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てるみくらぶは禁断の「粉飾くらぶ」 逮捕2日前、「カネ返せ!」怒号飛び交った債権者集会


今年3月、経営破綻状態となり、一斉に航空券が発券できなくなった「てるみくらぶ」(東京)。虚偽の決算書に基づき金融機関から約2億円をだまし取ったとする詐欺容疑で逮捕された社長の山田千賀子容疑者(67)は、破綻の危機に直面しながらも高額の役員報酬を受け取っていた。さらに破綻直前まで集客を続けており、破綻で前払い金が返還されていない顧客や、海外に“置き去り”にされた旅行客らの怒りは大きい。長年にわたる無軌道経営に警視庁捜査2課のメスが入ったものの、顧客救済までの道はなお険しい。

■余計に出費、海外に置き去りの不安も

「航空券が発券されない可能性があるので、空港には行かないでください」

3月下旬、てるみくらぶを通して海外旅行をしていたり、旅行を計画したりしていた8万~9万人ともされる人々に突然、こんな電子メールが届いた。

札幌市に住む娘と孫2人と一緒に行くタイ旅行を翌日に控え、成田空港近くのホテルに宿泊していた川崎市の女性会社員(57)は「何の説明もないままメールは届いた。どうしていいのか分からなくなった」と当時の心境を振り返る。

女性は20万円を超す旅行代と、4人での宿泊代などで計約50万円が余計にかかったが、同社からの返金はない。

既に海外にいた旅行客はさらなる苦境に立たされた。宿泊を予定していたホテルに「代金が支払われていない」といった理由で宿泊を拒否されたり、帰りの航空便のチケットが発券できなくなったりするトラブルに見舞われた。

旅行先のハワイでこうした状況に直面した都内の女性会社員は「『帰れないかもしれない』と不安に襲われた。何度も利用していたのに信頼を裏切られた」と唇をかんだ。

■悪循環に陥り 慢性的な赤字に

こうした事態が起きた原因は、社会情勢の変化に対応できないまま、業績不良に陥っていった同社の無責任な経営体質だ。

平成10年に設立された同社は、大型旅客機の空席を安く仕入れ、格安で海外旅行ツアーなどを提供するというビジネスモデルで急成長した。

しかし、24年ごろから格安航空会社(LCC)が台頭し始めたほか、大手の航空会社も空席を減らすために旅客機の小型化を進めた。その結果、空席の確保が困難になり、必然的にコストは増加することとなった。

同社は旅行ツアーなどの契約者が支払った前払い金を原資に、航空会社や宿泊施設への支払いを行っていた。そのため、LCCなどとの価格競争による利益の減少やコスト増で経営環境が悪化していたにもかかわらず、さらに価格を下げて旅行者を集め、当面の運転資金を確保する必要性に迫られた。こうした“悪循環”の中、赤字が増え始め、26年9月期からは慢性的に債務超過状態となった。

■経営に根付いた粉飾体質

そこで、窮地に陥った同社が手を伸ばした“禁断の果実”が粉飾決算だった。

捜査2課などによると、山田容疑者は赤字を黒字に見せかけるように決算書類を改竄(かいざん)。経営状況が順調であるように見せかけた決算書類を作成した上で、メーンバンクである三井住友銀行に提出し、融資名目で現金約1億9400万円をだまし取ったとされる。金融機関に対しては「航空機をチャーターするために融資が必要」などと嘘をついていたという。だまし取った現金は、同社の運転資金に充てられていたとみられる。

赤字を黒字に偽装する粉飾決算は25年9月期から始まっていたが、それ以前にも、黒字を少なく見せかける粉飾決算を行っていたことも判明。法人税を免れる意図があったとみられ、粉飾体質が長期間にわたって経営に根付いていたことをうかがわせる。

■顧客救済難しく

今回、事件の直接の被害者は銀行だが、楽しみにしていた旅行を台無しにされ、返金も受けられていない旅行客らの怒りは今も収まっていない。

今月6日、都内で開かれた債権者集会では、出席した旅行客たちから山田容疑者への不満が爆発した。

管財人らからの現状説明が終わり、質疑応答に移ると、参加者からは「客に対する詐欺だとは思わないのか」などの質問が相次いだ。こうした質問が出るたびに会場には拍手がこだました。

逮捕2日前の山田容疑者は「詐欺だと思ったことはありません。事業継続のために必死だった」と消え入りそうな声で釈明したが、納得できた顧客は少なかったようだ。

参加者の男性は「経営破綻のかなり前から赤字販売を続け、赤字が増え続けている。こんな状態ではいずれ破綻するのは誰でも分かる。あなたがもっと早く会社をたたむ決意をしていれば、こんな被害は生まれなかった」と糾弾した。

また、同社は破綻直前まで広告を出し続け、顧客に「一括ですぐに代金を支払えば割引になる」などと入金をあおっていた。山田容疑者はこれについて「売り上げを伸ばそうとしていたが、努力が実らなかった」と話すにとどまった。

さらに債権者集会では、債務超過に陥った以降も、山田容疑者が年間3300万~3400万円の役員報酬を受け取っていたことも明かされた。その際には参加者から「どんな顔してもらってたんだ」「金返せ!」と怒号が飛んでいた。

旅行客を海外に置き去りにするという前代未聞の事態を引き起こした、てるみくらぶ。自転車操業を続けた無軌道経営に巻き込まれた被害者の救済が待たれるが、救済原資は限られているとみられ、顧客の怒りや混乱が収束する見通しは立っていない。

 

産経新聞

 

 

一言コメント
これは本当にひどい。


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