「菅政権は終わり…」二階幹事長ら自民党重鎮は泥試合、官邸でもワクチン接種で”裸の王様”
- 政治・経済
- 2021年5月21日
元法相の河井克行被告と妻で参院議員だった案里氏(自民党離党後、失職)が逮捕・起訴された公職選挙法違反事件に絡み、自民党本部が河井陣営に支出した1億5千万円を巡って、二階俊博幹事長と当時の選対委員長・甘利明氏、当時の政調会長・岸田文雄氏が泥仕合を繰り広げている。
2019年7月の参院広島選挙区で河井被告は妻の案里氏を当選させるため、地元の地方議員ら2900万円をばらまき、公職選挙法違反(買収)に問われ、懲役4年が求刑されている。党本部が河井夫妻へ送った1億5千万円がその原資になったのではないかと、自民党内が紛糾しているのだ。
この問題を再燃させたのは、自民党広島県連会長でもある岸田氏が5月12日、疑問を呈したことだった。
「話題になりました1億5000万円の使途の話。これは総裁も幹事長も、書類が揃ったならばしっかり説明をするということを従来からおっしゃっていた。河井氏の裁判も6月には結審するということでありますので、ぜひそのタイミングで、書類等もしっかり確認した上で、説明責任を果たしてもらいたいということを幹事長に直接、申し上げた」
問題の解明を求める要望書を二階幹事長に提出し、説明責任を果たすように訴えたのだ。だが、それを受けて二階幹事長は17日の会見で「1億5000万のその問題の支出については、私は関与していない」と発言。
二階氏の側近、林幹雄幹事長代理が「当時の甘利選対委員長が担当していた。二階幹事長は細かいことはよく分からないと思う」と補足すると、騒ぎはさらに拡がった。
すると、18日に甘利氏は「1ミリも関わっていない」「支出について、自民党から給付された事実も知らない」と全面的に否定。党幹部の間で、責任をなすり合う騒ぎが勃発した。
克行被告の裁判で、案里氏の参院選で広島県全戸へのチラシの郵送や電話作戦で約1億円以上のカネを使ったことがわかっている。2900万円の原資を克行被告は裁判で「自分のカネ」と主張し、案里氏自身が買収に使ったとされる150万円は「タンス預金」と説明した。しかし、2人からも、検察からもその裏付けとなるものは裁判で明かされていない。
案里氏の150万円のタンス預金はあり得るだろうが、克行被告が用意したという2900万円については自民党内でも憶測を呼んだ。克行被告の元秘書はこう証言する。
「克行被告は、とても細かい性格です。1円のカネでも納得しないと支出を許しません。裁判では自宅金庫に2900万円を保管していたと証言していたが、絶対ないと思う。もしあれば検察は、裁判で金庫の写真など証拠として出しているはず。銀行口座にも、そんな大きなカネはなかったんじゃないか。買収のカネは、どういう形かは別にして、自民党から出ているとしか思えませんよ」
自民党は以前から克行被告の事件で資料が検察に押収されているので、1億5千万円の使途が報告ができないとしていた。だが、克行被告の判決は6月18日に言い渡される予定だ。裁判が終わり押収品の返還があれば、その言い訳も通用しない。元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士はこう指摘する。
「克行被告、案里氏の裁判を細かく見てゆくと、問題の2900万円すべてか、どうかは別にして、自民党からの1億5千万円が含まれていたのはまず間違いない。すでに自民党や克行被告が1億5千万円の支出を認めているので、これは表のカネだ。二階氏か甘利氏か、もしくは当時、自民党総裁だった安倍晋三前首相なのか。この3人うちの誰かが指示しないと河井夫妻には大金が渡ることはなかったはず。自民党本部は買収に使われることを知っていて1億5千万円を出した可能性もある」
自民党の閣僚経験者も1億5千万円問題の危険性についてこう危惧する。
「二階幹事長、岸田元政調会長、甘利元選対委員長と重鎮たちが言い争うのは、それだけ自民党にとって克行被告の1億5千万円がヤバイという認めているようなもの。現在の総裁は菅首相なので、ビシッと言えばいい。しかし、その菅首相は当時、官房長官として先頭に立って案里氏の応援で広島入りし、パンケーキまで一緒に食べた仲。知らん顔するしかない。コロナで支持率低下の菅政権に1億5千万円の問題が再燃したら、もう終わりだろうね」
菅首相は緊急事態宣言を5月末まで延長するなどしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を押さえられず、朝日新聞社の全国世論調査(15、16日電話)では内閣支持率は33%(前回4月は40%)まで急落。昨年9月の発足以来、最低タイとなり、危険水域となっている。自民党だけでなく、官邸でも菅首相は”裸の王様”状態という。
「安倍政権の官邸とは異なり、議論することはなく、菅首相は悪い意味で何でも自分で決めています。ワクチン接種でも西村経済再生担当相、田村厚生労働相は『専門家の方ばかり見ている』と日頃から首相に怒られて萎縮していますし、河野ワクチン担当相は唯我独尊。岸防衛相、武田総務相など船頭を増やした結果、スタンドプレーや主導権争い、足の引っ張り合いを生んでいます。とりわけワクチンに関しては、『高齢者7月末接種完了』『大規模接種センターでの1万人接種』など菅首相の独善的かつ現場無視の指示で、完全に混迷状態で関係閣僚は翻弄され、さすがに疲弊しています。『とにかくワクチンを打て』と日々、追い立てられれば、求心力が低下するのは必然です。首相自身、周囲のスタッフを含めて信用していないから忠誠心や士気も低下します。まさに”裸の王様”と思います」(政府関係者)
菅政権は正念場を迎えている。(今西憲之 AERAdot.取材班)
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