平成最初で最後の町長選へ 32年ぶり「期待している」 福岡県広川町
- 政治・経済
- 2019年4月13日
統一地方選後半戦で行われる福岡県広川町長選(16日告示、21日投開票)は、32年ぶりの選挙戦となる見通しだ。5月1日に新元号「令和」となる前に、平成最初で最後のリーダー選びとなる。現職と新人2人の計3人が出馬を準備中。選挙による町の分断を避けることを優先する風土に変化が生じつつあり、「閉塞(へいそく)感も漂う町の地域活性化策を期待している」と、町民の選挙戦への関心は高い。
立候補の意向を表明しているのは、4選を目指す無所属現職の渡辺元喜氏(70)=自民、公明推薦=と、無所属の元自衛官竹下英治氏(60)、諸派の元町職員小山慎一郎氏(42)の新人2人。
人口2万人弱の町では1983年以降、渡辺氏まで3人の町長が3期ずつ務めてきた。一度も選挙の洗礼を受けずに12年にわたって町長を務めた高鍋具弥前町長(77)は「争いを好まない保守的な風土が影響したのだろう」と振り返る。
同県久留米市の南部に隣接する同町は立地の良さから平成以降に企業誘致が進み、二つの工業団地に計36社が進出。町人口は1970年代と比較して約5千人増えるなど、近隣自治体のような過疎化に伴う課題は比較的表面化しなかったという背景がある。
「平成の大合併」が議論されていた2000年代初頭は、合併相手を巡って「久留米広域派」と町南側の「八女・筑後派」に二分された。当時の高鍋町長は「久留米広域派」だったが、03年の町長選も無投票に。八女派の議員らによる対抗馬擁立は、半年後に議員選を控えていることもあり人選に難航し、最後まで具体化しなかったとされる。
当時の論争は激しく、怪文書が飛び交い、友人と決別するほど激しかったという。町幹部は「もうあんな思いはしたくないと多くの町民が思った」と、その後も無投票が続いた遠因と指摘する。
とはいえ、人口は16年をピークに減少が始まり、移住定住対策の充実化やさらなる企業誘致を求める声も上がり始めている。町の伝統産業である久留米絣(がすり)の衰退も著しい。
「現職は無難な町政運営をしてきたが、今は変化の激しい時代。自治体が生き残るためには、少子化対策をはじめ積極的な施策が求められる」。会社経営の80代男性は選挙戦を前向きにとらえる。生まれて初めて町長選での投票に臨む40代男性は「これまでなじみの薄かった町政を考えるきっかけにしたい」と、論戦に耳を澄ますつもりだ。
総務省によると、前回2015年の統一地方選で実施された全国122町村長選のうち、43.4%に当たる53人が無投票当選だった。市長選の30.3%、道府県議選の21.9%を大きく上回る。1979年以降、15年までの計10回の統一選で、町村長選の無投票率が40%を超えたのは9回に上り、同様の傾向は長期にわたって続いている。人材不足のほか、選挙後にしこりが残るのを嫌って有力者が候補者調整を進めるケースが多いとの指摘もある。
16年には大分県姫島村で、村長選が61年ぶりに選挙戦となり注目を集めた。
一言コメント
町を食い物にしない人を選んでね。
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