ネタニヤフ政権「実績」か、「青と白」新鮮さか イスラエル総選挙
- 国際
- 2019年4月9日
【エルサレム=佐藤貴生】イスラエルで9日、国会(一院制、定数120)の総選挙が行われる。与党リクードなど右派・宗教勢力が過半数を制してネタニヤフ首相(69)が続投するか、中道・左派の野党勢力が10年ぶりの政権交代を実現するかが焦点。即日開票され、大勢判明は10日未明(日本時間同日午前)の見通しだ。
地元メディアの終盤の世論調査では、リクードなど与党勢力が63前後と過半数の議席を獲得し、連立政権を維持するとの見通しがある。野党側は労働党など旧来の中道・左派勢力が総体として支持を失う一方で、現在の野党勢力を牽引(けんいん)する中道政党連合「青と白」には勢いがあり、リクードとの間で接戦を繰り広げているとみられる。
野党側の攻勢に危機感を抱くネタニヤフ氏は6日、パレスチナ人が多く住むヨルダン川西岸に点在するユダヤ人入植地に関し、「われわれは次の段階に進む」と述べて、併合を推進する方針を示した。投票を間近に控えて、パレスチナとの和平に消極的な右派内部での支持拡大を狙ったものとみられる。
3月下旬、ネタニヤフ氏の訪米に際し、トランプ米政権はイスラエルの占領地ゴラン高原への同国の主権を認定した。同氏としては、2017年1月にトランプ政権が発足して以来続く米国との蜜月ぶりを見せつけて、外交・安全保障の分野で着々と得点を重ねた格好となった。
2月末には検察当局が汚職罪などでネタニヤフ氏を起訴する方針を示したが、「魔女狩りだ」と一貫して否定している。
これに対し、「青と白」を率いるガンツ元軍参謀総長(59)は政治経験ゼロという新鮮さを売りとし、ネタニヤフ氏のことを「汚職まみれだ」などと批判してきた。イスラエルの街中では「1人で10年も首相を務めれば腐敗も進む。変化の時だ」(エルサレムの56歳会社員)との声も聞かれる。
イスラエルでは、ネタニヤフ政権が続いたこの10年で、国内世論の右傾化が強まった。背景には、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスがイスラエル領にしばしばロケット弾を飛ばし、宿敵イランが隣国シリアで軍事拠点設置の動きを強めていることがある。
ネタニヤフ氏がこうした状況を「国家の危機」などとしてあおったことも、世論が変化した一因だ。
「青と白」もイランに対しては強硬姿勢で臨み、パレスチナとの間では「分離」政策を進めるという、与党側と大差のない政策を打ち出している。政権を取ったとしても、パレスチナとの和平で大幅な進展は望めないとの見方が大勢だ。
一言コメント
どちらが政権をとっても、右傾化は進みそうだ。
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