キューバ、カストロ兄弟の統治が終幕 ラウル第1書記が退任表明
- 国際
- 2021年4月17日
社会主義国キューバのラウル・カストロ共産党第1書記(89)が16日、退任を表明した。1959年にキューバ革命を起こした兄のフィデル氏(2016年に90歳で死去)から続いてきたカストロ兄弟による統治が終わり、新世代へ権力が移譲される。
ラウル氏は首都ハバナでこの日、始まった党大会の演説で「達成した任務に満足し、祖国の将来に自信を持って、第1書記の職務を終える」と述べた。後継者の名前を明かさなかったが、次世代を担う「情熱と反帝国主義の精神に満ちた」リーダーに引き継ぐと表明した。演説で「良い結果」を残しているとたたえた党序列3位のミゲル・ディアスカネル大統領(60)が昇格する見通しだ。
共産党一党独裁体制のキューバでは共産党トップの第1書記が大統領より強大な権限をもっているとされる。ラウル氏は11年、兄フィデル氏の後任として第1書記に就任した。
ラウル氏は18年、国家元首である国家評議会議長の地位をディアスカネル氏に移譲した。この際、「私の代わりを間違いなく務められる」とし、第1書記もディアスカネル氏に引き継ぐ考えを示していた。実際に引き継げば、カストロ兄弟以外が第1書記となるのは初めて。
5年に1度開かれる党大会は政策の方針や人事を決める最重要イベント。19日まで続く日程の中で第1書記のポストがディアスカネル氏に引き継がれるとみられている。
ディアスカネル氏は19年の改正憲法施行に基づく組織改編で大統領に就任し、行政のトップとしてラウル氏の路線を継承した。社会主義体制を維持しながら、一部で自由主義的な経済政策を進めている。
ラウル氏は演説で、米国のトランプ前政権下で対立が深まった対米関係についても言及。「互いに尊重し合う対話をし、新しいタイプの関係」を作る用意があると述べた。キューバを敵視したトランプ前政権は経済制裁を強化したが、20年1月に発足したバイデン政権は制裁の緩和を検討しており、秋波を送った形だ。
キューバでは近年、トランプ前政権による制裁強化や、同盟関係にあるベネズエラの経済危機のあおりを受けて景気が低迷していた。新型コロナウイルスの流行も重なり、20年の経済成長率はマイナス11%に落ち込んだ。食品や生活必需品の不足に拍車がかかって国民生活の混乱は深まっており、経済の安定が急務だ。【サンパウロ山本太一】
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