誤解与える?食品添加物「無添加」「不使用」強調
- 企業・経済
- 2019年6月2日
様々な加工品に用いられている食品添加物の表示のあり方に関する議論が、消費者庁の検討会で始まった。「無添加」「不使用」などを強調する表示の是非や、含まれている物質名を全て表記するべきかなど、年内にも見直しの方向性をまとめる方針だ。
「『保存料無添加』と書きながら、同じ効果がある別の添加物が使われているケースがあり、表示への信頼が失われかねない」
4月に初会合が開かれた消費者庁の「食品添加物表示制度に関する検討会」で、委員を務める全国消費生活相談員協会の坂田美陽子さんが訴えた。
実際、山崎製パン(東京)が3月、同様の調査結果を公表した。市販の食パンなどを分析すると「『乳化剤不使用』と表示された他社製品から、乳化剤と同じ成分が検出された」という。製パン工程の中で脂質に分解酵素を加え、乳化剤と同じ成分を作り出す技術が使われているとみられ、乳化剤を使用したと表示する必要はないという。
同社の担当者は「この技術は一般的なもので、製法が問題というよりは、消費者に誤解を与える表示ルールに問題がある」と指摘する。
現在、食品添加物の表示ルールは「食品表示基準」で定められており、加工品に使用されている全ての添加物を記載するのが原則。だが、一部で例外もあるほか、「無添加」「不使用」を強調する表示には厳密な規制はない。
こうした現状に、検討会では「無添加をあおることで、国際的に安全性が認められた添加物が良くないものだと誤解を与えかねない」「無添加が安全で健康的だという誤った理解が広がってしまう」などの指摘が出ている。消費者庁が昨年実施した調査でも、「無添加」「不使用」の表示を商品購入の参考にしている消費者が全体の5割以上と関心が高いこともあり、表示の是非が議論のポイントの一つとなる。
また、現在は例外とされているケースについて、添加物として使われている物質名を全て表記するべきかどうかも、焦点となっている。
現在のルールでは、「調味料」「香料」などの14種類は、個々の成分まで表示する必要性が低いと考えられ、物質名を省略できることになっている。国際基準では3種類しかなく、消費者団体から、「日本でも対象を減らし、含まれている物質名をきちんと明記するべきだ」との意見が出された。ただし、物質名が羅列されるだけでは見にくいとの声もある。
一方、「着色料」「甘味料」などの8種類は、例えば、着色料であるという用途とともに物質名を併記するよう定められている。消費者に分かりやすい表示法であり、国際基準の25種類と比べて少ないことから、増やすべきだとの指摘がある。反面、流通業界側からは「コストがかかるうえ、表示面積の問題もある」との懸念が示されており、せめぎ合いになりそうだ。
食品表示に詳しい消費者問題研究所代表の垣田達哉さんは「表示の分かりやすさには、消費者が添加物への理解を深めていくことも重要だ。事業者側も積極的に情報提供を行い、表示の内容が理解できる、意味のある食品表示にしていく必要がある」と話す。
【原則】
使用した全ての添加物を物質名で表示する
【例外】
〈1〉「一括名で表示」 複数の組み合わせで効果を発揮することが多く、個々の成分まで表示する必要性が低いと考えられている「調味料」、「香料」などの14種類は、物質名を省略して表示することができる。
〈2〉「用途名併記」 消費者の関心が高い「着色料」、「甘味料」などの8種類は、用途とともに、使われている全ての物質名を併記する。
〈3〉「表示不要」 出来上がった食品に残っていない添加物や、残っていても量が少ないために効果を発揮しない添加物は表示する必要がない。
一言コメント
いかがわしいものは、全て表示してもらいたい。
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