「夢の場所だった」イオン閉店1年半…いまだ見えぬ後継施設
- 政治・経済
- 2020年9月19日
「地元経済の起爆剤に」期待大きく

「夢の場所」での思い出などを語る城野武敏さん
佐賀県上峰町坊所のイオン上峰店の閉店から1年半が過ぎた。施設の跡地には、空き店舗となった建物がそのまま残る。町は再開発計画を掲げ、協力事業者の選定に乗り出した。具体的な開業時期などは事業者とともに決めるため、現在は示されていない。町民や商工会関係者は「地域に根ざした施設を」などと期待や要望を寄せている。
跡地に隣接する住宅街「中の尾団地」。町出身で元自治会長の城野武敏さん(79)は、イオンの文字が消された建物を眺めてつぶやいた。「田舎者の自分にとって、ここは都会を味わえる夢の場所だった」
1995年、前身の上峰サティが開業。翌年には九州初の複合型映画館が併設された。同団地は計210区画の半分以上が売れ残っていたが、サティ効果で完売。県外からの転入者も相次いだ。「用事がなくても行けば楽しかった。日用品の買い物はもちろん、映画には家族と月1回通ったね」と城野さんは懐かしむ。
だが2000年以降、周辺自治体で大型商業施設の進出が続き、経営環境が激変。運営母体はイオン九州(福岡市)と合併し、11年に「イオン上峰店」に店名が変わった。それでも、にぎわいは戻らなかった。インターネットショッピングの普及や建物の老朽化も加わり、昨年2月末に閉店。城野さんは「買い物は町内外の2カ所に通っている。今は町全体が寂しい空気」とこぼす。
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イオン閉店前、町はイオン九州と土地と建物を無償で譲り受ける基本合意を結んだ。町有地を含め、跡地一帯(約6万4千平方メートル)にスーパーマーケットや農産物直売所、賃貸住宅や町体育施設などを集約する「中心市街地活性化事業」を掲げている。
手法は、町が土地と建物を提供して出資者に加わり、民間事業者と開発を進める「LABV方式」。行政が開発に関与することで、町の方針や住民の声が反映されやすくなるという。
今年6月、建設や運営を担う協力事業者を募ると、町内外の16事業者と3グループから手が上がった。新型コロナウイルスの影響が心配されるが、「計画は順調に進んでいる」(町関係者)。町商工会は「コロナで町内事業者は収入減に苦しんでいる。地元経済の起爆剤に」と期待は大きい。
「建物の大きさにこだわらず、住民が気軽に集まる場所がほしい」と城野さんは求める。町は、11月中旬にも事業者を決定し、共同事業体を12月に設立、来年6月着工を目指す。武広勇平町長は「速やかに工事に入り、施設をオープンさせたい」と力を込めた。
一言コメント
いまの地方経済の縮図のようだ。
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