米国製無人機、調達中止も 政府、コスト増懸念で再検討 グローバルホーク3機
- 政治・経済
- 2020年8月14日
米国製大型無人偵察機「グローバルホーク」=米空軍が2019年6月提供(AFP時事)
政府が2021年度の配備を計画している米国製大型無人偵察機「グローバルホーク」3機について、調達中止も視野に再検討を行っていることが13日、関係者への取材で分かった。
中止も含め、近く結論を出す方針。
米国の「有償軍事援助(FMS)」に基づく装備品調達の見直しは、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に次いで2例目。日本を取り巻く安全保障環境が急速に変わる中、無駄な支出削減と最適な防衛力整備に向けた再検討の一環とみられる。
見直しのきっかけは、米空軍が21会計年度予算案で、グローバルホークの派生型「ブロック30」と「ブロック20」を退役させる方針を示したことだった。関係者は「米空軍が退役させれば、ブロック30を保有するのは日本と韓国だけになる」と指摘。「機数が減れば維持管理費が高騰するのは目に見えている」と懸念を示す。
米軍はステルス無人偵察機RQ180の開発に成功した可能性があり、今後は衛星や新型無人機に偵察任務を任せ、最新派生型「ブロック40」以外のグローバルホークを退役させたい意向とみられる。ただ、米議会は現在策定中の国防権限法案で、全機退役に「待った」をかけており、日本政府も行方を注視している。
関係者は「機体の価格高騰や運用構想の変化も見直しの一因」と指摘する。政府が14年にグローバルホークの導入を決めた当初は計約510億円と見積もられていた。だが、17年になって米側が価格の約23%増を通告してきた経緯がある。
当初はグローバルホークで核・ミサイル開発を進める北朝鮮や日本周辺の島しょ部の警戒監視を強化する構想だった。ただ、北朝鮮の監視に一定の役割を果たせたとしても、イランが昨年6月にグローバルホークを撃墜したように、高い防空能力を持つ中国との有事の際には使えない。別の関係者は「高額な機体を撃墜の危険にさらすことはできない。海洋監視には不向きで、使い道はあまりない」と話す。
政府は既に調達費用の一部を支払っており、調達を中止すれば税金の無駄遣いとの批判は避けられない。それでも「今後の維持管理費を節約できるメリットはある」(関係者)。調達を中止するかどうかは政治判断に任されることになる。
一言コメント
金額が大きいだけに慎重な判断を。
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