の力で戦っているのに対し、ヤクルトはベンチが一体となり、チーム全体の力で勝っていった印象が強い。それが今シリーズでも出ているような気がする。
ただ、両チームともに失点につながる失策があり、二転、三転した結果の僅差決着。どちらに転ぶかまったく分からないゲームではあったね。
互角の戦いは、まだまだ続くと思う。力量が接近しているだけに、やっぱりミスの少ないほうが、この先、勝ちを拾っていくのだろう。
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