プロ野球6・19開幕へ「日常」取り戻す先陣切る
- スポーツ
- 2020年5月9日
プロ野球が最短で6月19日の開幕に向けて準備を本格化させていく。新型コロナウイルスの感染状況を注視しながら、複数球団が今月中旬からの全体練習再開を検討。6月上旬に対外試合が行えれば、開幕まで約1カ月の準備期間の完了が見える。
当初の3月20日開幕から延期が長期化。ただ感染の鈍化傾向も見られ、全国的にも日常を取り戻すために段階的に制限緩和への動きも出てきた。国内スポーツも自粛の日々を過ごしたが、国民的プロスポーツが旗手となり、底力を示す。
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桜が散り、初夏を迎えても「日常の風景」を失って久しい。人間に備わった「投げる」という特殊能力を磨き上げ、職人が丹精に削った木を唯一の相棒に、超人的な反射神経と鍛え抜かれた腕力で対峙(たいじ)する。単純にして精巧。相反する要素を持つスポーツに娯楽のDNAをくすぐられ、多くの人々が魅了されてきた。間もなくプロ野球の幕が開ける。
6月19日。忍耐を強いられた日々の1つの出口であり、これから生まれる無数の希望の入り口になる。3月20日の開幕が延期され、専門家も交え、球界は開幕の是非について議論を交わしてきた。止まらぬウイルスの猛威に4月10日以降、同24日とカレンダーは無情にめくられていく。
5月に入り、同月末まで緊急事態宣言は延長となった。7月まで開幕がずれ込むことも予想された。一方で、感染状況は鈍化の傾向も見られる。全国的にも活動自粛に段階的な緩和が検討されている。延長前の5月6日までの同宣言発令中は、全体練習も控えた。だが緩和の流れに加え、各自治体の理解も進み、複数の球団が今月中旬の全体練習再開を視野に入れている。
同宣言が解除となれば、6月初旬の練習試合も可能となり、約1カ月の準備期間というロードマップで、待望の「6月19日の開幕」が見えてくる。11日にはJリーグとの対策連絡会議、臨時12球団代表者会議が予定され、開幕日を煮詰めていく。
プロ野球が発する底力。選抜高校野球、全国高校総体の中止で高校生は夢を奪われた。東京五輪の延期でトップアスリートは祭典まで1年の歳月を待たなければいけない。そんな状況下で国民的スポーツが先陣を切る意義は大きい。開催が不透明な夏の甲子園大会への希望の轍(わだち)となってほしい。
依然、予断を許さない状況は変わらない。節度ある我慢を緩めれば、これまでの努力が水泡に帰する。開幕までも、開幕してからも感染予防という経験のない神経戦を繰り広げなければいけない。選手自身もリスクと背中合わせ。その上で最高のパフォーマンスを披露しても、しばらくスタンドは空虚な無観客試合になることは必至だ。現状では最大125試合で交流戦もない。球宴の実施も難しい。長年の歴史で培ったシーズンの様式美ではない。それでも日々、プロ野球が行われる。
その先に生まれてくるもの。日常を取り戻すための、目には見えない、だが大きな歩みになる。
一言コメント
観客が入れるのはいつだろう。
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