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アフガニスタン撤退が米国に突き付ける新たな難題


アフガニスタン戦争で死亡した兵士を追悼するために、米バージニア州のアーリントン国立墓地を訪れたジョー・バイデン大統領(2021年4月14日撮影)。© Brendan SMIALOWSKI / AFP アフガニスタン戦争で死亡した兵士を追悼するために、米バージニア州のアーリントン国立墓地を訪れたジョー・バイデン大統領(2021年4月14日撮影)。

【AFP=時事】アフガニスタンに駐留する外国軍を撤退させるというジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領の決定は、米国とその軍隊に新たなリスクの到来を意味する。そのリスクとは何か、バイデン政権はいかにそれを軽減したいと考えているのか検証する。

■「撤退」は「治安の真空状態」を意味するか?

米国防省は公式には、米国史上最長の戦争を終わらせる大統領の決定を支持している。しかし高位の軍司令官の多くはここ数か月にわたって懸念を口にしてきた。

米中央軍(US Central Command)のケネス・マッケンジー(Kenneth McKenzie)司令官は最近、AFPに対し、撤退によって過激派集団が復活し、アフガニスタン政府が崩壊の危険にさらされると「信じるに足る理由」があると述べた。

アフガニスタン戦争で死亡した兵士を追悼するために、米バージニア州のアーリントン国立墓地を訪れたジョー・バイデン大統領(2021年4月14日撮影)。© Brendan SMIALOWSKI / AFP アフガニスタン戦争で死亡した兵士を追悼するために、米バージニア州のアーリントン国立墓地を訪れたジョー・バイデン大統領(2021年4月14日撮影)。

米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ(William Burns)長官は14日、撤退すれば「米政府が脅威に集中し、対処する能力が低下する」と述べた。それでも、CIAは「複数の機能」をアフガニスタンで維持すると約束した。

かつてイラクやアフガニスタンで米軍を率いたデービッド・ペトレアス(David Petraeus)元陸軍大将は、米政府は撤退をめぐるレトリック(言葉遣い)には「細心の注意」が必要だと警告した。

「米国が永遠の戦争への関与をやめても、永遠の戦争は終わらない。われわれの関与が終わるだけだ。そして、この戦争が悪化することを私は懸念している」

■撤退期限の表明は危険を招く?

米軍はかねがね、撤退の日付を示すことを危惧していた。旧支配勢力タリバン(Taliban)が、世界最大・最先端の軍隊に勝利したと勢いづき、結果を考えることなく現地の部隊を攻撃する誘惑に駆られると見ていたからだ。

アフガニスタン・ヘルマンド州で、タリバン掃討作戦に加わる米軍の第2海兵遠征旅団(2009年7月2日撮影)。© MANPREET ROMANA / AFP アフガニスタン・ヘルマンド州で、タリバン掃討作戦に加わる米軍の第2海兵遠征旅団(2009年7月2日撮影)。

バイデン大統領はこのイスラム原理主義武装組織に対し、そうした企てをしないよう警告。北大西洋条約機構(NATO)も声明で「撤収期間中の連合軍に対するいかなるタリバンの攻撃も、強力な反撃を受けるだろう」と警告した。

加えて連合軍側は、撤収開始を5月1日と言明することには慎重だった。米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)前政権とタリバンとの合意では、この日は撤収が完了するはずの期限だった。

しかし連合軍側は、撤収は9月11日までに完了するとは言っている。この日は米軍のアフガニスタン侵攻のきっかけとなった米同時多発テロから20年の節目となる。ジハーディスト(イスラム聖戦主義者)勢力は、米国に勝利した日としてこの日をたたえている。

「選択された撤退の日付は、ジハーディスト側では『十字軍(米国)による(イスラム聖地の)占領』があったという筋書きを引き立てる。これはバイデン政権にとって、避けることができた失敗のように見える」と米シンクタンク、ソウファン・センター(Soufan Center)は分析している。

米政府関係者らは、期限はおおむね象徴的なものだと強調した。ある米高官は「9.11の20周年より後にはならない。それよりずっと前になるかもしれない」と語った。

■撤収のロジスティクスは?

米軍が最も恐れるのは、首都カブールを急いで去らなければならなくなり、1975年にべトナム戦争のサイゴン陥落時に起きた混乱と同じ状況に陥ることである。

約2500人の米兵に加え、1万6000人の民間請負業者と装備をアフガニスタンから引き揚げる必要がある。さらに約7000人のNATO軍兵士もだ。従って大掛かりかつ繊細なロジスティクス作戦が必要であり、整然とした安全な撤収完了には最低3か月を要すると、ある米軍高官は明かした。

アフガニスタン・カンダハル州で、地元の子どもたちとサッカーボールで遊ぶ米軍兵士(2010年6月24日撮影)。© MANPREET ROMANA / AFP アフガニスタン・カンダハル州で、地元の子どもたちとサッカーボールで遊ぶ米軍兵士(2010年6月24日撮影)。

米国防省は2019年1月にシリアから撤収を開始したときと同様、帰還する軍を守るために一時的に増強部隊を派遣する可能性もある。

ロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国防長官は、司令官らが退去に、それも明確な期限付きの退去に気乗りしていないことを遠回しに認めた。

アフガニスタン・ナンガルハル州のパキスタンとの国境検問所で、自爆攻撃が発生した現場を調査する米軍兵士(2014年6月19日撮影)。© Noorullah Shirzada / AFP アフガニスタン・ナンガルハル州のパキスタンとの国境検問所で、自爆攻撃が発生した現場を調査する米軍兵士(2014年6月19日撮影)。

NATO本部のあるブリュッセルで同長官は「私は彼らの代弁はしない。言えることは、これは包括的なプロセスであり、大統領は決定を下した際に彼らの声を聞き、彼らの懸念事項を考慮したということだ」と述べた。

■米国の信頼性は?

20年の戦闘の末、アフガニスタン戦争は良く見ても行き詰まりで、タリバンが勢いを盛り返している。タリバンなど米国の敵にとって、今回の米軍撤退を超大国に対する勝利として際立たせることは容易だ。米野党・共和党がこれを見過ごすわけがない。

多くの共和党員は、撤収が米国の世界的な影響力や信頼性へもたらすインパクトについて、声を荒げて発言している。

下院共和党ナンバー3のリズ・チェイニー(Liz Cheney)議員は「9月11日までに撤退することは、20年前のその日、われわれの国土を攻撃したジハーディストたちそのものを勇気づけることになる」と抗議した。

共和党のミッチ・マコネル(Mitch McConnell)上院院内総務は議場でこう述べた。「これは、まだ打ち負かしていない敵の目前から退却することであり、米国のリーダーシップの放棄だ」

AFPBB Newsより転用


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